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怒っていない

 バブルリザードととの戦闘の後、ギルド青い鳥と行動を共にしているカナタ達はその池から離れた小さな丘の下に居た。あの池にまだモンスターがいる可能性があった為急遽場所を変えることになり今この場所でやっと朝食をとることになった。

 その中でカナタ達のグループは一段と重い雰囲気の中にいる、それは料理番をしてくれているメイが極端に不機嫌なのだ。


「これはどういう風に盛り付けましょうか、メイさん」

「今日の朝食は一段とおいしそうですね!」

 メイの傍ではシータとアリサがなんとかメイの機嫌を直そうと話しかけているもののあまり効果はない、それでも二人は諦めることなくメイの朝食作りを手伝いながら彼女のツンとした表情を和らげるために奮闘する。

 そこから六メートルもしないところに五人の男女が集まっていた。

 その人物たちは輪になりメイの不機嫌を作り出した張本人、シンシに思い思いの言葉を投げかける。

「あんたは間違ってないと俺は思う」

「まぁ大きなバブルリザードが襲い掛かってきた時に動けてたアンタはすごいと思うわ」

 シンシを励ますのはドレッドとシータ、彼らはジョブ騎士であるためかメイの目の前に立ち最善の方法で問題解決をしたシンシの気持ちがわかるようだ。

「でも死ぬかもしれないような方法で人を助けるのは自己満足よ」

 そう言ったのはイース、シンシが自分の体力をほぼ0にする方法であの場を凌いだことをいい事だとは肯定しない。

「そもそもメイが回復してくれなかったらアンタは本当に死んでたんじゃないの?それにあの大きなバブルリザードが落ちてきたからってあそこにいる全員が死ぬようなものではなかったと私は思うわ」

 確かにあの巨体が落ちたからと言って下敷きになった冒険者達が死ぬことはほぼないであろう、元の世界と違い「レベル」や「体力」、「防御力」といったものがダメージを大きく左右する。つまり下敷きになると確実に死んでしまうという特殊能力でもない限り冒険者一行にとっては死ぬほどのダメージを受けたとは考えられない。

「ソレデモワタシハメイサンヲマモリタカッタノデス」

「だからそれが自己満足でメイが怒ってんのよ」

 シンシの素直な一言にイースはすぐ反論した。

「メイさんがシンシさんの行動を快く思わなかったのは事実です、でも彼女はけっしてあなたに感謝の気持ちがない訳ではないですよ」

 カナタは傍にいるシンシにそう伝えた。

 シンシの一撃で巨大なバブルリザードが光になった後メイはシンシに怒った、なぜそんな無茶なことをするのかと。シンシはなんとか納得してくれるよう話しかけたものの怒ってしまったメイには届かない。それから青い鳥のギルマス、コウヘイより場所変更が伝えらえ結局二人の間には気まずい空気が流れているのだ。

 カナタの一言を聞いたシンシは一度大きく会釈した。カナタより図体が大きいので傍から見ると変な光景でもある。シンシの行動は彼がいかに素直かということを他のメンバー達は感じ取っていた。


「いただきます」

 メイが作ってくれた朝食が振る舞われそれを皆が食べ始める、ただしカナタとメイとシンシは少し離れたところで三人で食べ始めた。実際はカナタのリーダー権限で強制的にだが。

「おいしい」

 カナタは率直な感想を述べる、しかしメイはいつものように返事をしてくれない。

「ト、トッテモオイシイデス!」

 カナタの後すぐにシンシも感想を述べる、それでもメイは返事をしない。

「メイさん、怒っているかもしれないけれどシンシさんもちゃんと反省しているんだよ?」

 カナタはメイに話しかけシンシの気持ちを代弁する。

「ホントウニゴメンナサイ」

 シンシはメイの方を向いて再度謝った。

 

 それから少しの間誰も喋らなかったがメイが口を開いた。

「次からはあんなこと、絶対にしないでください」

 小さな声だがしっかりと、そしてシンシの顔を見てメイが話した。

「こんな世界で死んでしまったら家族の方々に申し訳ないじゃないですか。あなたはよくても生きて帰ることができた私はずっと後悔したまま過ごさないといけなくなるんです」

 メイは続ける。

「私は皆で帰りたい、だから誰かが犠牲になることだけは嫌なんです」

 彼女の言葉にシンシはいかに自分の行動が自己満足だったか突きつけられた。自分よりも幼い少女のほうがしっかりと物事を考えている、このことに後悔は大きくなった。

「でも、」

 メイが少し俯く。

「あの時はありがとうございました」

 そう言いシンシに頭を下げた。

 彼女の言葉にシンシの心の中にあった黒いものが一気に消え去った。

 代わりに求めていたもの、それが彼の心の中を満たしていく。

「う、うぅ…」

 シンシは泣き始めた、彼女の一言が彼が泣く理由になったのは言うまでもない。

 彼にとってその一言が一般の冒険者にそれほどのものではなくても彼にとってその一言はとてつもなく大きいようだ。

「泣かないでください!皆見てますよ!」

 メイは自分を見る視線の多さにあたふたしその原因になっているシンシを泣き止ます為に沢山話を振る、しかし彼が泣きやむ気配はない。

「私は本当に感謝してます!それにシンシさんのことも見直しました!」

 なんとかシンシを泣き止まそうとするメイはシンシのことを褒め続けたがその度彼の鳴き声は大きくなっていく。

(周りの人から見れば私が泣かしているようにも見えなくはない…)

 そんなことを考えたメイはなんとかシンシを泣き止まそうと必死になっていく、本当に泣きたいのは自分なのにと思いながら。

 

 その二人を間近で見るカナタはふとアリサ達の方を見る、そこでは朝起きることが遅いと怒るドレッドとそれに反論するイース、彼らの口論に挟まれるミチタカの光景が映った。

(話し合えるということは、いい事だよね。たぶん。)

 彼はそう思いながらお茶を一口啜った。

だんだん書く期間が伸びてきてしまった。

頭の中では第二期はじまってんのに

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