第三章 【063】
【063】
「第一次種族間戦争……最初のきっかけは、『獣人族』と『妖精族』の争いがきっかけでした」
カルロス・ワイバーンによる『第一次種族間戦争』の説明が始まった。
「『獣人族』と『妖精族』は昔からいろいろと小競り合いが続いていた種族だったのですが、それが、ついに『戦争』にまで発展したのが事の始まり……。そして、その争いは周辺の種族にも影響を与えていきました。ちなみに、お二人はこの世界の『種族』のことはご存知ですか?」
「え、ええ……まあ」
「まあ……それなりには……授業で……」
おいッ! うそつけっ! お前、寝てばっかりだっただろがっ!
と、シーナにツッコミを入れたいのは山々だったが、状況が状況なので、そこは『大人の対応』で流してやった。
ああ……大人だな~、俺。
「各種族には、『特徴と関係性』があるのですが、一応、補足としてお話しましょう。まず、『獣人族』とは『知能』が『五種族の中で下から二番目』と、我々、人間族に比べると『知能』は劣る種族です。ちなみに一番下が『巨人族』となります」
なるほど。
「……ですが、体力は五種族の中でも上から二番目を誇り、特に俊敏性に富んでいます。もちろん腕力もいわずもがなです。ちなみに体力が一番なのは、これも『巨人族』で他種族の中でも圧倒的です」
「巨人族……か、一度、見てみたいな~」
「巨人族は、その名の通り、大型の種族です。大きいものだと10メートルくらいあり、低くても5メートルはゆうにあります」
「で、でかっ!」
「はい。ですが、彼らは、『普段はおとなしい種族』でありまして、他種族との交流をほとんど絶ち、緑や湖にかこまれた美しい大地である『南西大陸』で、動物と共に静かに暮らしております」
「へー、そうなんだ」
「しかし、そんな『普段はおとなしい巨人族』を『一旦怒らせるとこの世が滅びる』、と言われるくらい、その力は圧倒的と言われています。一応、巨人族は『知能』は五種族の中で一番下、『体力』は五種族の中で最上位、となっていますが、それもあくまで人間族で考え出した分析結果に過ぎないので実際は謎の多い種族です」
「ふーん、そうなんだ」
「さて、次に、今回の戦争のきっかけになったもう一つの種族……妖精族についてですが、彼らは『エルフ』とも呼ばれている種族で、五種族の中で『知能が一番優れている種族』です」
「へ~、そうなんだ」
「『知能が優れている』……この言葉の意味するところは、つまり『魔法の能力』……『魔法力』につながります」
「そうなの?」
「はい。なので、さっき説明した獣人族や巨人族は『魔法』に関してはほとんど使えない種族です。獣人族では一部使えるものもいますが、ほとんどが魔法は使えません。巨人族に至って誰も魔法は使えないでしょう。それほど、『魔法』とは『知能』の優劣で差は歴然とします……まあ、巨人族はそもそもよくわかっていないところもあるので、この分析結果に当てはまるのかどうかは不明ですが……」
「……本当に巨人族ってよくわかっていない種族なんですね?」
「はい。彼らは、元々から他種族を避けて生活していますからね……また、彼らの『領域』である『南西大陸』にはうかつに近づくのは怖くてできませんから」
「ふーん、そうなんだ……あ、ところで、人間族は五種族の中で『知能』はどのくらいになるんですか?」
「妖精族に次いで二番目です」
「おー、じゃあ、人間族って『魔法に長けてる種族』ということになるんだ?」
「まあ、そうなります。ただ、わたしたちは妖精族をいずれ追い越す、いや、すでに追い越しているつもりでいますけどね……」
「……?」
――今、少し、カルロスの言い方に『違和感』を感じた。
気にはなったが、しかし、ここではその『違和感』について質問することは避けた。それよりも今、重要なことは『戦争の話を聞くこと』だと思ったからだ。
説明は続く。
「さて、そんな獣人族は昔から妖精族の『知能の高さ』を誇張するような言動や態度に良い印象を持っていませんでした。ちなみに、人間族も妖精族ほどではないですが『魔法に特化した種族』=『知能が高い種族』と見なされているので妖精族と同じような扱いをされて、ちょっとした敵意を向けられることもあります……まあ、とても迷惑な話ですが。ですが、それは争いになるほどのものではないですけどね」
また、カルロスの言い方が鼻についた。
人間族と妖精族とは仲が悪いということなんだろうけど……一体、何があったのだろうか?
そこも、すごく気になるところだったが、今はあえてその話は避け、本題の話をそのまま進めた。
「そ、それって、つまり獣人族は、自分たちが魔法を使えないことに対してのコンプレックスみたいなものを皆がつねに持っているってこと?」
「そうですね……端的に言えば。ただ、我々からすれば『体力面に特化した獣人族』の運動神経やパワーは逆にうらやましく感じるものなんですけどね」
「なるほど……要するに、無いものねだりってことか」
「まあ、そんなとこです」
カルロスは『やれやれです』と言いたげな表情で、苦笑しながら答えた。
「さて、そんな中『獣人族』と『妖精族』の争いが始まったのですが、最初は、妖精族の圧倒的な魔法力に為す術もない状態で防戦一方だった獣人族でした……が、ここで獣人族は『小人族』と『巨人族』を仲間に引き入れます」
「「えええっ……!? 二種族も?!」」
「はい……もっと具体的に言いますと、獣人族が必要だったのは『小人族』の『手工業技術』と『魔法具』でした」
「『手工業技術』と『魔法具』……?」
「はい。小人族は五種族の中では『知能』はちょうど真ん中にあたる三番目で、『体力』に至っては人間族より下の四番目という位置になります……が、それを充分に補うだけの『手工業技術』を持っています。『手工業技術』とは、小人族が他種族と比べると手先が器用であり『生産技術に特化した種族』なので、その『手先を使った技術』のことを我々はそう呼んでいます。その小人族の特化している生産技術はもちろん普段の生活に使うものから……」
「……戦争に使う道具まで、か」
「そうです。なので獣人族は自分たちが住んでいる『北西大陸』でしか取れない『鉱物』や『薬草』といった『資源』を『餌』に、小人族の協力を仰ぎました――結果、小人族はその『餌』に食い付き、獣人族の傘下に入りました。こうして小人族傘下に成功した獣人族には、そのおかげで『さらなる恩恵』がもたらされることとなります。その『恩恵』とは、なんと……あの『巨人族』が傘下に入ったということでした」
「ええっ! きょ、巨人族が傘下にっ?! で、でも、巨人族って……」
「……はい、普段はおとなしい種族ですので戦争に加わるような種族ではありません。なので、誰もそんなことになるとは夢にも思いませんでした。しかも、この巨人族を傘下に収めたのは獣人族ではなく、小人族の『働きかけ』によるものだったと伝えられています」
「「『働きかけ』……?」」
「はい。小人族は『知能』は人間族より低いとなってはいますが、それはあくまで『魔法を軸にした見方』なので、『策略』の面で見れば小人族の知能は五種族の中でも最上位となるかと思います」
「そ、そんなに頭が良い種族なんだ……」
すると、横でシーナが、
「何だか小人族とはいろいろお話してみたいな……なんだか気が合いそうな気もするし」
と、ヒロインキャラらしからぬ悪魔の微笑みを浮かべてボソッと呟いていた。
見なかった、聞かなかった、ことにしよう。
「まあ、その『働きかけ』が何だったのかは今でもまだ『謎』ではありますが、とにかく、その小人族の働きかけのおかげで巨人族をも傘下に収めることに成功した獣人族は、小人族の魔法具や戦争兵器の生産技術、そして、巨人族の圧倒的な力を武器に、妖精族をどんどん追い込んでいくことになりました」
そりゃあ、そうだろう。
小人族だけでもやっかりな感じなのに、さらに巨人族を相手だなんて……。
「そうして、追い込まれた妖精族の話を聞いた当時の我ら人間族の王であるバーナード・キング・セントリア国王陛下は、妖精族への『協力』を独断しました。理由は、あの巨人族が戦争に参加したからです。『巨人族が一旦暴れ出すとこの世は終わる』……というその言い伝えもあったので、これはもう種族間の戦争うんぬんではなくこの世界……『アナザーワールドの危機』だと認識していたための決断でした」
確かに……普段はおとなしく、しかも他種族との接触を絶っているという、そんな『巨人族』が、他種族の、しかも傘下……下になるなんて、それはもう世界の危機……『アナザーワールドの危機』と言っても過言ではないだろう。
俺は、そんな王の決断は必然だと思った……が、しかし、
「……しかし、人間族と妖精族とは昔から元々仲が悪かったので、王のその『一方的な独断』は、政府内で『大きな波紋』へと発展していきました」
「更新あとがき」
おはようございます。
今日は更新早めの、
mitsuzoです。
やっと、いろいろと忙しい期間が少し解消されたので、前回から早めの更新ができました!
とは言え、今日はたまたまなところもあるので、ずっとこのくらいの更新頻度でできるかは未知数ですww
本当、すみません。
_| ̄|○
話のほうは『第一次種族間戦争』についての説明が始まっています。
この辺から五種族間の関係性も少しずつ見えてくるかと思います。
あと、もう少ししたら『これまでの大まかなまとめ回』も書こうと思っています。
まあ、いつになるかは……未知数ですがww
いや、本当、すみません。
_| ̄|○
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




