第三章 【064】
【064】
「人間族と妖精族とは昔から仲が悪かった……?」
「はい、そうです。理由は、妖精族の使う魔法『精霊魔法』である『召喚』が、人間族の使う『構成元素を使う魔法』よりも上だと他種族に認知されているためです」
「……」
『精霊魔法』である『召喚』は、前にシーナから聞いたことがある。人間族の使う魔法みたいに『構成元素』を使うのではなく、その『構成元素を司る神そのもの』を短時間、自分の身に『憑依』させて力を行使することが可能とされる魔法だと……。
「たしかに妖精族の使う『精霊魔法』である『召喚』は強力です。実際、この『第一次種族間戦争』では、妖精族たった一種族だけで、人間族以外の他の三種族(獣人族、小人族、巨人族)を相手に、押されてはいたものの対抗してましたからね」
「三種族を相手に……しかも『巨人族』込みって……」
どんだけすごいんだよ、妖精族。
「ですが、『召喚』はごくわずかな時間しか力を行使できません。なので、そんな『その場しのぎ』の魔法よりも『下』に見なされるなんて、人間族としては全く納得がいきません」
「で、でも、いくら短時間でも『構成元素の神そのもの』の力ならやっぱり歯が立たないんじゃ……」
「そんなことありません! 我々人間族の中にも『召喚』の力に近い魔法……『印結詠唱』を使う者も極々僅かですが存在します」
「……印結詠唱?」
「はい……『印結詠唱』という人間族で使う魔法の中で『最大の威力を行使できる魔法』です。詳しくは今は割愛しますが、とにかく、その『印結詠唱』を使う魔法士と、他の魔法士を動員すれば『召喚』など怖るるに足らずです!」
「は、はあ……」
「コホン……と、とにかく……! そういったわけで『妖精族』は我々『人間族』を下に見てる……バカにしているような種族なので、当然、その時の『バーナード・キング・セントリア国王陛下の妖精族への協力』という独断は、政府内や民衆から猛反発に合いました」
「ま、まあ……そうでしょうね」
「はい。ですが、国王の必至の説得で、政府内や民衆の反発を何とか抑え、国王陛下の希望どおり『妖精族への協力』が実現しました」
「す、すごいな、バーナード・キング・セントリア国王陛下って……」
「はい。まあ、どんな風に説得したかは私は存じませんが、しかし、政府も民衆も内では皆、戦争に対して恐怖を抱いていたので、その戦争を抑えるにはやむを得ないというところだったのではないでしょうか」
なるほど……まあ、そうかもな。
戦争を終結させるためなら、種族間の争いなんて『小さな問題』だろう。
「さて……そういったわけで我々人間族もいよいよ第一次種族間戦争に参戦することとなりました。この人間族が妖精族についての参戦ということで、我々は極大魔法を展開し、押されていた戦況を跳ね除けました」
「おお……!」
「……ですが、押されていた戦況を跳ね除けたとはいえ、できるのはそこまででした。結局、戦況は『五分五分状態』……いわゆる『拮抗状態』が続きました。そして、その『拮抗状態』が何年も続き、それは全種族の一般市民を苦しめることとなりました」
「『拮抗状態』……一般市民が最も苦しむ戦況状態か」
「いかにも。そんな動くに動けない戦況のとき、町に住む一般市民は『不安』と『怖れ』に支配されます。そして、それは犯罪を助長させる『きっかけ』となり、各地で窃盗団や山賊のようなものが誕生し、この戦況に便乗して次々に市民を襲いました」
「ひ……ひどい」
「そんな『拮抗状態』で各種族、そんな犯罪が増えて頭を悩ませているところに、人間族である我々から『一つの提案』を呼びかけました。それが、最初にお話した……エックハルト・シュナイデン自らが提案した『人柱』の話でした」
ごく……
『人柱』……。
「この戦争の『拮抗状態』の中身はこうでした……各種族にいる『戦闘の要となる存在』が後ろにおり、それがバックで目を光らせていたため、地域での紛争が起きてもその『キーマン』の手により抑えられました。そのため、攻めようとしても、『キーマン』に阻まれる……ということが延々と続き、戦争は前にも後ろにもいけない状態……そんな状態でした」
「……」
お互いが手も足も出ない状態……ということか。
「そんなとき、エックハルト・シュナイデンは我々人間族の『戦闘の要となる存在』ですが、そのエックハルト・シュナイデン自身が、自分を含めた他の『キーマン全員』を集め『人柱』となってこの戦争を終結させよう……という提案を各種族のキーマンたちを集め提案しました」
「「そ、そんな……無茶苦茶な……!?」」
「はい……本当に無茶苦茶です。それは人間族だけじゃなく他種族も含め、誰もが『無茶な提案』だと思っていました。しかし……このエックハルト・シュナイデンの『人柱』の提案は意外なほどにあっさりと他種族のキーマンたちの了承を取りました」
「「ええええええええ~~~~!?」」
ウ、ウソだろ……!
ありえないだろ……そんなの。
自分一人だけなら、まだしも、他種族の人たち全員がその『人柱』に同意するなんて……そんなバカな。
「信じられないでしょうが事実です。そうして、各種族の『戦闘の要となる存在』の五人は、戦争を終結させるため、自らが『人柱』という犠牲を払ってこの戦争を終結させました。そして、後にその戦争終結のために『人柱』として犠牲になった五人を……『英雄五傑』と名付け、各種族から英雄として崇められました。特にその『人柱』を提案したエックハルト・シュナイデンはその中でも一番の英雄として人間族は元より他種族からも一目置かれる存在となりました……」
「……」
エックハルト・シュナイデン……凄すぎて言葉に出ないです。
「その後、『五種族首脳会議』により各種族の首脳が戦争終結の調印を結び、『第一次種族間戦争』は幕を閉じました」
「……そうだったんだ」
俺を含め、他の皆がカルロスの話を聞いて、シーンと静まり返っていた……が、その中で、その『空気』に染まらない者がいた。
「カルロスさん、ちょっといいですか? 2~3質問があるのですが……」
……シーナだ。
「な、なんでしょう……?」
少し、『不意を突かれた』……そんな表情をしたカルロスにシーナは、関係なく手を挙げ、堂々と、カルロスをじっと見つめ質問を始めた。
「その『人柱』……なんですが、どうやってその五人は葬られたんですか?」
「更新あとがき」
おはようございます。
五月もそろそろ終わりますね……沖縄は梅雨の真っ只中です、
mitsuzoです。
話が少しずつ動き始めていますが、まだ自分の環境が厳しく、小説を書く時間を確保できないため、来月までは週一投稿もしくは少し遅くなるかも……。
でも、7月からはもう少し更新頻度が上げられるので、それまでは少しずつの投稿となりますがご容赦くださいませ。
<(_ _)>
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




