余計な世話2
「春花さん」
「なんですか?ティアルさん」
「見張りの方の視線が痛いです」
「あー気にしないで下さい。あいつら女性陣に優しくされた経験ないから」
「え?」
何のことか分からずに首を傾げると春花さんは呆れた顔で答えた。
「ほら、この前の風邪引いてた」
「一昨日の、ですか?」
「そ、あいつあの一連の話みんなに自慢したもんだからみんなティアルさんにかまって欲しいんですよ」
呆れた顔で答えた春花さんに私は眉をひそめた。
「でも私、大したことしてませんし、健康な方を看病とか意味が分からないですが」
「だからみんな風邪引こうとここの当番の前日に寒中水泳してますよ」
「は?」
「…すみませんけど、その顔で睨まないで下さい。美人の怒った顔って本当に怖いんですから」
「ここの人たちは何考えているんですか」
「何も考えてないからそんな馬鹿が出来るんですよ。と、ちょっと待ってどこ行くんです」
「少し説教してきます」
「落ち着いてください!今のあいつらにはそれもご褒美になりかねないから!て、こっち来んな!」
私を行かせまいと腕を春花さんに捕まれていると外からこちらを覗いていた男性が私たちの方に向かってきた。なんで足取りがあんなに軽いの?
ここの人達の特徴だろうか。所々黒が混じった濃い金の短髪に(今のところ、春花さんと虎 迅以外はみんなその髪色だった)バンダナを巻いた男性は寒さで赤くなった顔に笑みを浮かべながらたづねてきた。
「何かご用ですか!?」
「いや見張りがこっち来るんじゃないわよ」
「春花には聞いてねぇよ」
「あの」
「ああ、すみません。で、何かご用…」
彼が聞いてくるのを聞きながら私は彼の衣服の裾を掴んでいた。
「ここ、破れていますよ」
私は掴んでいた裾を持ち上げた。腕から下に長い裾が完全に破れて垂れていた。
「あ、ホントですね。みっともない」
「うるせぇ着れたらいいんだよ」
「春花さん、裁縫箱ってあります?」
「え?」
「このままだと何かに引っ掛けて危ないですし、あまり格好もつかないでしょう」
「いやでもティアルさんがすることじゃないですよ。大体説教はどうしたんです」
「それは後でまとめて言ってもいいかと思うんです」
(本音を言えば破れているのを放っておくのが我慢出来ないだけなんだけど)
弟や妹が遊び回って服を破って帰ってくるのは割と多かったので最早服の修繕はもはや日常のことだった。
「簡単なあわせみたいですから服は着たままで良さそうですね」
「いやいや…」
「お願いします!!」
「あんた黙って!」
結局、渋々裁縫箱を春花さんが持って来てくれて私はそのまま彼の衣服の繕いをやったのだった。
人質なはずなのに割と自由な主人公(笑)