第三章 【057】
【057】
俺とシーナはその足で、リサの呼び出しどおり、理事長室へ向かった。
「で、でも良いのかよ……教室行かないでも」
「え? 大丈夫でしょ? だって、女王陛下命令だしっ」
うーん、いいのか~。
これって、職権乱用じゃ……。
「もしかしたら、何か重大な話とか……かもね」
「重大な話? 何だよ?」
「そんなの知るわけないでしょ?! て言うか、ただの可能性のハ・ナ・シ」
「はあ……」
「お兄ちゃん、とりあえず『神通具現化』は今日は使わないでよね」
「わ、わかってるよ! 俺だって、あんなことになるのはごめんだっ!?」
「本当~?」
「本当っ?!」
「本当に~?」
「本当だってばっ! しつこいぞっ!」
「ふふ……」
シーナは、さっきの敷地から校舎のところまで来たのでまた『妹キャラ』へと戻っていた。
そうして、俺たちは理事長室のある『教育棟』へと足を運ぶ。
コンコン……「「失礼しまーす」」
俺とシーナが理事長室のドアを開けると、
「ハヤトッ! シーナッ!」
リサがすぐに俺たちに駆け寄ってきた。
「「リ、リサ……様っ!」」
「良い……ここでは『リサ』でけっこうだっ!」
「で、ですが……」
と、俺とシーナはリサの後ろにいるロマネとカルロスに目をやる。
二人は『やれやれ……』という顔をして渋々オーケーを出した……側近って大変だな~。
「わ、わかりました……またすぐに来てくれたんだね、リサ。うれしいよ」
「リサ、わたしたちもすぐにまた会いたかったんだよ!」
「ハヤト……シーナ……」
リサは、少し涙をにじませ、微笑んだ……なんだか、すごくかわいいし、ここまで自分たちのことを受け入れてくれたリサのよろこんだ顔を見ると少し照れる。
「リ、リサ様……特別招待生のお二人とは面識が会ったのですか?」
さっきは気づかなかったが、リサの背後にはロマネ、カルロス以外に『もう一人』、三人の様子を眺めている者がいた。
「「サ、サラ・スカーレット先生……っ!」」
そう、今、俺たちに声を掛けた人物……それは、サラ・スカーレット先生……メガネツン女史だった。
すると、リサが改めて事の次第を話し始める。
「今、ハヤトとシーナ、二人にここに来てもらったのは、二人の素性を担任であるサラ・スカーレット先生に伝えるためです。それには二人にも同席してもらったほうがいろいろと話が伝わりやすいかと思ったのですが、その様子だと、どうやら、サラ先生は、二人の力をご存知のようですね」
リサはそう言ってサラ・スカーレットを見る。
「は、はい……さきほど、見させて、いただき……ました」
「?……なんだ? サラ、妙に歯切れが悪いな……何かあったのかい?」
横から、『理事長・兼・側近魔法士』のカルロス・ワイバーンがサラに尋ねた。
「い、いえ……別に」
「??」
サラ・スカーレットは少し顔を赤らめつつ返事を返し、それを見たカルロスは少し顔をひねったがとりとめてこれ以上突っ込むことはなく、そのままリサが話を続ける。
「サラ先生……これから話す内容なんですが、これは他言無用はもちろん……王国の『最重要機密事項』です。もしサラ先生がこの秘密を漏らしたときは『国家反逆罪』となりますのでそのつもりお聞きください、いいですね?」
「は、はっ!」
リサがいつになく厳しい表情でサラに口止めを要求し、そして、サラ・スカーレットは了承……いよいよ、本題へと入っていく。
「サラ先生、まず結論から先に申し上げます…………彼ら、特別招待生のハヤトとシーナは、この世界の人間ではありません」
「えっ……?!」
サラ・スカーレットは、リサの発言に一瞬、目を丸くし、まさに虚を突かれた……突っつかれた顔をした、が、すぐに、いつもの気丈な顔に戻り、リサへ聞き返す。
「この世界の人間ではない……では、この二人は一体何者なんですか?」
「二人はここ、アナザーワールドではない別の世界……いわば、『異世界』から来た人間です」
「そ、そんな、まさか……?!」
サラはまたしても虚を突かれた、突つかれまくりであった。
「信じられないかもしれませんが事実です。それは昨日、わたくしとロマネ・カルロスが確認をしています。それにサラ……あなたも先ほど見たのではないですか? 彼らの持つ『力』を」
「は、はい……見ました。さきほどの授業で、魔法力測定を第一体育館で行ったとき、ハヤト・ニノミヤが魔法力測定器ではゼロで、測定不能であったのですが、にも関らず、第一体育館にある『第一級魔法緩衝材』の壁を魔法で破壊しました」
「だ、第一級魔法緩衝材を破壊だ、と……?!」
ロマネ・フランジュがサラの報告に大きな反応を示す。
「……はい。『第一級魔法緩衝材』は一般の魔法士でさえも簡単には破壊できないものです。まして、それが十代で、しかも、まだ学校の新入生という事実……はっきり言って、目の前で見たわたしでさえ、まだ、信じられません」
と、サラは自身があの時感じた衝撃をそのままロマネに伝え、さらに、もう一言、付け加えた。
「……しかも、わたしが見る限り、ハヤト・ニノミヤの潜在的能力は、まだ、こんなものではないように思われます」
「むうう……そこまでお前に言わせるか、ハヤト・ニノミヤ」
「はっ!」
横で、そのサラとロマネのやりとりをうれしそうに聞くリサの姿があった。
「ちなみに、二人の『魔法』は、この世界の『魔法』とは少し異なるらしくて、だから、この世界の『魔法測定器』では測れないみたいなの」
「な、なるほど……確かにそのようですね」
「というわけで、二人が『異世界の人間』っていうのはどう? 理解できた?」
サラは、『ふぅ……』と一息ついた……まるで、観念したかのように。
「……はい。正直、さっきの授業の時点でハヤトとシーナに対してわたしの理解が追いついていませんでしたが、女王陛下の説明で納得いたしました。むしろ、そうじゃないと、このわたしの中の常識……いや、この世界の常識が崩れてしまいますからね」
と、サラはシャレのように返答した……が、内心は超本気である。
しかし、それは無理も無いことだろう……なんせ、二人の使っている力は『神そのものの力』なのだから。
「ありがとう……それじゃあ話は早いわ。早速、今日の『本題その2』に入りましょう」
「「「本題その2……?」」」
俺とシーナとサラ・スカーレットの三人はリサの発言に思いっきり反応した。
「ええ……今日わたくしが来た『もう一つの本題』であり、それが、今回、ここにいるメンバーに聞いてもらいたいことだったの」
そういうとリサの表情が一段と厳しくなる。また、リサだけでなく、ロマネもカルロスも同様だった。
「……ここからは、わたしがお話しましょう」
「カルロス……お願いします」
そう言って、リサの前にカルロス・ワイバーンが出てきて、俺たち三人の前に立つ。そして……、
「今日の『もうひとつの本題』……それは、『学校内に潜んでいる内通者』についての話です」
「内通者……?!」
「更新あとがき」
こんばんわ。
超ひさしぶりですね、お元気ですか?
mitsuzoです。
四月に入ってはじめての更新です。
四月に入って、七日経ってはじめての更新です。
いやー長くなってしまい、申し訳ありませんでした。
これからしばらくは仕事が忙しくなってくるので、たぶん、一週間に1・2回の更新頻度となると思います……しかも、たぶん、文字数も少ない更新が多くなると思いますが、これからもよろしくお願いします。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




