第四章 【087】
【087】
「エックハルト……貴様が、どうして、ここにいる?」
ジュリア・フランヴィルが、エックハルト・シュナイデンに厳しい口調で問いかける。
「おいおい、ジュリア、そんな怖い顔すんなよ。幼なじみの仲だろ?」
「ふん……よくも抜け抜けと。今更、そんな軽口な会話ができる仲じゃないだろ?」
エックハルト・シュナイデンは笑みを浮かべ、ジュリア・フランヴィルは厳しい顔を崩さず、今も緊張の糸を張って、臨戦態勢を取り続けていた。
「し、師匠……」
「おお、サラ……サラ・スカーレットじゃないか。久しいな」
ここで、サラ先生がエックハルト・シュナイデンに声をかけた。
「な、なんで、その…………幼女なんですか?」
そう……そうなのだ。
俺もシーナもアイリも、サラ先生から聞いていた『エックハルト・シュナイデン像』があまりにもかけ離れている……というより、性別が違うという『かけ離れているを通り越したかけ離れ方』に驚いていた。『30代後半の男性』とは何だったのか?
「ああ、これか? 気にするな……ちょっと『契約』をして性別が変わっただけだ」
「はっ?」
「だから~、『契約』したからこうなっちゃったの」
「「「…………」」」
いやいやいや……、意味わかりませんから!?
答えになってませんから~!?
「『契約』? 何だ、それは?」
ジュリアが尋ねる。
「ん? ああ、『神』と『契約』を交わした」
「「「「「「か、神……?!」」」」」」
その場にいる皆が驚く。
「ちょっとややこしくなるから、大まかにしか言わないが、わたしを含めた『英雄五傑』全員が、あの『第一次種族間戦争』の終結のために、身を投げて死んだのはわかるだろ? あの後、『英雄五傑』全員はな……一度死んで、『あの世とこの世の狭間』? ていう世界に行き、神とあったんだ。」
「「「「「…………ええええええええええええええ!!!!!」」」」」」
「そんで、生まれ変わった時に『契約』をさせられてな……」
「「「「「な、何の契約……?」」」」」
皆が、エックハルト・シュナイデンに聞く。
エックハルト・シュナイデンは、笑みを浮かべながら俺とシーナを見て呟いた。
「……二ノ宮隼人の『管理者』になってくれ、と」
「「!!!!!!!!!!!」」
「「「「???????」」」」
エックハルト・シュナイデンの言葉に俺とシーナが驚く横で、皆は、何を言ってるのかさっぱり……? という表情でポカンとしていた。
「シ、シーナ……これって……」
「ああ、こんなの聞いたことがないが……だが、間違いないだろう。あいつは『あの世とこの世の狭間の世界のこと』、そして、何より、お前の記憶を管理している『管理者のこと』も知っているのだからな。エックハルト・シュナイデンは、本当に神と会っている」
シーナは、必至に冷静さを装って話をしているようだったが、明らかに動揺していた。
「い、一体、な、何が、起こっているんだ……?」
「わからん。何がどうなっているのか……」
シーナが、眉間にしわを寄せ、苦悶の表情を浮かべる中、幼女・エックハルト・シュナイデンは、俺の方に向かって寄って来た。
「……二ノ宮隼人。わたしがお前の『管理者』だ。お前の『記憶の一部』はわたしが所持しておる」
「「!!!!!」」
俺とシーナがエックハルト・シュナイデンの発言にさらに驚愕する。
「まあ、驚くのも無理は無い。それは、そこにいる『指導者見習い』も知らないことだからな」
「!! な……」
シーナは、エックハルト・シュナイデンの言葉に、ただただ、驚くだけだった。
「しかし、わたしが持っているのは、あくまでお前の『記憶の一部』でしかない。残りは、他の『英雄五傑』が所持しておる」
「えっ……? 英雄五傑が?」
「うむ。あと……そこの『指導者見習い』よ」
「?! えっ? あ、はい……」
シーナは、突然、話かけられたのもあり、気の抜けた返事を返す。
「お前が知らないのも無理は無い。実は今、『神側の世界』で『大きな事件』が起きていると言っていたからな。それをお前に伝えろとも告げられている」
「そ、そうなんですか……」
「うむ。あと、あのお前が使っている『メモ帳』があるだろ?」
「!?……」
「別に隠さなくても良い。わたしは『そこまで』は聞かされている」
「…………は、はい。メモ帳は、持っています」
「あれはな……もう使えん……」
「えっ?」
「らしい……」
「らしい?」
「うむ。わたしも『そこまで』しか聞かされていないからな。とにかく、あのメモ帳は使えなくなったと言っていた。だから、今後のことは、わたしが、いろいろとアドバイスをして、二ノ宮隼人の『記憶のカケラ』を持つ、残りの『英雄五傑』を一緒に探すことになる。これが、わたしが『神』と『契約』した内容だ」
「……」
シーナは、すぐには状況を飲み込めずにいた。無理も無い。
「まあ、そういうわけだから、これからよろしくな、シーナ。ところで、二ノ宮隼人よ……」
「は、はい……!」
エックハルト・シュナイデンは、俺のことを『ハヤト・ニノミヤ』じゃなくて『二ノ宮隼人』と呼んでいる。
やっぱり、こいつ……本物だ。
隼人は、シーナよりも、少しは状況を飲み込み始めていた。
「さっきのサラ・スカーレットの質問の話に戻るが、おそらく、お前も、それについては知りたがっているだろう……? わたしが、なぜ、『幼女』として転生してきたかを?」
「えっ……あ、はい」
『幼女が気になる』ということではないが、男性が女性として転生するのに『理由』があるなら、それは、知りたい。
「それはな、わたしが、お前の『記憶の一部』を所持している『管理者』だからだ……」
「??」
ん? どういう意味だ?
「つまり……、わたしたち『管理者』は……お前に、こうやって……『記憶』を……渡すからだ」
「!?!?!?!?」
そう言うと、エックハルト・シュナイデンは、俺にさらに近づき、両肩に手を置くと、背伸びをして…………口唇を重ねた。
「「「「「「!!?!?!!!!!」」」」」」
エックハルト・シュナイデンのその行為は、俺はもちろん、周囲の空気を一斉に凝固させた。
「更新あとがき」
おはようございます。
いろいろと時間がせっぱ詰まっている現状の、
mitsuzoです。
更新しました~。
『エックハルト・シュナイデン』……グイグイ、来ております!
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




