第二章 【038】
【038】
――というわけで、アイリが『エチケット的なルーム』という回りくどい言い方でなく、『トイレ』と本人からの宣言するところより、戻ってきて話は再開された。
「とりあえず話はわかったわ。二人が南地区から、この中央区に来た理由は、二人が持っている『謎の力の正体』を掴むためだったってわけね?」
「そうなの」
「そして、その『謎の力の正体』を見つける協力者が『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』だっけ?」
「うん」
「信じられないような話だけど…………でも、その『魔法』とも、『精霊魔法』とも違う『謎の力』ということであれば、女王陛下が協力するのもわかるわね。だって、その力を利用できれば『国防』に大きなプラスになる可能性があるわけだし……ということは、『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』が協力者なら『政府』も協力しているってこと?」
「ううん。政府は関係ないわ。知っているのは女王陛下とその側近だけ」
「ふーん、なるほど、そうなんだ。でも、何となく、それ、理解できるよ」
「? どういうこと?」
「二人は南地区出身だから、あまり聞かない話だと思うけど、今、セントリア王国ってちょっと内輪でゴタゴタしているみたいなんだよね」
「そうなの?」
「うん。まあ、わたしも大人じゃないからそこまで事情はわからないけど、お父さんから聞いたことがあるのは『女王陛下の側近』と『王立軍の幹部』があまり仲良くないんだって……」
「「『王立軍の幹部』……?」」
俺もシーナと一緒に反応した。
「うん。でもね……『女王陛下の側近』には『側近魔法士』がついているから、『王立軍の幹部』たちもそこを恐れてあまり『派手な行動』を取るまではいってないんだって……」
なるほど……カルロスさんや、ロマネさんたちのことか。
確かに、力を見せてもらったわけではないけど、あの二人の前に立つだけでも『威圧感』とかすごかったもんな。
『軍』を仕切っている幹部たちからしたら、その『側近魔法士』の存在は『目の上のたんこぶ』ってとこか……。
それにしても、その『たんこぶ』の一人であるカルロスさんと、その『たんこぶ』を取り仕切っているロマネさん…………そうとう強いんだろうな、あの二人。
『理事長室』で『異世界の人間を証明』するためにやったのが『魔法力測定』程度で本当良かったよ。もしも、そんな測定じゃなく『直接対決』とかだったら大変だったろうな…………下手したら、今頃、俺とシーナはもう一回『あの世とこの世の狭間の世界』に戻っていたかも。
でも、まあ、そう考えると、あの時、カルロスさん、ロマネさんも、いろいろと俺たちのことを考えて、ああいうやり方で『異世界の人間』を確認することにしたのかもな…………考え過ぎか?
俺がシーナの横で、そうやって一人、ブツブツ独り言をかましている間、二人は話を進めていた。
「ふーん、そうだったんだ…………でも、私たちはそんな話、聞かされていなかったんだけどね」
「そうなの? まあ確かに、その『謎の力』がどういうものかまだよくわからない内は、下手にしゃべらないのかもね。二人がどこかで誰かに言っちゃうかも知れないとか考えて……」
「なるほど、確かにそうかもな……」
『一人の世界』にひきこもっていた俺が帰ってきました。
ただいま。
「確かに、そんな『国家機密的な話』をポッと出てきた俺たちなんぞにしゃべるなんてことはないだろうな……」
「……でも、女王陛下から協力をもらえただけでもすごい話なんだけどね。しかも、それで『特別招待生』として招くぐらいなんだから、もしかしたら、女王陛下はハヤトとシーナの『謎の力』に期待しているのかもね」
「そうかな~……」
「わたしはそう思うよ。だって、『特別招待生の選出』は、この制度が設立して二人が『初』なんだから…………それだけ期待してるって証拠だよ、きっと」
と、アイリが俺たちに向かってウインクしつつ、自信たっぷりなかわいらしい笑顔でそう答えた。
「ま、まあ、そうだったらありがたいけどね、ね、お兄ちゃん?」
「!? そ、そうだな……」
シーナは、そんなアイリの態度を見て安心したような表情で俺に相槌を促した。
とりあえず、シーナの中でアイリは『もう大丈夫』と判断されたのだろう…………シーナはアイリに今度は逆に質問を始める。
「ところでさ、アイリ…………南地区のこと、けっこう知ってるの?」
「えっ? うーん……そんなには知らないかな。さっき言った『ウワサ』とか、あとは去年から南地区に『王立中央魔法アカデミー』が設立された話とかそんなもんかな?」
えっ?
『南地区』には『学校』って去年までなかったの?
無償に、その『話の詳細』を聞きたくなった。
でも、ここでその質問をしてしまうと、『何であなたたち南地区の人が知らないの?』てな感じで『ブーメラン』を返される恐れ『大』だからな。
あとで、マルコにでも聞いておこう。
「ふーん、そっか。まあ、でも、しょうがないよね…………『南地区』は、あんまり他の地区と関係を持とうとしないからさ」
シーナもその『南地区の学校設立の話』はスルーした。
…………ということは、やはり、その話は今は触れないほうがいいと判断したのだろう。
「そうなの。だって……言ってなかったけど…………『南地区出身の人』って、わたし二人が初めてよ!?」
「「えっ?! そうなの?」」
「うん。だから、二人のこと……実は…………『変な人とかだったらどうしよう』って昨日会ったときは考えていたからね」
「そ、そうだったの?!……全然知らなかった」
「そりゃあ、顔には出せないよ…………まあ、今はそんなことないから、安心して」
「本当~?」
と、シーナが少し『からかい』でアイリに詰め寄った。
「本当、本当。まあ二人もわたしに『隠し事』していたんだから、これで『あいこ』でしょ?」
と、ちゃっかりアイリちゃん。
「……もう、わかったわよ、いいわ……『あいこ』で」
シーナが折れた。
「ふふんっ!…………あ、でも、一応ちゃんと言っておくけど、本当に今は『変な人』だなんて思っていないからね?!」
「わかってるわよ、アイリ……ね、お兄ちゃん?」
「……ああ」
アイリは俺たちを傷つけないように再度、フォローを入れたが、俺やシーナにしてみれば、このアイリの態度がより『安心感』を与えてくれる。つまり、それだけアイリはシーナの話を信じた、ということになるのだから。
ここで一旦、注文したケーキとコーヒーが来たので、俺たち三人はケーキとコーヒーのおいしさに舌鼓を打ち、それが一段落したあと、
「こほん……。では、これより……『第一回緊急生徒会対策会議』を始めたいと思いますっ!」
と、アイリが高らかに宣言をした。
『宣言好きな子』である。
「では、シーナっ!…………あと、お願い」
あ、丸投げだ。
そして、アイリから『丸投げ』された球を受け取ったシーナは、
「もうっ……アイリったら! コホン……まあ、とにかく今、考えなくてはいけないのは『生徒会に対して、この『謎の力』を見せたり、話したりするのは良いものかどうか……て、こと。まあ、もしくは『相手にしない』っていう手もあるにはあるんだけど……」
「まあ……『相手にしない』っていうのは無理でしょうね」
アイリが冷静に答える。
「そう、だよね…………。となると、やっぱり一度は『生徒会』に呼ばれて事情を説明する必要がある、てことなのかな?」
「そうだね……わたしもそのほうが良いと思うよ。だって、あの『生徒会長』の『ヴィクトリア・クライフィールド』を『相手にしない』なんて…………まず無理だからね」
「……まあ、そりゃそうだよな。さっき寮で声かけられて話したけど怖かったもん。『あの生徒会長』を目の前にして『相手にしない』っていう芸当は……たぶん、誰もできないだろうな」
俺もアイリの考えに同感だった。
そのくらい『生徒会長』のあの『圧倒的な俺様存在感』は強烈だったのだ。
なので、入学早々、『生徒会長』を敵にまわすのは得策じゃないし、そもそも、それは全力で避けたい。
…………ということをシーナに伝えた。
「わ、わかったわよ…………な、何よ、お兄ちゃんとアイリでもう結論出てるしっ!」
と、少し、不満な顔をしていたシーナだったが、そこは俺とアイリの話を聞いて納得したようだった。
というわけで、俺たちは生徒会へ一度行って話をしに行こうと決めたのだが……シーナが、
『どうせ『生徒会室』に行くのが決まっているのなら、あっちから連行されて行くんじゃなく、自分たちから『あいさつ』をしに行こうっ!』
と言い、シーナは俺とアイリを無理やり捕まえ、カフェから出て、本館2Fにある『生徒会室』へと向かっていった。
「更新あとがき」
こんばんわ。
昨日の関東の大雪は、少なくとも僕のせいではございません……、
mitsuzoです。
『更新作業ができる幸せ』
普段の生活をしていると、つい、忘れてしまいがちですが、とても大切なことだな~と感じます。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




