第三章 【056】
【056】
俺とシーナが体育館から飛び出してそろそろ一時間が経とうとしていた。
「よーし、それじゃあ戻ろう。一時間経ったし、もう大丈夫なはずだ」
「何? また俺が飛ぶの?」
「いや、今、『神通具現化』は使わなくていい。と言うより……使うな。ただでさえ、今は許容量フルなんだから……まあ、少し遠いが歩こう」
「そ、そうか、わかった……」
ということで、俺とシーナは体育館に向かって歩き出した。
「ところでさ、シーナ……」
「んっ?」
「あの……『誘惑誘引』の効果って、どのくらいの範囲になるんだ?」
「『誘惑誘引』の範囲は、『隼人が見える範囲』だ」
「俺が見える範囲?」
「あ、いや……まあ、具体的に言うと、『相手が隼人を認識できる範囲』だな。つまり、『誘惑誘引』の発信源である『お前』を捉えられないとその効果は受けないということだ」
「……なるほど。でも、それって視覚的にってこと? もし、そうだとしたら『俺を見ない』とか『目隠し』すれば防げるってこと?」
「いや、そうではない。この効果を受ける条件は、『隼人を認識してしまった時点』だ。だから、もし『隼人』を認識してしまうと、その後に『見ない』とか『目隠しをする』とかしても無意味だ。ただ、逆に言えば『そこに隼人がいる』と気づかなければ、どんな近い位置にいようと効果は受けない」
「へー、そうなんだ」
ということは、『俺がいる』ということに気づくかどうか、というところで、効果を受けるかどうかが別れる、ってわけか。
何となくだが、この辺をどうにかすれば、みんなが『誘惑誘引』の効果を受けないようにできる方法があるかもしれない……俺は、シーナの話を聞いてそんなことを考えながら歩いていた。
二人は気づかなかった、気づいてなかった。
二人の後ろの茂みに……『人影』が動いていたということを。
《誘惑誘引……? 言葉の意味はわからないが、それがハヤトの使う『神通具現化』の欠点、代償みたいなものということか。ふふ……おもしろい、おもしろいぞ、ハヤト・ニノミヤ》
その影は、うっすらと笑みを浮かべながら、二人を『大事なおもちゃ』を見つめるような目で見続けていた。
ピーン、ポーン、パーン、ポーン……。
歩いていると、近くにあったスピーカーから音が鳴り、その後、人の声が木霊する。
『特別招待生のシーナさんとハヤトくん……この放送を聴きましたら、至急、理事長室まで来てください。なお、授業があっても来るように……以上っ!』
「「!?」」
俺とシーナはビックリして思わず、顔をあわせた。
「「こ、この声は…………リサッ!」」
リサ・クイーン・セントリア女王陛下。
つまり、この世界のトップである。
「更新あとがき」
こんばんわ。
消費税が5%から8%に上がるんですって……知ってた?
mitsuzoです。
今回は、超少ない文字数でのアップでした。
今、それくらい、何だか忙しいので、ご容赦ください。
「あ~あ、宝くじが一等でも当たらないかな~」
それくらい、ひどい状態のmitsuzoでしたとさww
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




