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5・カラーズ 盗賊団

大分遅くなりました。あれもこれもやるもんじゃないですね。

「えぇー、本日は晴天なり、本日は晴天なり。聞こえますか団長。」


上空2000メールに陽気な声が響く。盗賊団カラーズの根城「セブンボウ号」は今日も今日とて空を行く。麗らかな日差しが心地よい。ふさふさな耳ををピコピコさせながら浮かれた声で伝声管を使っていると、慌ただしく蓋を開ける音と共に伝声管に怒号が響き渡る。


「・・・うっせぞシャット!緊急以外で伝声管つかうんじゃねえ!ぶっ殺すぞネコがき!」


叱責を受け耳をシュンとさせ伝声管の蓋をゆっくり閉じる。見張り台に立つシャット・カラーズは双眼鏡を構え大地を見渡した。


「そうは言っても暇にゃんだものー。それに一人でこんな寒い所でうす黙ってたら、マジで凍死しちゃうにゃ。獣人だからって寒くないと思ってもらったら困るにゃ。」


ぶつぶつと愚痴を溢していると不意に辺りが暗くなる。ちょうど雲の下に入った時のように。


シャットは上空を見上げ驚愕する。驚愕の表情を浮かべたままシャットは伝声管の蓋をぶっ壊す勢いで開けた。


「にゃーーーー!!!トラトラ!方位3時、角度1時タイタン級!警告信号無し!」


伝声管から先程の怒号が再び飛び出す。


「シャット!こっちも確認した、すぐ船に戻れ!それとタイタン級についてる紋章見えるか!?」


「紋章は、双頭竜・・・にゃ!?団長やばいにゃ大砲こっち向いてるにゃー!!」


シャットが言い終わると同時にタイタン級飛行船の大砲が唸りをあげる。


激しい爆音と共にセブンボウ号は大きく傾く。急加速の緊急回避により直撃は無いものの、推力エンジンが悲鳴をあげ始める。


シャットは見張りから振り落とされかけながらも手すりにしがみつき難を逃れる。

「にゃーーー!!死ぬ、死ぬにゃ団長!戻して舵戻してにゃ!落ちて死ぬにゃ!!」


「うっせぇ!もうちょい踏ん張れ!それより紋章は何だ!?せめてそれだけ言ってから死ね!」


風圧で顔を歪ませながらシャットは伝声管にしがみつく。


「にゃ、そんにゃ!そ、そ双・・・ふっん、頭ぅ!竜にゃーー!」


「双頭竜だ!?アンフィスバエナか!!離脱する、雲ん中突っ込んで目を眩ませろ!そのまま旋回9時の方角に進め!山脈でやり過ごす!!聞いてたかシャット!すぐ船に戻れぶっ飛ぶぞ!!」


再びの爆音。大きくセブンボウ号が揺れる。今度は船底付近に被弾したようだが、被害は大きくない。飛行速度に影響はなく、雲に向かい最大推進で突き進む。


「やばいにゃ!ちょっ団長ぉぉ速度落としてにゃーーー!」


シャットの嘆きも届かず爆音と共にセブンボウ号は揺れる。先程の船底部、加えて右翼フラップがバラバラと崩れ落ちていく。


フラップの破損によりバランスを崩したセブンボウ号は大きく反転する。


「にゃ・・・」


見張り台の手すりからシャットの手が離れる。瞬間、強力な風圧でシャットは空へと投げ出された。


「にゃ、いにゃ!団長ぉ!!」


飛び去るセブンボウ号にシャットは手を伸ばすが届く筈もなく、ただ落ちていく。


視線を下に向けると深い雲がシャットを待ち構えていた。落ちる位置すら調整出来ない。諦めたように目を閉じシャットは生まれて初めて神に祈った。


どうか痛くなくて、楽に死ねますようにと・・・。




一方、セブンボウ号内部も混乱の極みに陥っていた。


「右翼、第一第二フラップ損傷!飛行には問題ありません!」


「船底に2発目被弾小規模の火災発生、現在消火にあたってます!」


セブンボウ号艦長、並びにカラーズ盗賊団団長バリ・カラーズは歯軋りをした。


「船底の宝物庫は無事か!?あそこが吹っ飛んだら洒落になんねぇーぞ!!」


船底部の連絡を待っていたレド・カラーズは伝声管からの報告に眉を寄せる。


「団長!消火は大丈夫みたいなんすけど、宝物庫半分、右翼側全部吹っ飛んでるみたいっす。」


青ざめたレドの表情を見てバリの顔は真っ赤に染まった。握り絞めた拳を思い切り椅子の手すりに叩きつける。


「くそったれ!!今回の報酬はパーだ!くそっ!一発ぶちこんでやる、あの糞双頭竜(アンフィスバエナ)!!」


レドは団長バリの側による。


「団長、なんか妙じゃねえすか?俺らみたいな木っ端盗賊団に王立の空挺部隊がしゃしゃり出てくる何ておかしいっすよ。第一ここはあいつらの領土でもねえってのに、タイタン級ぶつけてくるなんて。」


「・・・右翼にあったブツはウスタニアから持ち帰ったやつか?」


「たしかそうっすよ。」


バリはすぐさま伝声管の蓋を開ける。開けたのは右翼側の機銃室だ。


「敵の様子はどうだ!?タルン!」


そう呼び掛けるとガチャガチャと金属がぶつかり合う音が響く。

「ーー団長?何かした?アンフィスのやつ明らか速度落としてってるよ。」


タルンの能天気な声に若干の怒りを覚えつつ、バリは頭を切り替える。


「ルヴァニア正規軍の狙いはウスタニアの商隊のブツか?・・・まさか!?ちっ!嵌めやがったな糞共!」


「どうしたんすか団長?何を」


「嵌められたんだよ!!あいつら全員グルだ!ウスタニア商隊は本国の目を盗んでルヴァニアにブツを横流しする為に、俺らを運び屋変わりに使いやがった!!ちぃっ!今は兎に角逃げるぞ、仮は必ず返す!」


セブンボウ号は唸りをあげながら雲に突入する。強風にさらされ機体が軋み雨が打ち付ける。


「下は嵐だ!腕の見せどころだぞてめえら!」


威勢のいい掛け声が船内に響き、それに呼応するようにセブンボウ号はさらに深く速く雲の中を進んでいく。


空の支配者、タイタン級飛行船 双頭竜(アンフィスバエナ)は悠然と空に佇む。それが当然であるように。

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