第三章 【050】
【050】
「…………ハッ! ランチタイム!」
「何で、ちょっと時間経過してんだよっ!」
俺とアイリの二人に起こされて、やっとシーナが起きた。
「お前、よく歩きながら寝られんな……逆にすげーよ」
「ふふ、これも私の隠された能力の一つだよ? お兄ちゃん」
「いや、それどこで必要とされる能力だよ!」
「うーん…………どこでも体力回復?」
「いや、俺に聞かれても…………」
そんな俺とシーナを見て、アイリ。
「シーナって、最初会ったときはすごくしっかりしているお姉さんと思ったけど、ハヤトといるときは、そんな、おちゃらけもするんだね」
と、『意外』というような顔をしていた。
アイリ、これが本当のシーナだよ…………と、つい言いそうになった俺がいました。
さて…………。
次の授業、『魔法力測定』……か、どうしたものかね。
すると……、
「私に…………妙案があるっ!」
シーナが元気良く挙手した。
「なに? 何? 何か思いついたの?」
そんなシーナにアイリが食いつく。
「うん…………ただ、でも、これは、ちょっとした『ごまかし』みたいなものだけど、ね。でも、とりあえず、うまくいけば、この場はたぶん…………凌げると思う」
どうやら、シーナの案はシーナ自身、微妙な感じのようだった。
「何だよ? 何だか、自信なさげだな……」
「うん、まあね。私一人ではどうにもならないことだから……」
「? 私一人では?」
「うん。私がやろうとしているのは簡単に言うと…………『ごまかし』、『ごまかす』ことなの」
「? ごまかす? 誰を?」
「先生と他の生徒たち、を」
「「えっ?!」」
俺とアイリが一緒になって食いついた。
…………。
…………。
「なるほど~、そういうことか~」
「う、うーん……」
俺とアイリは、シーナからその『妙案』について説明された。
アイリは納得しているような返事だったが、俺はというと…………何とも判断しかねていた。
「まあ、確かに……シーナ一人では難しいな。でも、アイリがいるなら……」
「そう、そうなの。この『妙案』はアイリに掛かっていると言っても過言ではないわ…………アイリ、どう?」
と、俺とシーナは二人でアイリのほうに顔を向けた。
「その話、乗ったっ!」
「アイリッ!」
「確かに、その『妙案』なら何とか『ごまかす』ことはできるかも! あとは私次第ってことだね?」
アイリは目をキラキラさせて、少し、興奮しつつ答えた。
「アイリ、何だか…………楽しそうだな?」
「もちろんだよ! こんなの面白いに決まってるじゃないか、ハヤトッ!」
「ありがとう、アイリ!」
「まっかせてっ!」
「お兄ちゃん…………派手に頼むわよ!」
「い、いいのかよ……?」
「うん。みんなに第一印象でインパクトを与えるためにも、ここは勝負どころよっ!」
「わ、わかった……」
そうして、『魔法力測定』を『ごまかす』ための対策は決定した。
俺たちは体操着に着替えて、『第一体育館』に着き、メガネツン女史の指示に従って、男子と女子、別れて整列をしていた。
何だかんだで、授業にはちゃんと間に合い、一時限目の授業の汚名は少し返上できた…………と個人的に思う。
それにしても…………素晴らしいじゃないか『異世界』、素晴らしいじゃないか『王立中央魔法アカデミー(セントラル)』よ。ここで採用されている体操着、色は白で、下は、男子が『短パン』、女子は……………………『ブルマ』だった。
まったく……………………わかってるじゃないかっ!
俺は一人、心の中で歓喜に沸いていた。
横を振り向くと、ちょうどシーナとアイリが目に入った。
シーナは性格的にはアレだが、外見に関してはなかなかのもので、白の体操着を着たシーナは、銀のセミロングの髪が風で時折揺れては、左手でうなじに手を入れて髪を振り払い整えていた。おそらく体操着を着慣れていないせいか、その銀色の瞳は少し、うっとうしさを感じているような光を放っていた。
そして、隣にいるアイリもなかなかのもので、シーナとは対照的なショートボブの栗色の髪はブルマとの相性バッチリだった。ちなみにアイリの瞳は髪の色と同じ『栗色』で、その瞳と雰囲気は『イタズラ好きな女の子』という表現がピッタリだった。
そのシーナたちの列の隣を見ると、フレンダ・ミラージュと、フレンダの『分家貴族』の『ベル・コリンズ』という子がいた。
昨日HRの終わりに先生から渡された『年次スケジュール』のプリント以外にも、いくつかプリントをもらったが、その中にクラス全員の名前の入った名簿も入っていて、それで彼女、『ベル・コリンズ』の名前を知った。
普段は、何だかんだと、うるさい子だが、しかし、外見は…………かわいい。特に、目に付くのが、ショートヘアのピンク色の髪だ。この世界の女性の髪の色は本当にいろいろあって驚く。
そんなピンク色の髪をしたベル・コリンズは、身長もかなり小っこく、アイリも小さいほうだが、それよりもさらに小さく、だいたい目測だと150センチメートルくらいに感じた。なので『しゃべらなければ』、愛玩動物のようでかわいらしい。
そして、その横にいるフレンダ・ミラージュ……フレンダはベル・コリンズとは、まさに『逆』をいく存在で、美人なのはもちろん、その美人たらしめているのが、その金色の髪、瞳、そして…………ツインテールの髪型だった。この世界でも、地球と同様、『金持ちタカビー女子』の髪型はツインテールで決まっているとは、どれだけ『世界標準髪型』なんだよ…………いや、この場合『全異世界標準髪型』といったところか。
しかも、フレンダは身長も高く、175センチメートルの俺よりも少し低い程度だから、おそらく165センチメートルといったところだろう…………まさに『貴族出身女子のお手本』というような凛々しさとゴージャスさを兼ね備えたオーラを放っている。
それにしても、この『世界』全体に言えるのか、『学校』の生徒だけに言えるのかはわからないが、基本、女性は皆、きれいな人だ。
やるじゃないか、やればできるじゃないか、異世界!
そんな馬鹿なことを一人悶々と考えていると、メガネツン女史が現れて、
「ようし、お前ら! では、早速、これから『魔法力測定』を行う。まず先に男子のほうから測定を行う。男子は前に来て、『魔法力測定器』のほうに並べっ!」
と、張りのある声で指示を出す。
俺たち男子は立ち上がり、ぞろぞろと『魔法力測定器』のほうに並ぶ。そして、皆、期待と不安が入り混じった会話を始めた。
「いや~俺、ちょっと魔法力は自信ないんだよな~」
「ふっ……俺は、入学前から自主練をしてたからな! 自信あるぜっ!」
「お、俺だって! まあ、でも、魔法力だけがイコール強さとも言えないがな……」
「そうか? 魔法力は『量』『属性』を測るものだから、イコール強さと言えるだろ?」
「まあな……でも、実戦だとそれだけでは勝てないとは思うけどさ……」
「いやいや、そうは言っても、やっぱ戦地で活躍している魔法士は基本『魔法力』が高いのは事実だろ? そう考えたらやっぱり『魔法力の高さ』は必要だと思うぞ……」
俺の前にいる男子らの会話を聞く限り、やはり、『魔法力』が高くないと、いろいろと波風が立ちそうに思えてきた。
さてさて…………シーナの『妙案』はうまくいくのか、どうか。
「更新あとがき」
こんばんわ。
一昨日は、東日本大震災の日でしたね、
mitsuzoです。
さて、更新のほう少し遅れてしまって申し訳ありません。
今後は、もう少し更新頻度を上げていけるようがんばります!
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




