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王都に向けて

(本日は晴天なり、か)

(そして今日からの長旅を考えると最高のスタートと言える)

 

「ドレッドさん、うれしそうですね」

 メイは隣を歩くドレッドに尋ねる。

「あぁ、こんなにいい天気だと気分もいい」

 彼は笑顔で答えた。

「でも一か月歩き続けるわけですけど…」

「この大人数なら大丈夫だろ」

 メイの再度の問いにドレッドは自分達の前を歩く三十名ほどの集団を見ながら答えた。

「私はすごく不安ですけど」

「まぁ、大丈夫だ。イースが付いてくれてる」

「任せなさい、アレが暴走したら速効で叩き潰してやるから」

 彼女の先にを歩く集団のある人物を見ながらイースは答えた。


 ミチタカの所属するギルド『青い鳥』のギルマス、強面のスキンヘッド『コウヘイ』はカナタの旅の同行のお願いに二つ返事で承諾してくれた。

 『青い鳥』はメンバーの多数決で動くグループだと聞いていたのでカナタは複数人に説明するつもりで彼らのギルドに訪れたがその必要もなくあっさりと決まった。

 今考えればミチタカが先に説明や同意を求めてくれていた可能性もある。そう思うと彼にちゃんと御礼をしなければならない。

 コウヘイからは『青い鳥』の幹部数名の紹介と出発日時を知らされた、出発日時は変更できないとのことだったが同行させてもらうこちら側としてはそれに合わせるだけである。

 その後ミチタカからの申し出でここにいる十名ほどで昼食を食べながら色々な話をした。

 これから一緒の旅をするのだからお互いのことはできるだけ知っていたほうがよい、そのように考えるカナタとは裏腹に彼のパーティ内での騎士と魔術師の話で盛り上がった。当然その話をしたのはミチタカ、彼の不幸な実体験は笑いを誘いこれをきっかけに青い鳥側からカナタとアリサに様々な質問がされた。カナタ達は質問に答えながらこれから同行させてもらう『青い鳥』というギルドの人間関係のよさに居心地の良さを感じていた。


 その日の夜、夕食後。

 出発日時は二日後の朝、そうカナタはパーティメンバーに連絡した。

 メイとイースとドレッドが買い出しを行ってくれいたので日時等に問題はない。ただこの町にいるのがあと一日しかないのでどう過ごすかという点であるが、カナタは自由行動を提案した。この町に来てからなんだかんだでゆっくりとしている日はなかったと思う、だから明日くらいはのんびりしようというカナタの案に反対の者はいなかった。

 


 出発の朝を迎えた。

 アプシルの西門にカナタ達が着く頃には青い鳥のメンバーはほぼ集まっていた。

 青い鳥ギルマスのコウヘイがカナタ等を皆に紹介し、カナタもドレッドとイースとメイを紹介する。

 その際イースは自分を見る青い鳥メンバーの視線に妙なものを感じていた。辺りを見渡すと何名かは目を逸らし中には体格のいい冒険者の影に隠れる者もいた。

(誰かが変なことを吹き込んだみたいね)

 腕組をしとある人物へ視線を向ける、その先にいたのはリーダーの友人であるメガネをかけた彼。

 彼、ミチタカはそんなイースの視線に気づくと同時にカナタの影に隠れた。カナタは明らかに動揺している彼の行動に最初は理解できていなかったが辺りを見渡した際イースの視線に気づくと何かしらこの二人の間に上下関係的なものが存在するとすぐに感じた。そしてそれを感じたのはカナタだけではなくドレッドもまた然り。

 

 メイとアリサはその変わった格好をした人物と対峙していた。

 アリサは怖がるメイの前に立ちその人物に鋭い視線を送り敵意をむき出しにする。

 その人物は悠に身長はニメートルを超えている、ただ頭に被った兜、もしくは帽子なのであろうか大きな”仮面”がその人物像にいいイメージをもたらしていない。その仮面の形は三角錐、素材は獣の皮であろうか、黒に塗装されそれに金色の装飾品が煌びやかに飾られている。一体どこから外を見ているのか、目は外から見えなかった。

 防具も同じようなものでコートで覆われていて一式装備と見られた。とても戦闘用とは感じられず儀式などに用いると言われたほうが納得できる。その黒いコートも金色の装飾品が袖や肩、コートの裾を飾っている。

 

「メイチャンッテイウノ?カワイイネ」

 変態である、とアリサは結論付けていた。

 最初カナタの隣でコウヘイ達と話していたのだが急に後ろからメイに抱き付かれたので驚きながら振り返るとコイツがいたのだ、危険度をランク五つで表すと間違いなく五。

「なんなのですかアナタは?」

 鋭い視線を緩めず問う。

「ワタクシノナマエハ”シンシ”トモウシマス」

 どこが紳士なのだろう、もしかすれば”シンシ”というのはただの名前なのかもしれない。そうだ、このような紳士などいるはずもない。

「メイチャン、アメタベル?」

 彼はそう言いポケットから紙に包まれた”何か”を取り出した。

「いりません!」

 メイははっきりとその怪しすぎる人物からの贈り物を断った。

「ソレハザンネン、フフフ」

 その男は不気味に笑いながら手を引っ込めた。

 不気味な男に気を許せないアリサ達であったがその光景に一人の女性が割って入ってくれた。

「あんた何やってんのよ?」

「コレハコレハ”シータ”サン」

 その人物は金髪のショートヘア、第一印象は格好いいとアリサは感じた。頭以外はメタリックグリーンの鎧を装備しており左手に中型の盾、腰にミドルソードを装備している。

 アリサ達とシンシの間に入るとアリサ達の方を向きながら挨拶した。

「はじめましてアリサさん、メイさん。私はシータっていうの宜しく」

 にこりと笑う彼女にアリサとメイも挨拶を返した。

「はじめまして、アリサと申します」

「メイです、お願いします」

 メイはそう挨拶するとすぐアリサの後ろに隠れた。

「まぁ、ちょっとコイツは変だけど気にしないで」

 メイの行動にシータは弁解する、とは言えさすがに無理があると感じながら。

「あんたもいい加減その喋り方止めなさいよ、正確も相まって気持ち悪いわよ」

「シータサンヒドイデス、キズツキマシタ」

 そう答えながらも彼からは傷ついたような感じはしない。

「…その人も青い鳥の人なのですか?」

「えぇ、結構前からいるわ。その、少女?というかそういうのが好きみたい」

「ハイ、スキデス」

 アリサの質問にシータが答えて彼の性癖を曖昧に伝えるとシンシははっきりと自分の性癖を伝えた。

 場の空気が凍りアリサとメイは彼を『一番身近な脅威』として認識する。

「ダイジョウブデスヨ」

 何が大丈夫なのだろうか、絶対大丈夫じゃない。

「ワタシノイノチニカケテモメイチャンハマモリマショウ!」

 急に決意表明を行う彼にメイはビクっと体を震わせた。

 興奮気味な彼の息は荒く両腕でガッツポーズを取っている。

「あんたが言うと説得力がないわね」

 シータは呆れながらもなんとかアリサ達にシンシが問題のない仲間だと思わせる方法を考える。こんな奴でも戦闘になれば恐ろしく強いのだ。

(戦闘になれば、見直してくれないとしてもなんとかなるかな?)

 シータが考えている傍で”コレ”と一緒に旅をしなければならないという不安がアリサらの心を埋め尽くしていった。

 

 そんな彼女等の奮闘を知らずカナタは青い鳥メンバーと各々話をした、これから一か月くらい一緒に旅をする仲間として。 

 その中で”龍の腕”についての質問は多かった。どうやらキーアイテムと言われるものの一つらしい。

(アレはまだあの森にあるのかな)

 カナタの手にあの感触はまだ残っている、そして何故か龍の腕を身近に感じているのだ。

 この感覚は誰にも喋ってはいない、皆にあれほど心配されたこともあって言い出すことはできなかった。BPの中を探しても見当たらなかったし何故そのような感覚があるのかわからない。

 しかしカナタはそれを脅威としては感じていなかった。


 青い鳥のメンバーが全員揃ったところでコウヘイからの指示とともに一団は西門を潜り外に出ていく。




 港町アプシルから西へ向かうあぜ道が草原の真ん中を突っ切っている。その草原は背の低い草がほとんどで所々露出した地面が見え、その大地には雲の影がゆっくりと動いていた。

 今のとこ見えるのは遠くにうっすら山が見えるくらいで他には特になにもない。

 カナタ達は青い鳥の後ろを着いていく形で歩いている、ドレッドとイースとメイが前を歩きカナタとアリサが最後尾を歩く。モンスターの背後からの攻撃に備えた陣形で今回が初めてである。

「ちょっと変わった人もいましたけどいい人達ですよね」

「そうだね、それにLv60の人も多いしとても頼り甲斐があるね」

「あとは無事に王都まで行けたら万々歳です」

 フフっと笑うアリサにカナタは申し訳なくなる。

 カナタが独断に決めた今回の旅であったがパーティメンバーから反対の声はまったく上がらなかった。自分がもう一人の友人に会いたいがための行動だったが「次からはちゃんと説明してよね、リーダー」と言うイースに皆が頷いたくらいで旅の準備等は彼女が仕切ってくれた。

 王都に行けば会えるかもしれないのだ、今回だけはわがままを通させて貰おう。カナタにとってはどうしても三人目の友人”マモル”のことが気がかりだった。

 快晴の空の下、一団は王都に向け歩き始める。

自由行動の中身が書きたかったけど変態書けて良かった

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