第三章 【054】
【054】
『誘惑誘引』――、
それは、隼人が『神通具現化』を、自分の持っている許容量を超えたときに現れる現象で、それは『隼人から神通具現化を奪う現象』である。具体的に言うと、隼人が『神通具現化』の力を得るため、神と『媒介役』の契約をした際、人間が持っている『五大欲』のひとつ、『色欲(性欲)』を封印した(シーナが勝手に選んだ)のだが、『誘惑誘引』とは、その『色欲(性欲)の封印を『破ろうとする力』、『こじ開ける力』のことである。
『色欲(性欲)の封印を破ろうとする、こじ開けようとする力』とは、つまり……、
「つまり、『お兄ちゃんを誘惑して力を奪おうとする力』なの…………て、聞いてない……わね」
シーナはアイリに『誘惑誘引』のことを説明していたが、アイリは、ずっと隼人のほうを見て『うわの空』だったので、説明を…………諦めた。
「はあ、それにしても、この『誘惑誘引』って、ここまでの力があるんだ…………『指導者』になって初めて見たけど…………圧倒的ね」
シーナは、そう、ため息をつきながら、一人ボソッと呟いた。
まるで、『他人事のように』。
「お、おい、シーナッ! 何、他人事のようにボケッとしてんだ! な、なんとかしろーーーっ!」
見ると、隼人が、サラ・スカーレットの『だいしゅきホールド』から抜け出し、シーナのほうへと走ってきていた。
「お、お兄ちゃんっ……!」
シーナが、『他人事』からハッと我に変える。
「ハ、ハヤト……くんっ!」
アイリが、うっとり顔から『くん』付けで隼人に声を掛ける。
「ハ、ハヤト…………くん?」
隼人が、『くん』付けで声を掛けたうっとり顔のアイリを見て思わずドキッとする。
「お、お兄ちゃん、アイリ…………こっちっ!」
シーナ、隼人、アイリの三人は、とりあえず、そのまま走って体育館から外に出た。
「ハ、ハヤトくん、大丈夫? 痛いところ……無い?」
「ア、アイリ……ど、どうしちゃったんだよ?」
「えっ? 普通だよ、わたしは……何、言ってるの? ハヤトくん。でも、そんなハヤトくんも、かっこいい…………って、キャッ! 言っちゃったーーっ!?」
「ア、アイリ……?!」
アイリのあまりの『変貌ぶり』に、あまりの『デレデレぶり』に、隼人は胸をドキドキさせていた。
あ、あれ?
アイリって、結構…………かわいかったんだ。
すると、アイリは、隼人の側にスッと身を寄せ、
「ハ、ハヤトくん、あのね、わたし……実は、最初に会ったときから、ハヤトくんのこと……す、す」
「えっ? えっ……?」
ちょっ、ちょっと、ア、アイリさん?
すると、シーナが横からサッと隼人の腕を掴み、再び、走り出した。
「シ、シーナッ……!?」
驚く、アイリ。
「ごめん、アイリ!……ちょっとお兄ちゃんと話あるから、アイリはそこに居てっ!」
「えっ……?」
「お兄ちゃん……!」
すると、シーナが隼人の耳元に顔を近づけ指示を出す。
「わ、わかった……!」
「お願いっ!」
すると、隼人がシーナの腕を掴み直し、そして叫ぶ。
「神通具現化っ!」
すると、隼人とシーナの身体が空中へと浮き上がり、ぐんぐん上がっていく。
「シ、シーナ! ハヤトくんっ!」
アイリが、『わたしも……』と言っているように、隼人とシーナのいる空へ両手を広げ叫ぶ。
「ごめん、アイリ……今は、二人にさせて! 大丈夫……それは、しばらくすれば収まるからー!」
そう言い残して、二人はさらにスピードを上げ、『第一体育館』からあっという間に離れていった。
「更新あとがき」
こんばんわ。
「春のセンバツ」始まりましたね。沖縄尚学、美里工業、がんばれっ!
mitsuzoです。
今回は、少し、文字数少なめの更新となります、すみません。
少し、更新に時間がかかるかもしれませんが、今後もよろしくお付き合いの程、お願いいたします。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




