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アナザーワールドへようこそっ!  作者: mitsuzo
第三章「春期(スプリングシーズン)へようこそっ!」 【行間2】
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第三章  【068】




  【068】




「人間族の国……セントリア王国、その王国内で『王族』と同じくらいの発言力を持つ組織……それが『教会』であり、その教会の中でも最大派閥の組織が『セントエレナ修道会』です」

「「セントエレナ修道会……」」


 リサは、俺とシーナに教会についての詳細を話し始めた。


 理事長室からは、まだカルロスとロマネの熱い舌戦が繰り広げられている様子。それにしても、理事長室にはサラ先生もいるはずだが、しかし、サラ先生の声は一向に聞こえてこない……ということは、ほとんどカルロスさんとロマネさん、二人だけがしゃべっている状態で、サラ先生は二人の間でイライラしながら話を聞いているんだろうな~と容易に想像できた。


 これなら、しばらくは大丈夫だろう。


 俺は再度、理事長室からリサの話に集中を戻した。


「セントエレナ修道会……信者数は、ここアナザーワールドの人間族の約半数である百万人の規模を誇る大組織です」

「百万人で半数……ということは、アナザーワールドの人口は二百万人ということなのね……」

「うん、そういうこと」

「それって、すごい数だな……」

「まあね……それだけの信者数を持つこの『セントエレナ修道会』の影響力は、他の『教会』関係の組織の中でも絶大よ。だから、王族としても、政府としても、無視できない組織ということなの」

「……てことは、政府内にもその……『セントエレナ修道会』の人たちも……」

「うん、いるわよ。数的には『貴族』と同じくらいね……」

「『貴族』……と?」

「うん、だから発言力は『貴族』と『教会』は同等……てことになるかな?」

「あの『プライドの塊』のような貴族がそんな自分たちと同等だなんて……どうなの?」


 シーナは、イタズラな笑顔を浮かべ、瞳をキラキラさせながらリサに続きを促した。


 お前は主婦かっ!


「シーナの思っているとおりよ。『貴族』からしたら『教会』なんかと同等と思われている時点で、すでにハラワタが煮え繰り返る、忸怩たる思いってとこよ」

「やっぱりね。でも『貴族』は信者数が人口の約半数もある『教会』相手じゃ勝ち目なんてないんじゃないの?」

「ふふ……まあ、そうでもないのよ、シーナ。詳しくは今度話すけど、『貴族』は『貴族』で、『教会』とはまた違った『アドバンテージ』を持っているから。だから『教会』もそう簡単に自分たちが『貴族』の上に行けるなんてことは思っていないわ……今のところはね」

「なるほど……。つまり、現在のこのセントリア王国の『均衡状態』『パワーバランス』が『エックハルト・シュナイデン問題』で大きく崩れる可能性があるということか」

「そういうこと。だから、一刻も早く、エックハルト・シュナイデンを『王族』の私たちが捕らえる必要があるってことなの」

「え? そ、それって……その言い方って……ま、まさか、このエックハルト・シュナイデンの件は『貴族』も絡んでいるってこと?」


 ハヤトがリサに恐る恐る尋ねる。


「もちろん。だから急ぐ必要があるの」


 ガーン。


 そ、そんな……。


 タ、タダでさえ、得体の知れない『教会』だけでも嫌な予感満載だと言うのに、ここに『ブルジョア貴族』も参戦なんて……。


 マジ、勘弁。

 

「ところでリサ……」


 と、ここでシーナ。


「今回、エックハルト・シュナイデンと教会……えっと……セントエレナ修道会はどういう関係があるの?」

「う、うん……そこなんだけど、わたくしが天啓メッセージで神から頂いたメッセージではこうあった…………『セントエレナ修道会の中に『闇属性の者』が存在し、その者がエックハルト・シュナイデンを操っている』……と」

「えっ?! 闇属性? 確か、闇属性って……」

「うん。一応、現在、このセントリア王国、また人間族の中に『光属性』と同様『闇属性』という存在はみつかっていないわ。ちなみにこの天啓メッセージのとき、神はその闇属性の力のことも教えてくれました。『闇属性の者』は『人を操る魔法』に秀でている、気をつけよ……と」

「人を操る……魔法」

「はい。なので、ロマネやカルロスが言っている『エックハルト・シュナイデンが操られていた』というのは、このことだと思われます」

「そ、そこまでわかっているのなら、ロマネやカルロスにも教えたほうがいいんじゃ……」

「いえ、それはできません」

「ど、どうして!?」

「これを話して二人がどんな策を講じるのかもわからないし、また、一度二人で決定した『策』は、わたくしの意に副わないものだとして却下しようとしても、『まだ幼いから何もわかっていない』などと言われ、止めることはできないでしょう」

「リ、リサ……」

「それが今のわたしの彼らからの『信用』ですのでそれは仕方ないと思っています。でも、この件に関しては絶対に『失敗』は許されません。ですので、わたくしはハヤトとシーナ、二人の『異世界人の出現』をずっと心待ちにしていたのです」

「リサ……」


 なるほど、そうだったのか。


 政府内でも、王族内でも、今、リサは……………………『ひとりぼっち』だったんだ。


 まあ、こんな、俺たちとあまり変わらない年で、一国の主となったんだ……そりゃあ、周りは『そんな目』でしか見ないだろうな。


 そう考えると、リサが単独で動いているのもよくわかる。


 しかし――、


「無茶ね……」

「……シーナ」

「いくら女王陛下と言っても、あなたは『一人のか弱い女の子』なのよ。リサを助けてくれる味方がいないと、あなた……いつか命を落とすわよ」


 シーナが厳しくリサに言及する。


「うん、わかってる、よくわかってるわ……シーナ。でもね、でも、それでもわたくしは…………セントリア王国の王なのです」


 シーナの厳しい言葉に対して、誠実さと凛とした強さで答えるリサがそこにいた。


 そのリサの姿を見て、俺とシーナは顔を合わし、そして……、


「まったく……ここまで『頑固で強い女の子』とは思わなかったわ、リサ」

「シ、シーナ?」

「本当だよ……まあ、ここまで女王陛下様に期待されてそれに応えないとあっちゃ~異世界人がすたる、てなもんだっ!」

「ハ、ハヤト……」


 俺とシーナはリサの肩に手をかけ応える。


「「俺たちの手でこの事件、解決しちゃおうぜ、女王陛下っ!」」

「シ、シーナ……ハヤト……」


 リサの笑顔の瞳から、涙がこぼれ出していた。


「その話、わたしも乗せていただこうっ!」


「「「……!?」」」


 その声は突然、三人の後ろから聞こえた。そして、振り返ると、そこには……、


「「サ、サラ……先生っ!」」


 俺とシーナはサラ・スカーレットの気配に全く気づかなかったということもあり、リサ以上に驚いていた。


「驚かしてすまない、ハヤト、シーナ。わたしは気配を消すのは得意でな、申し訳ないが、三人の話は全部聞かせてもらったぞ」

「「サ、サラ先生……」」


 俺とシーナは少し身構えた。


「そう、身構えるな、二人とも。わたしはお前たちの味方だ。わたしはカルロスやロマネ室長は信用できないが女王陛下様は……別だ」

「サラさん……」


 サラ・スカーレットは、リサ・クイーン・セントリア女王陛下の正面に立ち、敬礼し、跪き、そして……、


「わたくし、サラ・スカーレットは、女王陛下様の剣となり、盾となって、全身全霊でお守り致します。なので、どうか、わたくしも女王陛下のお仲間にさせていただけませんでしょうかっ!」

「わかりました、サラ・スカーレット。あなたのその言葉、とても心強いです、ありがとう。この四人で力を合わせ、早急にエックハルト・シュナイデンを見つけましょう」

「はっ! ありがとうございます、女王陛下様」


 サラ・スカーレット先生が味方になった。


 こんな『心強い助っ人』……他にはいないだろう。


 そうして、俺たち四人は、カルロスさんやロマネさんといった『政府』、そして『貴族』らに交じり、『エックハルト・シュナイデン捜索』の『第三勢力』としてここに誕生した。


 この後、リサやカルロスさん、ロマネさんたちは城に戻り、俺とシーナ、そして、サラ・スカーレット先生も教室に戻った。


 ちなみに教室に戻ると、理事長室に呼ばれる前の『誘惑誘引テンプテーション』の効果も大分、落ち着いていたようで、特に授業に支障が出ることもなくその日の授業は終わった。


 その日の授業終わり――、


「コ、コホン…………ハ、ハヤト!」

「……えっ?」


 声を掛けられたほうを振り向くとそこには……、


「フ、フレンダ・ミラージュ……!」

「な、何よ、そんなに驚いて……別に普通に声を掛けただけでしょ、大袈裟な……」

「あ、ご、ごめん……」

「まったく……まあ、良いですわ。それよりも今日、この後の約束……覚えてますわよね?」

「え……? あっ!」


 そ、そう言えば……昨日、今日の授業終わりにシーナやアイリは別で俺、単独と話がしたいって言ってたっけ……!


「まさか……忘れてたとでも?」


 フレンダの言葉に『凄み』が追加される。


「ま、まさか~!? そ、そんなわけないだろ、フレンダ! むしろ、この時を楽しみにしていたと言っても過言ではないくらい待ち遠しかったぜ!」


 俺は、つい大袈裟に答えてしまった。


「そ、そんなに……楽しみにしていただなんて……お、大袈裟ですわ」


 やばい……すっかり忘れてたことに気づかれたか?


「ま、まあ……そ、そんなに楽しみにしていたのなら、そ、そんなに緊張するのも仕方ないですわね」


 どうやら、気づかれていませんでした。


「ま、まあね……ハハ」

「それじゃあ、早速参りましょう! 行くわよ!」

「え、ええっ……!?」


 そう言うと、フレンダ・ミラージュは俺の手をガシッと掴み、グイグイ引っ張りながら、俺とフレンダは教室を後にした。


 それは、あっという間の出来事で、教室にいたシーナやアイリはもちろん他の生徒も含めて、皆、二人の一部始終を見蕩れてる間の出来事だった。


 その後、教室では、シーナ、アイリ、そしてベル・コリンズを中心とした『ハヤト・フレンダ捜索隊』が結成されたのは言うまでもない。



 第三章 完






  「更新あとがき」




おはようございます。



自由を満喫しているくせに、更新が遅れた、


mitsuzoです。



すみません、仕事が終わり、時間ができたのですが「畑の草刈り」や「市役所への確認」など、いろいろとやることが目白押しで、更新が遅れてしまいました、申し訳ありません。


趣味:言い訳 のmitsuzoです。



とりあえず、7月、最初の更新は『第三章 終了』からの始まりでした。


本当は先月末の『キリの良いところ』で終わらせたかったのですが、あれよあれよ、と7月に入ってしまいました。


ここからは『エックハルト・シュナイデン捜索』もありますが、それとは別に『夏期サマーシーズン』にも入っていきますし、また『夏期サマーシーズン』に入ると、『組合ユニオン』の話も出てきます。


一応、前々から予告はしてましたが、ここらで一度、マジで、『これまでのあらすじ&人物紹介』をしたいと思っています。


次回、『第四章』がスタートする前にでも書きますね。



というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)


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