不幸者
船坂逆……人類史上まれにみる「不幸者」
購入した乾電池の10個に3個は電池が切れているのが、最近の悩みの種。
唐突だが、ここで発表させてもらいたい。
俺は「不幸者」だ。
別に頭がおかしい訳でも、学生特有の病を発症している訳でも、断じてない。
とにかく「不幸者」なのだ。
これに関しては、クラスで成績も運動神経も軒並み低調の俺でも、胸を張って人類最高レベルだと自負している。ではどれだけ不幸であるかを確認するため、俺の人生を軽く振り返ってみよう。
19xx年、俺こと船坂逆誕生。
よし、まず生誕して間もないが不幸ポイントを紹介しよう。
「ふなさかさかさ」
たぶん、大きくなったら「やーいかさかさー! ゴキブリー!」と学友からなじられること請け合いである。どうしてこうなった。
そして我が両親は、俺が生まれる半年前からこの名前を決めていたらしいので、俺の不幸は母の胎内にいるときから始まっていたと言える。
さて、次の不幸ポイントは、それほど間を置かずに起きている。
「生まれて二時間で看護師の手違いにより、3階の窓から投げ捨てられる」
どんな手違いだ。ふざけんなよ。
これ訴えたら勝てるよ。
しかし、庭の植木に落ちた俺は、なんとか軽傷で済んだらしい。
ある意味、幸運とも言えなくはいえ言えません不幸です。
それからも、俺の不幸ポイントは膨大すぎて枚挙の暇がないため。ダイジェストでお送りしよう。
・幼稚園の同級生にラブレターを渡す途中、トラックに轢かれて死にかける。
・コンビニに入ると、10回中3回は強盗に出くわす。
・ファミレスで、俺のコーンスープにだけセミが4匹入っていた。
・小学生の同級生にラブレターを渡す途中、ダンプカーに轢かれて死にかける。
・通院した病院の名前が「直瀬内科」
・タンスの角に薬指をぶつけて骨折。
・タンスの角に親指をぶつけて捻挫。
・高校入学初日、自転車に3回轢かれる。
以上の他にも数多の不幸体験を乗り越え、今の俺は形成されている。どうだろうか、確かに人類の長い歴史の中には、沢山の不幸な人物は存在するだろう、しかしこの世に生を受けたった16年で、累計38回も轢死しそうになったのは、返す返すも俺だけだと思う。
とにかく、俺は徹頭徹尾初志貫徹、それはまさに神から呪いをかけられたが如く、運にもツキにも見放された「不幸者」なのである。
と、ここまで長々と俺の不幸体質について語ってしまったが、そろそろ明るい話をしようじゃないか。
――――「船坂君、私と付き合ってください!」
それは……春のうららなお昼時、空を見れば晴れ渡った快晴。外で昼食をとるには最適な気候だと思いついた俺は、一人校舎の屋上に来ていた。決して友達がいなくてクラスに居場所がないからというぼっちな理由ではない。ぼっちではない。
屋上の柵に手を置き、柔らかな風に頬を撫でられる感覚に身を投じていると、ふと聞こえた件の声。
振り返ると、顔を赤く高揚させたクラスメイトの乃木さんが立っていた。
思わぬ訪問者に俺も目を丸くする。乃木さんといえば俺のクラスである一年B組、それどころか校内でも有数の美少女だ。
週一で行われているらしい全校生徒7000人以上の中から選抜される美少女ランキング(男子のアンケートを基に新聞部が作成しているとか)でも、常に20位あたりをとっていたはずだ。他ならぬ俺も乃木さんには好意を寄せている。
そんな俺にとって、こんな状況は願ったり叶ったり、棚からぼたもち、豚に真珠だ。
だからこそ、俺の答えはたった一つだった!
「断る」
このサイトには初めての投稿です、拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。