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アナザーワールドへようこそっ!  作者: mitsuzo
第四章「夏期(サマーシーズン)へようこそっ!」 【069】
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第四章  【079】



  【079】




「に、二万……」


 ジュリアの口から出たその言葉に、俺は、最初、意味がわからなかった。


「そ、そんな……」

「どうして……」


 フレンダもマルコもジュリアの言葉に動揺していた。



「わからん。わらわたちも、今、ここで何が起こっているのか……しかし、一つ言えることは、絶体絶命だということじゃ」

「「「……」」」


 皆が沈黙した。


「いいか、お前ら。わらわは、これから南東側の拠点に加勢に行って来る。お主たちは、いま来た道を全力で戻れ」

「「「えっ……?」」」

「急げっ! ここは、まだ敵に気づかれていない。お前たちだけでもセントリアに戻り、他の組合員ユニオンメンバーや、王立軍にこの事を伝え、援軍を呼ぶのじゃ!」

「で、できません! 私はジュリア様と一緒に戦います!」

「わ、わたしだって……一緒に戦います!」


 フレンダとマルコがジュリアに請願する。


「ならぬ。お前たちなどいてもタダの足手まといじゃ。邪魔だと言ってる。お前たちにできることは無事にセントリアに戻り、援軍を呼ぶことだけじゃ」

「「……ジュ、ジュリア様」」


 ジュリアが断固として拒絶を示す。


 そのジュリアの言葉がどういう意味を指すのか……さっきの負傷兵とのやりとりを見ていれば明らかだった。


「あのさ、ジュリア……」

「!?……ハ、ハヤト」


 隼人が、ジュリアに向かって告げる。


「俺は、ジュリアがどれくらい偉くて、どれくらい凄い人なのかはわからない。だから、俺は、お前の言うことには……従わない」

「何っ?!」


 ジュリアの顔が明らかな剣幕に変わる。


「ジュリア、お前もここから俺たちと一緒に逃げるぞ」

「「えっ……?!」」

「な、何だとっ!?」


 俺の言葉に、ジュリアはもちろん、フレンダとマルコも目を点にして驚いた。


「に、逃げるだと……! ハヤト、お前、それは本気で言ってるのか?」

「もちろん」

「ハヤト、あなた、自分が何を言っているのか、わかってるの?! それは、敵を前に尻尾を巻いて逃げるってことなのよ。しかも、仲間を見殺しにして……」


 フレンダもすごい剣幕で、隼人に突っかかってきた。


「ああ、そうだ。敵を前に尻尾を巻いて、仲間を見殺しにして、逃げるんだ」

「ハ、ハヤト様……」


 マルコは責めはしなかったが、しかし、その表情を見ると、フレンダと同じ意見のようだった。


「ハヤト……お前たちだけならわかるが、なぜ、わらわにも逃げようなどと言った? もし、お主が、わらわのことがかわいそうだと思っての発言なら……」

「そんな訳ないだろ。ジュリアのことはさっき話を聞いて理解しているつもりだ。俺は、ジュリアに一緒に逃げてもらったほうがセントリアまで無事に戻れる可能性が高いと思ったからさ」

「……なるほど」

「獣人族は身体能力が高い種族なんだろ? だとしたら、自分たち三人でセントリアに向かったとしても敵に捕まる可能性は高いと俺は思う。それならジュリアに一緒に来てもらったほうが、仮に、敵に見つかって襲撃されたとしても乗り切れると思うんだ。だから……」


 隼人は、ジュリアに向かって必至に想いを伝えた。


 いくら、ジュリアが強いのだとしても、こんな数を相手に勝てるわけがない。


 ならば、一人でも多く、ここから脱出することが先決だ。


 隼人は、そんな想いでジュリアに伝える。


 しかし……、


「ハヤト……ありがとう。お前の気持ちはよくわかった。だがな、それは無理じゃ」

「!? ど、どうして……」

「『組合ユニオン総隊長』とは、『敵に背を向けない者』だからだ」

「そ、そんなの、状況によっては退却も必要……」

「ハヤト!」

「!?」


 ジュリアが隼人の話を遮る。


「そういうものなんだ」

「ジュリア……」


 再び、四人は沈黙する。


「いいか、ハヤト。そして、お前たち――。お前たちは急いでここから去り、セントリアまで一気に駆け抜けるんじゃ。その間、わらわがここで食い止める。これは命令ではない、わらわからの…………お願いだ」

「「「!?」」」


 ジュリアは俺たち三人に頭を下げながらそう告げる。


「き、汚いぞ、ジュリア……」

「すまんな、ハヤト。ここはわらわを立ててくれ」


 ジュリアがやさしく隼人に呟く。


「「ジュリア様……」」


 フレンダとマルコが目を瞑り、震えながら、ジュリアの言葉を聞いていた。


「……わかったよ、ジュリア。俺たち三人はセントリアに戻るよ、なっ?」


 俺は、二人を見て呟く。


「「……」」


 フレンダもマルコも、もう何も言わなかった。


「ありがとう、ハヤト。世話をかける」

「……いいさ。この借りは『今度』絶対に返してもらうからな」

「フッ……ああ、わかった」


 ジュリアは、隼人に向かってそう言って笑った。隼人もそれに笑顔で返した。


「さあ、もう行け。もう、奴らもそろそろここにやってくる。急ぐのじゃ!」

「「は、はい!」」


 フレンダもマルコも覚悟を決めたようで、はっきりとジュリアにそう答える。


「わらわはもう行く。お前たちも行け!」


 ジュリアは、そう言って、南東側の拠点へと走り出した。


 それに合わせて、フレンダとマルコも走り出す。


 俺は、二人の後を追う。


 でも、その前に、ジュリアにもう一度、『約束』の念押しをした。


「ジュリアー! 今日の『借り』は後で絶対返せよな! 絶対だぞ! お前、組合ユニオン総隊長なんだから『約束』はちゃんと守れよー!」


 ジュリアは、振り向かず、ただ、その右手の拳を、高々と、力強く突き上げて森の中へ消えていった。


「……約束だぞ」


 隼人は、自分に言い聞かせるように一言そう呟き、その場を後にした。





  「更新あとがき」




おはようございます。


今日から、大分、涼しくなって気持ちの良い季節になってきての、


mitsuzoです。



更新しました。


これから年末にかけて、更新頻度を上げて行こうという気持ちで頑張りたいと思います。



……まあ、できれば(願望)ですけど。



というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)

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