第三章 【066】
【066】
「今回のこの件、サラ先生が言う『エックハルト・シュナイデンが操られていた』という話も本当だったとしたらそれも大問題ですし、逆にそれがウソだとしても大問題です……わかりますか?」
シーナはロマネに静かな口調で、冷静に尋ねる。
「……うむ、たしかに」
「『エックハルト・シュナイデンが操られていた』という話が本当ならこの人間族の中に、そんな芸当ができるほどの……『キーマンを操られるほどの人物』が存在するということです。これはかなりの『脅威』だと思います。また逆に……その話がもしも『ウソ』ならば、今度は『どうしてエックハルト・シュナイデンはウソをつく必要があるのか?』……ということになります。人間族の『戦闘の要となる存在』を担うほどの人物が王国に対して謀反を起こすほどの『ウソをつかせる理由』が何なのか……これはこれでまた『脅威』です……違いますか?」
すると、ロマネは大きくため息をついた。それは、まるで……、
『シーナに対して観念した』ように。
「ふう……シーナ様のその『先見の明』、まったくもって恐れ入りました。そうです……わたしたちは当時から今までずっと、今、シーナ様が言った『脅威』をずっと抱えたまま、これまで過ごして参りました」
「ということは、やっぱりサラ先生から事情を聞くというのも……」
「はい、口実です。今回、エックハルト・シュナイデンが動いたことにより、サラ・スカーレットに真実を話し、エックハルト・シュナイデンの謀反を止めるため協力をお願いするのが本当の目的でした……」
「し、室長……」
カルロスは、ロマネが『本心』をつぶやくのを静観している。
「サラ・スカーレットよ、今回、エックハルト・シュナイデンの目的はこの王室、政府を潰すという可能性が非常に高い。そして、もうわかったと思うが、その理由が、我々もまったく把握していないのが現状だ。だから、今は、一人でも国を守るための『戦士』が必要だったのじゃ……いろいろと、不安にさせてしまい、すまなかった」
「ロマネ室長……」
サラ・スカーレットも、さすがに、このロマネ・フランジュの『本心』『誠意』に対し、表情が柔らかくなる。
「もし……もしも、ロマネ室長の話が本当なら、わたしは……わたしは……」
表情が多少は柔らかくなったものの、しかし、サラ・スカーレットはそのロマネの言葉にまだ動揺していた。無理も無いだろう……これまで信じていた話とはまるで違うものだったのだから。
「サラよ、今はとりあえずこの話『受け入れなくて』も良い。ただ、お前も、そのエックハルト・シュナイデンの謀反を止めるために協力してほしいのじゃ……どうだ?」
「……」
サラ・スカーレットは考える。
表情はやはり、当然、納得しているような顔ではなかった。
だが、しかし……、
「……わかりました、ロマネ室長。微力ながら協力させていただきます」
「サラッ!」
カルロスが思わず笑顔になり、声を掛ける。
「カルロス、ロマネ室長……でも、わたしはまだ政府を100%信頼しているわけではないですから。あくまで、師匠から直接話を聞きたいだけですので、そこは勘違いしないでいただきたい」
と、サラ・スカーレットはあくまでも『今回だけ』と強い口調と表情で二人に告げる。
「もちろん問題ない。それでいい、サラ……ありがとう」
ロマネがサラの言葉を全面的に認め、そしてお礼を言った。
こうして、サラ・スカーレットとカルロス、ロマネたち政府との『和解』がとりあえず成立し、その後すぐに、『エックハルト・シュナイデン対策』についての話が始まった。
その話にはカルロス、ロマネ、シーナと三人がメインで話をしていた。
すると、俺の横でリサ・クイーン・セントリア女王陛下……リサが『ちょんちょん』と俺の左ひじを指で突っついた。
「?……リサ?」
「ハヤト……少し話があるの。とりあえずここから出て話がしたいからわたくしに話を合わせて」
「えっ……?」
そう言うと、リサが『エックハルト・シュナイデン対策』の話をしている三人に声を掛ける。
「コホン、わたくし、少し外の空気が吸いたくなったので、ちょっとベランダに出ます。皆さんはそのまま話を続けていてください。それと……ハヤト、あなたどうせ暇でしょ?、ちょっと付き合ってよ?」
「え……あ、はい」
三人は『話し合い』に夢中ということもあったので、特にリサの言葉に『変に反応』することなく、そのままリサの思い通りにハヤトとリサはベランダに出て行った。
理事長室のベランダは結構広かったこともあり、そのため、二人は窓からベランダに出ると、できるだけ三人のいる部屋からは遠くの場所へと移動した。
「ハヤト……あなたをここに呼んだのは他でもありません。ハヤトも先ほど、わたくしの反応を見て気づいたと思うけど、わたくしは先ほどの話、すべて把握しています」
「リ、リサ……」
リサは移動するやいなや、すぐに話を始めた。
「あまり時間が取れないので手短に話します。まず……二人は、わたくしが『エックハルト・シュナイデンの話を知っている』ということを知らない」
「えっ……?」
「理由は、『わたくしがまだ幼いからそんな話はまだしないほうがいい』と言ったところ……だと、初めはわたくしもそう思っていました。でも、それは、『どうやら違っている可能性』が出てきました」
「ええっ! ど、どういうこと……?!」
さきほど、ロマネが話したことがすべて『真実』だと思っていた隼人にとって、リサのその『告白』はさすがに衝撃的だった。
「二人がたぶん知らないであろう情報をわたくしは持っています。それは、わたくしの母であるイヴ・セントリア王妃の『遺言』と、わたくしが実際に自分の能力……『天啓』で調べた情報です」
「……天啓」
そう、リサは特殊能力……神と「青水晶」を使って対話をする能力、『天啓』を持っていた。
「その『天啓』からわたくしは、このエックハルト・シュナイデンの件のひとつの事実を神からメッセージとして受け取りました。それは……」
「……そ、それは?」
「『教会』が絡んでいる……という内容でした」
「きょ……『教会』?」
「更新あとがき」
おはようございます。
6月に入り、二回目の更新。
思ったより早く更新できました、
mitsuzoです。
今日は仕事が『GWの振替休日』で休みということもあったので更新しました。
更新できるかな~と思いましたが、書き始めたら思ったより進みましたので、けっこう早く仕上がりました。
とは言え、少ない文字数ですがww
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




