第四章 【083】
【083】
俺は、また元の姿に戻り、フレンダとマルコのところへ戻って行った。
「フレンダ、マルコ。ケガはないか?」
俺は、淡々とフレンダに声を掛けた。
「な、な、なな……」
「?……」
「な、何が、どうなっているんですの、あなたはっ?!」
「え、ええっ?!」
フレンダが、堰を切ったかのように、大声で叫びながら詰め寄ってきた。
「ええっ?!……じゃないですわよ! それはこっちのセリフです! な、何ですか、今の力は?! というより、あの姿は何なんですか?!」
「あ、え、ええっと……ス、ストップ。タ、タンマ、タンマ?!」
俺はフレンダの勢いに『一旦、落ちつこっ!』という体で宥めようとする。
「ストップじゃありません! これが、落ち着いていられますかっ!」
で、ですよね~。
「わ、わたくしは……あんな魔法……見たことも聞いたこともありません。あなたは一体何者なんですか?」
「あ、い、いや、あれも魔法の一種……」
「うそおっしゃい! これでもわたくし、魔法に関してはかなり熟知しておりますのよ。その、わたくしでも、こんな魔法は知りません」
「うっ……」
「さあ、白状なさい。ハヤト……あなたは何者なのですか?」
うーん、困った。
まさか……『異世界者』とは言えないよな~。
俺は、フレンダの質問にどう答えようか、悩んでいた……その時、
「フレンダさん! 今はそんな時ではありません!」
「「マ、マルコ……っ!」」
マルコが、俺とフレンダの間に強引に入ってきた。
「今はそんなことよりも、他の生徒の救出に行きませんと!」
「きゅ、救出……? セントリアに戻るんじゃ……?」
「いえ。今なら、今のハヤト様の力なら、救出できるはずです!」
「た、確かに……」
フレンダとマルコは俺を同時に見る。
「ああ……大丈夫。もう…………大丈夫だ! フレンダ、すまない。そのことは後でちゃんと話すから。今はとりあえず、ジュリアや、みんなのところに救出に向かおう」
俺は、フレンダの目を強く見つめ訴えた。
「!?……わ、わかりましたわよ。そ、それじゃあ、終わったら、ちゃんと、お、教えるのですよ、約束ですよ?」
フレンダは、少し頬を朱に染めながら、ハヤトに返事をした。
「わかった。必ず話すよ……ありがとう、フレンダ」
「べ、別に、お、お礼なんて……と、とにかく、約束ですわよ?!」
「よし、それじゃあ、急ごう!…………神通具現化!」
俺は、再度、『金色の戦士』を起動。
そして、二人を両腕に抱えた。
「え、え?……ハ、ハヤ……ト……?」
「ハ、ハヤト様……?」
「しっかり捕まえてろよ、二人とも…………飛ばすぞ!」
俺は地面を一蹴りした。
ドンッ…………!?
「「え、え、えええええーーーーっ!!!!????」」
俺は二人を両手に抱え、空を超加速した。
「な、なな、そ、空を、こ、こんな、速度……で……?!」
「ハ、ハヤト様……ス、スピード……出しす……ぎ……?!」
俺は、二人には悪いが全速力でジュリアや皆がいるであろう『南東側の拠点』へ向かった。
「待ってろよ、ジュリア…………シーナ、アイリ!」
※
「おおおおおおりゃあああ~~~!!!!!」
「「「「「グガアアアアア~~~~~~!!!!!!!」」」」」
大剣オーディンを一閃。目の前の数十の獣人族が吹き飛ぶ。
そう――組合総隊長ジュリア・フランヴィルである。
「皆の者、がんばれー! 今、セントリアに応援を遣わせた! すぐにやってくる! だから、決してあきらめるでないぞっ!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!」」」」」
――『南東側の拠点』
組合総隊長ジュリア・フランヴィルは、隼人たちと別れた後、迫っていた敵を蹴散らし、『南東側の拠点』に着き、仲間と合流していた。
「ジュリア様! ご無事ですか!?」
「うむ、問題ない。エドガー、生徒たちは大丈夫か?!」
「はっ! 私の班の者は全員無事です」
数十人の生徒を引き連れて、エドガー・バスティアーノが声を掛けた。
「そうか、よかった。サラは……サラ・スカーレットはどうした?」
「わたしはここだ、ジュリア」
ジュリアの後方からサラ・スカーレットが声をかける。
「ふっ……相変わらず、しぶとい奴じゃ」
「ふん! それはお互い様だ、ジュリア」
ジュリアとサラは同時に笑みをこぼす。
「ところでジュリア……お前の班のハヤト……」
「ジュリア様!……」
シーナが、真っ先にジュリアのほうに駆け寄って声をかけた。
「んっ? お前はたしか……特別招待生の……」
「はい。シーナ・ニノミヤと言います。あ、あの、隼人は……お兄ちゃんはどこですか!」
「お前が特別招待生のシーナ・ニノミヤか。うむ、ハヤトやミラージュ家の娘、デルフォード家の男は無事だ。今、あいつらにはセントリアに応援を頼ませ走らせた。大丈夫、わたしの知る限りでは、ミラージュ家の娘もデルフォード家の奴も能力は高い。きっと戦闘経験の無いハヤトをちゃんとサポートして無事にセントリアに戻り、応援を呼んでくるはずだ」
「えっ?!……」
シーナは、驚いた表情でジュリアを見る。
「?……どうした?」
「い……い、いえ……大丈夫です。ありがとうございました!」
シーナは、一礼するとすぐにアイリたちのところへ戻っていった。
「シーナー! ハヤトたちは無事なの?!」
「シーナ! フ、フレンダ様はご無事なんですか?!」
「え? あ、う、うん。大丈夫よ。お兄ちゃんもフレンダもマルコも無事だって。今、セントリアに応援を呼びに言ってるみたい」
「そ、そう! よかった……みんな無事で」
「フ、フレンダ様、ご、ご無事なんですね? よかった……本当によかったです~~~~!!」
アイリはホッと胸を撫で下ろし、ミラージュ家の分家貴族ベル・コリンズは地面にへたり込み泣きじゃくっていた。
「大丈夫よ、二人とも。フレンダもマルコも付いているんだから、きっと、お兄ちゃんたちがすぐに応援を呼んでくるわ」
「うん、そうだね!」
「あ、当たり前でしょ!? フ、フレンダ様は最強なんですからね! ふん!」
アイリもベルも元気よく返答する。
「……」
二人には笑顔で応えたシーナだったが、しかし、一人、困惑していた。
どうして……どうしてあの人は、ジュリア・フランヴィルは隼人のことを、
『戦闘経験のない』
と、知っていたんだ?
もしかして、リサ・クイーン・セントリア女王陛下は『エックハルト・シュナイデンの捜索』を組合にも声を掛けているのだろうか?
いや、それはリサにとって何かと都合が悪いはずだ。では……ジュリア・フランヴィルだけが知っているってことなの?
悩む。シーナは悩む
しかし、シーナの悩みはこれだけではなかった。
とりあえず、今はそれどころじゃない、か。それにしてもまずいわね、隼人がいないなんて。隼人がいれば、隼人の神通具現化の力をわたしがうまく誘導できたのに……。
シーナは周りを見渡す。
周囲では、生徒も組合の一般魔法士も自分の力を最大限に発揮し、獣人族の大群に対抗している。
「隼人の神通具現化が期待できない今、わたしにできることか…………まあ、ひとつしかないわよね」
シーナはフッと微笑して、キッと目に力を込め…………覚悟する。
『五回』しか使えない神通具現化の発動を。
それは、『五回』使った後、自分がどうなるのかを理解しての…………覚悟だった。
シーナが両手を拡げ、目を閉じる。
「「シーナ……?」」
アイリとベル・コリンズがシーナの異変に気づく。
シーナは、二人が自分の異変に気づいたのを感じていたが、気にせず、精神を研ぎ澄まし、集中していく。
「神通……具現……」
――その時だった。
「波ーーーーーーーーーっ!?」
ドーーーーーーーーーン!!!!!
「「「「「!?……」」」」」
突然、誰かの雄叫びがしたかと思うと、空から獣人族に向かって『巨大なエネルギーの玉』が突っ込んでいった。
「「「「「「「グギャアアアアアアアアアア…………!!!」」」」」」」
獣人族の大群の中に突っ込んでいったエネルギー弾は、片っ端から獣人族を吹き飛ばしていく。
「なっ?! な、なんだ、今の巨大なエネルギー弾は!!」
ジュリア・フランヴィルも驚きを隠せないでいた。
「ジュ、ジュリア様……! う、上を……!」
「上……?」
ジュリアや、周りにいた組合の魔法士、そして、シーナやアイリ、ベル・コリンズといった学校の生徒たちも皆、一斉に空を見上げる。
「ジュリア! シーナ!」
「「「「「ハ、ハヤトっ?!」」」」」
ジュリア、シーナ、アイリ、ベル・コリンズ、サラ、皆が一斉に隼人の名を叫んだ。
フレンダとマルコを抱えた『金色の戦士』は、ジュリアたち、シーナたちのいる『南東側の拠点』に追いついた。
「更新あとがき」
おはようございます。
台風も去って、なぜかやる気を出した、久しぶりの連続投稿の、
mitsuzoです。
記事更新しました~。
あっ! あと、「【アナザーワールドへようこそっ! 世界観】」の一部を変更しました。
「変更点」は、
「精霊魔法を使える種族は、『妖精族』と『半妖精族』」
としていたのを、
「精霊魔法を使える種族」は「半妖精族」だけ
としました。
これが、本来の「設定」だったのですが、調べたら間違っていたので訂正しました。
なぜ、気づいたのか?
それは、これから少し先の話で扱う情報だったからです。
ということは……? 先の話で……? 半妖精族の話が……?
まあ、予定は未定ですが、まあ、そんな感じです。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




