嵐の前の状況確認
本当に久々の投稿になってしまいました。時間を見つけて細々とやっていく所存ですのでなにとぞ・・・
「皆さん、不自然な位に落ち着いているんですね」
強引に部屋に戻されて、今は春花さんと2人きりだ。窓際の椅子に腰掛け外を見ると多少使用人の方々が忙しく動いているように見えるけど争い事が現在進行形で起こっているとは思えない。現に彼女はのんきにお茶の準備をしている。
「まぁいつもの事ですし」
「いつもの事・・・」
ここの警備態勢はどうなっているのか責任者に問い詰めてみたい。
「それに若様がいますから」
そう言いながらお茶を煎れた茶器を渡してくる。受け取ると茶器から新緑の森のような香りが漂う。
「その・・・彼がいると何かあるんですか?」
出されたお茶を飲みながら聞くと彼女は焼き菓子を載せた皿を持って私の近くにあった椅子に腰掛けた。
「えっとですね、ここの『猛虎の里』は幻獣国の北西の内陸部にあってですね、ここら辺て中小の部族が乱立してて小競り合いが日常茶飯事なんです。猛虎族の縄張りはその中でも1、2を争う広さを誇っていますからみんなが狙っているんです」
北方地方でアクエリス公爵家の次に広い領土を持っていたレインツリー侯爵家。それに群がる男爵位や準男爵位程度の振興貴族達を思い出す。
「どこの国も同じなんですね」
「え?」
「いえ、お気になさらず。それで彼がいると安心というのはもしかして彼が一番強いからとかでしょうか?」
「さすがですっ。よく分かりましたね」
「さすがに分かりますよ」
「若様は頭の中身はとても残念なんですが、戦闘力においては猛虎族は元より幻獣国でも指折りの実力者なんですよ。頭はとても残念なんですが」
「春花さん、褒めていませんよね?」
大事なことなのだろうけど2度も言わなくても良いと思う。
「それに若様は『白虎持ち』ですから」
「『白虎持ち』?」
「私たち『猛虎族』の民の霊獣は殆どが黄色の普通の虎なんですけど、若様だけ白虎の霊獣を従えているんです。白虎は神獣にも数えられる神聖な存在な上に今まで白虎の霊獣持ちは猛虎族を興した初代族長のみでしたから」