第四章 【088】
【088】
「……!!!」
エックハルト・シュナイデンに、いきなりキスをされた隼人は、一瞬、硬直し、その後、すぐに、エックハルト・シュナイデンを引き離した。
「な……なな……な……」
隼人が、どもる中、エックハルト・シュナイデンがクスクス笑いながら呟く。
「どうじゃ、隼人? 記憶は戻ったか? これが、わたしたち『英雄五傑』が神と契約して『管理者』となり、お前に『記憶のカケラ』を渡す際の方法だ。だから、スキを見せやすい『幼女』に転生したのだ」
「そ、それは、まるで、『俺が幼女が好きだ』と言っているように聞こえるんですけど……」
「違うのか?」
「当たり前だろ?!」
「……本当に?」
「本当だ!」
「本当に?」
「当然……」
「本当に、本当に?」
「うっ……?!」
エックハルト・シュナイデンが下から上目遣いで再度訪ねる。
「……い、妹を見ているような愛らしさを感じているだけ……だ!」
「ふっ……まあ、そういうことにしておくか。わたしはそこまで鬼ではない」
はぁ~……と、ため息をこぼす隼人だったが、直後、頭が割れるように痛み出す。
「う……うう……」
「は、隼人……?!」
シーナが隼人に駆けつける。
「大丈夫、心配するな。今、隼人の中に失われた記憶の一部が入っていった。そして、それが隼人の頭の中で『再構成』をしている最中だ。なーに、少し、頭痛は走るようだが、すぐに元に戻る」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ、本当だ。わたしは管理者だぞ、心配するな」
「う……うあ……うああ……!!!」
隼人は、頭を抱えたまま、膝を突いた。
「「「「「「「ハ、ハヤト……!!?」」」」」」」
シーナや他の皆も隼人の状態を見て駆け寄る。
「!!!!!!!!」
隼人は、自分の『記憶のカケラ』のひとつを垣間見た。
※
「……こ、ここは?」
気がつくと、隼人は『部屋』のベッドの中にいた。
「こ、ここって…………俺の……生きていたときの……部屋?!」
そこは、地球で生きていたときの『自分の部屋』だった。
隼人はベットから身体を起こし、部屋を見渡す。
「そうだ……ここって俺の部屋だ」
時間はちょうど昼下がりのようで、開いている窓からは、そよ風がカーテンを揺らし、同時に、車の通る音や、子供の笑い声といった喧騒が聞こえてくる。
隼人が生きていたときの『いつもの日常』がそこにあった。
「そっか、俺は、夢を見ていたのか……」
隼人は、しばらくベットに腰掛けたまま、ボーッとしていた。
「何だろう? 何か変な夢だったな。俺が一度死んで、異世界に行って、そこで敵と闘って、魔法みたいな力で『チート無双』で、ハーレムで…………はあ、ちょっとアニメ観すぎたかな? さすがに、あそこまでリアルな『厨二病夢』を見る俺ってどうよ?」
隼人は自分の現状にへこんだ。
「もう、手遅れなのかもしれないな……俺」
そうして、隼人の自己嫌悪が一通り終わった後、
「あれ? そう言えば、今日って何日だっけ?」
隼人はドアの前に掛けられているカレンダーを見る。
「げっ! 12月23日! 終業式じゃん! ど、どうしよう。一応、式が終わったらHRがあるから、今から行けばHRには間に合うけど……でも、完全に遅刻だ。担任に絶対怒られる……!」
隼人は、しばらく考え、
「まだ、ちょっと頭もボーッとするし、と、とりあえず、風呂に入ってスッキリしてから判断しよう」
そういうと、隼人は、ベットから立ち上がり、一階にある浴室へ向かおうとした。
すると、突然、ドアがバンッと開く。
「!?」
そこには、一人の少女がいた。
「お兄ちゃん!……」
そう呟く少女を見て、隼人は驚きのあまり固まる。
「シ……シーナ!?」
そこには、夢で見た「シーナ」という少女が立っていた。
「お兄ちゃん……どうして…………」
少女は涙を溜めながらベットへと近づいてきた。
「な……?! なんで、夢に出ていたシーナがここにいるんだ? し、しかも、お兄ちゃんって……俺、妹がいたのか?! ていうか、シーナって俺の本当の妹ってこと? あ、いや、でも、何か雰囲気違うし、顔もちょっと違う? で、でも、声もそっくり……えっ? な、何が……どうなって……」
隼人がシーナを見て混乱している中、シーナはベットに腰掛ける隼人に向かって飛び込んできた。
「お、おい、シーナ!」
隼人はてっきり、シーナが自分に抱きついてくると思って身構えていた。
――しかし。
「!!……なっ?!」
少女は、隼人の身体を『すり抜け』、その『ベットに横たわっている隼人』に抱きついた。
「お、俺が…………二人?!」
そこには、目を瞑り横たわっている…………『二ノ宮隼人』がいた。
「更新あとがき」
おはようございます。
一週間ぶりくらいかな? の、
mitsuzoです。
更新しました~。
いろいろと、ここから話が一気に展開していきます。
年内までには、これまでの『第一部』を完結させるつもりです。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




