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戦闘1

(東の領土にいるペガサスみたいなものかしら)


公国の東の領土を護る騎士団には国に只1人しかいないペガサスに騎乗する賢者騎士(セイジナイト)がいたはずだ。

そのペガサスは額にユニコーンのような青い角をはやし、4羽の翼を持つとか。

確か、産まれた当初は誰が飼い主になるかで大騒ぎになった記憶がある。


そんなことを考えていると、外から怒号と金属のぶつかる音が響いてきた。


「結構近いですね。屋敷横の樹虎川からかしら」


「それってお屋敷の建っている崖のすぐ下にある川ですよね」


「心配しなくても大丈夫ですよ。男たちみんなそちらに行ってますから突破されるなんてまずあり得ません」


「全員、ですか?」


「あ、言葉のあやでした。主だった男たちはです」


「・・・あの、春花さん」


「はい?何ですか?」


お茶のおかわりをつごうとしていた彼女は私の方へと視線を向けた。


「若頭さん達の見えるところまで連れていってもらえませんか?」




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



冷たい雨の降りしきるなか、男たちの怒号が部屋のなかに居たときよりも一層大きく響き渡っていた。国の騎士たちと違い、故郷の明暗をかけた争いをしている彼らに恐れや怯えは一切感じられない。彼らの覇気がこちらにも伝わってきそうだった。

猛虎族の男たちと向かい合っているのは彼らよりも一回りも体格の大きな男たち。全員が濃い茶髪であるところから、あれらが争いを仕掛けてきた熊の部族だろう。


その様子を私は川を見下ろせる渡り廊下から見下ろしていた。因みに、私と春花さんが来たときにはさっきまで一緒に縫い物をしていた女性陣が弓や簡易的な投擲具をもって待機していた。


「あら、あんた来ちゃったのかい」


私の姿をみた年配のご婦人が苦笑する。

「ここはあんたがあんま来る場所じゃないよ?」


「分かっております。戦闘のお邪魔はしませんから」

そう言って私は廊下の手すりから川の方を見下ろした。


「・・・何だか、様子がおかしくありませんか?水の中にいるにしてもあちらの方が威勢がいいような気が」

皆、敵の攻撃を凌いでいてこちらからは打って出ているようには見えない。

迅さんを先頭に敵方に向かってはいるけれど、相手方の防御が堅いのか、1番奥にいる敵将と思われる大仰な鎧をつけた男まで行き着いていない。


「それはあたし達も思っていたところさ。若様ならあれくらいの陣、すぐに突破してくれるのに」


「あそこまで矢は届かないの?」


春花さんが会話に入り始めたのを見計らって私はそっとその場から離れた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




渡り廊下から少し離れた中庭に出ると、誰もいないことを確認して私は降りしきる雨のなかに腕を伸ばした。

(ただ、奇妙だと思ったから調べるだけ!他にはなにもしない)

ここにはいない、『このお節介!』と怒る家族や親友を思い浮かべながら私は目を閉じた。


「水の精霊たち、私の声が聞こえる?」


腕に打つ雫が心なしか柔らかく感じた。続いて子供の笑い声の様なものが聞こえてくる。

自分の使う魔法属性の精霊の声を聴くことは魔導使いにとって必須条件だ。


次々と語り書けてくる人の言葉ではない声を聴いているうちにある一声を聴き取った。


『茶色いオトコ 子供を持ってる』


私はすぐに渡り廊下へ引き返した。

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