一話 誰ゾ!?
午後五時。
僕は家に居ました。
特にすることもなく、椅子に座って漫画を読んでいたのです。
すると、
ピンポーン・・・
最近取り替えたばかりのインターフォンが鳴りました。
まだ聞きなれないそのインターフォンに気だるさを覚えながら、僕は漫画本を置いて玄関に向かいました。
いつもならば母なり祖母なりがインターフォンを取るのですが、生憎その日は僕しか居ませんでした。
「へいへい・・・」
誰ですかね?と、玄関を開けました。
あー、っと、
僕の家ってのは、口で表現するのが難しいのですが、家の玄関を出てからちょっと10mくらい歩いた所に、家の敷地を出る表玄関があるのです。
だから玄関を開けて、ちょっと歩いた時点で誰が来ているのかは解るのです。
奴だ。
僕は立ち止まりました。
奴です。
ヤマダ(仮)です。
来ましたよ。奴が。モチロン、隣には彼女さんの姿も見えます。
物凄くUターンしたかったです。ムーンウォークが出来たなら、向こうに歩いてる振りして家の中に戻っていきたかったです。
が、生憎僕はムーンウォークができないので、そのまま歩くしかありませんでした。
そして、
「よぉ」
と、ヤマダが手を挙げました。
「よぉ・・・」
と、僕も手を挙げました。
「こんばんわ」と、彼女さんは頭を下げました。毎回思うのですが、この彼女さんは凄く礼儀正しいですね。
閑話休題。
僕は彼女さんにも挨拶をしました。そして、「何の用?」と表の玄関を開け、
「・・・・ぁ?」
気付きました。
気付いちゃいました。
ヤマダの右隣。彼女さんの左隣。二人の間に、
誰か居る。
誰ゾ!?
僕は一瞬身じろぎました。
だって、全く見覚えの無い男性が立ってるんですもん。
誰さ。アンタ誰さ?
今度ばかりは、中学時代のクラスメイト、とかそういうものでもないです。
一切記憶の中にその人の顔がありません。まさしく初対面です。
「あ、どうも・・・」と、その人は頭を下げました。
「あ、どうも・・・」僕も下げました。
誰?って凄く聞きたかった。
まぁ、ともかく。
「上がれよ」
と、いう事で、やっぱり今回も僕は彼等を家に上げてしまうのでした。
ヤツの話です。
そういう事なのです。