表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんなトピックス  作者: 華宵 朔灼
介護ヘルパー
2/3

骨粗鬆症のおばあちゃん

 ベッドの横には、"コール"と呼ばれる、ヘルパーの持つPHS(ピッチ)と直接繋がる、緊急呼び出しボタンと言うか、ナースコールが存在する。

 骨粗鬆症であるが故、体を動かす事が十全に行かず人付き合いを少々面倒がるおばあちゃんの話だ。

 おばあちゃん、人付き合いが苦手なのだが、1人は寂しいらしく、よくナースコールがかかって来る。


「どうしましたか?」


 曲がりなりにも緊急(・・)呼び出しコールなので出ないわけにはいかない。


「ちょっと来て貰える?」


 何かあるのかと部屋に行けば、特に問題もない。

 寂しいだけで押さないで欲しいと思う反面、本当に寂しいのだと同情もしてしまう。


「良いですか?これは緊急用ですから、そういう時に押してくださいね」

「はーい」


 子供と同じで、良い返事こそ話半分なのだ。

 そう何度もなんどもやられるとこちらも精神的に嫌になってくる。

 出ないわけにはいかないのだけど。


「どうしましたか?」


 何度目か。

 ああ、この声ならなんでもないんだと安心して部屋に確認しに行かなくなった頃。


「なんでもありません」


 と。

 言うようになった。

 ここで通話が終わる事が何回か続いたのだがさらに先に進む事になる。


「どうしましたか?」

「なんでもありません」


 ここは当然。


「なんでもないのでしたら、コールを押さなくても良いんですよ」


 と答える……のだが。


「は?」

「なんでもないのでしたら、コールは押す必要ないですよ」

「なんて?」


 聞こえない振りをしているのか、本当に聞こえないのかイマイチ区別がつきにくいので、一応話を切ろうと「なんでもないです」なんて言えば、「なんで?」と疑問が返ってくる。

 今度はコールを押さないで欲しいと伝えるが、持っていないと言う。

 一応確認に行くかと扉をノックして中に入る。


「失礼します。入りますねー」


 事実、おばあちゃんはコールを手には持っていなかった。

 手の側に置いてある。

 手の届く、とりやすい場所に置くのは当たり前なのだ。


「なにかありましたか?」

「なんでもないです」


 なんでもないとの事で部屋を出ればピッチが鳴る。


「なんであなたは話に来たの?」


 寂しさは分かる、分かるのだが。

 また私の手は扉をノックする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ