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アナザーワールドへようこそっ!  作者: mitsuzo
第三章「春期(スプリングシーズン)へようこそっ!」 【行間2】
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第三章  【055】




  【055】




「この辺でいいよ、お兄ちゃん……いや、隼人」

「わかった……」


 そう言われて、俺は飛行を止め、地上へ降りる。場所は、学校アカデミーの敷地内で、男子寮に近い林の中だ。



「ふう……とりあえず、ここなら人目にもつかないし大丈夫だろう」


 シーナが、周りを確認しつつ、そう言った。


「そうだな……で、話って、さっきの『誘惑誘引テンプテーション』の話?」

「ああ、もちろん。しかし、それにしても…………実はわたしもビックリしたんだ」

「えっ?」

「あの『誘惑誘引テンプテーション』の力さ……かく言うわたしも、目の前で見るのは初めてだったからな」

「えっ? 初めて?」

「ああ、わたしはまだ『指導者ガイド見習い』だからな。実戦は今回が初めてだし。一応、訓練では見たことがあったが、それは、あくまで訓練用だったからな。いや、しかし、まさか、あそこまで強力とはな~……ビックリだ」

「…………」


『ビックリだ』……じゃねーよ!


 要するに、シーナは『誘惑誘引テンプテーション』の力に対して『高を括ってた』ということか。


 勘弁してくださいよ、シーナさん。


「……で? その力を目の当たりにして、これからどうすんだ?」

「あれ? 隼人、つっこまないの? わたしの『高を括ってた』ことに?」

「もう慣れたよ……そのくらいは『想定の範囲内』だ」

「やるな、隼人。成長著しいじゃないか!」

「…………」


 ああ、腹立つ。


 とは言え、こんなのに突っ込んでもしょうがないので俺は話を進めた。


「それで、どうなんだ?」

「……? 何が?」

「いや、だから……さっきの体育館の女子生徒たちだよ。あんな、おかしな状態になって、この後、どうなんの?」

「ああ、大丈夫だ。しばらくすれば元に戻るよ」

「え? そうなの?」

「ああ……『最初の内』の『誘惑誘引テンプテーション』はだいたい一時間もすれば効果は消えるはずだ」

「……『最初の内』?」

「ああ。今回の『誘惑誘引テンプテーション』の発動は『二度目』だ。『一度目』は昨日の理事長室で、リサ……リサ・クイーン・セントリア女王陛下の前での時。ただ、まあ、『一度目』のときは、女性はリサしかいなかったし、一回目の発動というのもあったから、わかりづらかったのはあるがな……」

「ああ、そう言えば……」


 そんなこと言ってたな、シーナ。


「今回は『二度目』で、しかも、女性の多い場所で、さらに一度目よりもかなりの『許容量キャパシティを超えた使い方』だったから、余計に影響も拡がったという感じだな」

「そ、そうなんだ……」

「ああ。だが、お前の『神通具現化ディバイン・フォース』の力の許容量キャパシティを増やすには、今回みたいに『現在の許容量キャパシティ以上の力の放出』をしないと増えないのだから、これは仕方がないことでもある。まあ、おかげで、今回はかなり『許容量キャパシティを越えた力の放出』だったから、『三度目の誘惑誘引テンプテーション』はそう簡単には起こらないだろう」

「それって、つまり、今の俺の『神通具現化ディバイン・フォースを使う許容量キャパシティ』が増えたから……てこと?」

「そうだ。しかも、今回はかなりの放出だったので、『許容量キャパシティ』はかなり増えているはずだ」

「じゃ、じゃあ、今日くらいの力の使い方なら、今は使えるってこと?」

「そうだ。あれぐらいの力を使えるのなら、少しくらいのレベルの相手なら大丈夫だろう」

「ふーん……」


 まあ、争い事は避けたいので、できるだけ力を使わないようにするのがベターだが、とは言え、力が使えるに越した事はない。


 とりあえず、力が少しは使えるようになったということはわかった。


 それよりも、今の俺的には、もっと気になることがあった。


「ところで、『誘惑誘引テンプテーション』の効果って一時間したら消えるって言ったけど、具体的にはどうなの?」

「どうなの……って?」

「いや、だから、時間が経てば、皆、さっきのことは忘れるとか、そういうこと?」

「ううん、ちょっと違う……かな?」

「? 微妙な反応だな……」

「……正直、生の効果を見たのは、これが初めてだったからな。一応、研修で習った内容では『記憶が無くなる』ということではなく、『熱が冷める』という感じになる……はずだ」

「『熱が冷める』……?」

「ああ。つまり、さっきの『隼人フィーバー』の熱は無くなって、みんな、冷静に戻るってことだ」

「ああ、なるほど」

「『誘惑誘引テンプテーション』の力が及ぶ範囲は『隼人に興味がある人』に限られる。ただ、わたしたちは『特別招待生』という『タダでさえ目立つ存在』だからな。だから今回みたいになってしまったのは、ある意味、仕方の無いことだ」

「『俺に興味がある人』って……えらく範囲広いな」

「ちなみに、この『隼人に興味がある人』という範囲は、隼人との距離が近ければ近いほど影響を受ける。だから……」

「だから、アイリがああいう感じだった……てわけか」

「そういうことだ」


 しかし、つまり、逆の言い方をすれば、アイリのあの態度は、『あくまで誘惑誘引テンプテーションの力によるもの』であり、『自分の魅力によるもの』では決してないということを意味する…………なんだか、悲しいな。


「ちなみに……けっして『隼人の魅力によるもの』じゃないからね」


 シーナさんが、空気を読んで、『追い討ち』をかけてくれました。


 お前は鬼か。


「わ、わかってるよっ!(涙目)」

「ふふふ……」

「…………」


 シーナは、そう言ってうれしそうに笑った。


 か、かわいい笑顔だった。


 でも、なんで……『うれしそう』なんだろう?


 この時の『笑顔の理由』が、その頃の俺には、まだわかるはずもなかった。


「じゃ、じゃあさ、一時間経ってまた皆のところに戻れば、普段どおりになるってことでいいんだよな?」


 俺は照れてる自分を誤魔化すため、あわてて、シーナにそんな確認をした。


「うーん、それはどうだろう?」

「えっ?」

「だって、アイリや他の生徒たちのあの言動や行動は、ちゃんと、みんなの『記憶』にあるからね?」

「えっ? そうなの?」

「うん。だから、おそらく、個人個人で態度は違うと思うよ?」

「そ、そうか……」


 確かに、そうかも……。さっきの自分の言動や行動を自分で振り返ったとき、そんな自分を『素直に受け入れる』か、それとも『否定するか』によって、一人一人、態度は違うのかもしれない。


 そう考えると、皆のところに戻るのが、少し怖くなりました。


「まあ、それは、わたしにも予想はできんが、それはともかく、少なくとも、次の……『三度目の誘惑誘引テンプテーション』はそう簡単には起こらないはずだ。それだけの『許容量キャパシティ』を超えた『神通具現化ディバイン・フォース』の発動だったからな」

「そ、そうなんだ……」


 さっきのあのレベルの『神通具現化ディバイン・フォース』が、どれだけこの世界アナザーワールドで通用するのかはわからないが、みんなの反応を見る限りでは少しは何とかなるんじゃないかという風には感じた。


「ところで……隼人」

「んっ?」

「……お前、さっきのあの『神通具現化ディバイン・フォース』はなんだ?」

「えっ?」

「あの『ドラゴン』だよ。あれは、どうやってイメージしたんだ? 正直、あそこまで『ドラゴン』を具体的にイメージをし、具現化できるとは…………正直、驚いたぞ?」

「ああ……あれは、単に、俺が地球のときの記憶にあった『アニメのキャラ』だよ」

「アニメ?」

「ああ。アニメってのは『空想で創り上げた物語』をテレビを通して見るものなんだけど……要するに、俺の『力の具現化のイメージ資料』みたいなもんだ」

「ふーん、凄いな、それは」

「あ、あんまり人に言いふらしちゃダメだぞ……」

「? 何で?」

「何でもっ!」

「? ふーん、わかった」


 だって恥ずかしいから!


『中二病』って揶揄されるのが恥ずかしいから!


「と、ところでさ、シーナ、ちょっと気になったんだが……」

「? なんだ?」

「俺の『許容量キャパシティ』の範囲内で力を使ったとしてさ……それが回復することはあるの?」

「ああ、回復するぞ。基本的に一日寝れば回復する」

「い、一回の睡眠でいいんだ?!」

「ああ。基本的にこの『神通具現化ディバイン・フォース』の力は、『お前の力』ではなく『神の力』だ。お前という『媒介役メディエーター』を通して神の力を発動しているということだから、つまり、『お前の力を使っている』ということではない。だから、一日くらい寝れば体力と一緒で、『許容量キャパシティ』の範囲内の力は回復するということだ」


 なるほど、納得。


「今、お前の『右手の六芒星』を見てみろ」

「少し……薄くなってる。けど、初めてビュッセルドルフの森で使ったときよりはだいぶ……明るいかな?」

「それは、お前の許容量キャパシティが増えているためだ。逆に、今後、この『六芒星』の光が薄くなるときと言うのは、そうとう『大きな力を使ったとき』か、『回復しないまま、力を多投したとき』だろう。そんなときは、この『六芒星』を確認しろ、いいな?」

「わ、わかった……」

「ちなみに、さっきの『誘惑誘引テンプテーション』の力……どんどん回数を増すたびに『誘惑』はさらに激しさを増すからな。お前がその『誘惑』に屈して、相手に心を奪われてしまうとその時点で『契約破棄』となってお前は力を失うことになる……だからこそ、できれば、『三度目の誘惑誘引テンプテーション』を起こさない範囲で力をうまく使え、いいな?」

「あ、ああ……」


 相手に心を奪われる……つまり、相手に恋してしまうこと、か。


 これは、さっきの『誘惑誘引テンプテーション』の力を見る限り、かなり自分を抑制しないといけないということか。


――それにしても、あんなに女の子に囲まれてチヤホヤされることなんて初めてだったな~。


 ぶっちゃけ、気持ちよかったしっ!


 できれば、あと一回くらい、チヤホヤされてみたいしっ!


 特に、さっきのアイリのデレは…………やばかった。



 ぎゅうううううーーーー。



 シーナの『頬つね』発動。


「痛てててて……!?」

「特にアイリには気をつけるのよ! 隼人にとっては、女子生徒の中で一番身近な存在ってことは、それだけ『誘惑誘引テンプテーション』の力の影響を受けやすいってことなんだからね? わかった?!」

「わ、わひゃりまひたっ……!?」


 相変わらず、勘が鋭いシーナさんでした。





  「更新あとがき」




こんばんわ。



もう、そろそろ、お寝むな時間の、


mitsuzoです。




今回は、思ってたより早く書き出しができたので、さっそく更新しました。


次回は、仕事休みとなる木曜日更新の予定ですが、まあ、それも、その日の予定次第ですかね。


まあ、ゆっくりとお待ちいただければと思います。



というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)

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