プロローグ
「来ないでよ!もう私なんか興味ないくせに!」
「違う!向日葵!いいからよく聞けよ!」
とある冬の夕方、住宅地で言い合う少年少女。
高校生くらいだろうか、ツインテールの少女が涙を浮かべる。
「私はずっと綾賀のこと好きだった!なのに何で百合のこと抱きしめてたの!?」
茶髪の少年は必死に叫ぶ。
「俺は向日葵のこと好きだよ!!だから──っ!」
「だから、何?」
そのときガタッと物音がした。
工事中のマンションがくずれおちたのだった。
不運なことに二人はマンションの真下にいたのだ。
「ちょっと綾g───!ひゃっ!!」
少年は少女を庇った。
瓦礫が少年の背中に落ち、どすっと鈍い音がする。
「く…っ!」
たちまち少年の背中が真っ赤に染まる。
「綾賀!綾賀!大丈夫!?死なないでよ!!」
少女は少年に覆い被されるように庇われているので少年の様子が見えない。
でも苦しそうであることは分かる。
がっ!
また何か傷つける音がした。
鉄骨が少年の頭に当たったのだ。
少年の頭から血が流れる。
「ひ…っ!!」
血が少女の頬へと垂れる。
周りは煙に覆われ、よく見えない。
少年の息がだんだん荒くなる。
「っ!向日葵…っ!俺、お前を助け、られて…っ!良かった…っ!」
「何言ってるの!?綾賀!死んじゃあやだよ!」
ぐらっ
少年の身体が傾いた。
少年は意識をなくした。
ひどい出血だ。
足を鉄骨に挟まれている。
「やだやだ!綾賀!しっかりしてぇ!!」
そう願っても、もう遅く二人に更に大きい瓦礫が落ちてきた。
朦朧とする意識のなか、少女は少年に手を伸ばした。
『綾賀───、大好き────。』
翌日のニュースにはこのことがかかれていた。
『○○市の工事中のマンションが倒壊し、男女二人が意識不明の重傷だそうです。警察は原因についてマンションの建設会社に話を聞くそうです。』
もう、何もかも遅い