第二章 【027】
【027】
「入学おめでとう! 私の名は『サラ・スカーレット』。お前たちは今日から晴れて、この『王立中央魔法アカデミー』の生徒となった。そして、それはつまり、『セントラルの称号』を得たということになる。お前らには一年間、この私が『セントラル』という称号の重みを身を持って教育していくから覚悟しておくようにっ!」
朝から、『メガネツン女史』は飛ばしまくりでした。
やっぱり、この人、おっかねーよ……超体育会系じゃん!
一年…………長いよ、ママン。
「あと、もう一つ! このクラスは『Aクラス』…………つまり新入生の中でトップに位置するクラスだ。『セントラルの一年生の中のトップクラス』……このことも念頭において『魔法実技』だけでなく、『座学』にもちゃんと励むようにっ!」
がーんっ!
『座学』……勉強ってことですよね?
もうダメぽ。
勉強、キライ、絶対!
「では、早速、これより、この『セントラル』での大まかなスケジュールの説明からする。一度しか言わないからちゃんと聞くように! まず春の4月から6月にかけては……」
春? 4月から6月…………暦も地球と同じなのか?
ということは、一年は『365日周期』ってこと?
今更だが、そう言えば、どうなんだろう?
後からアイリに聞いてみよう。
「……お前たちの現在の『魔法力』を『魔法力測定器』にて確認後、2つのグループに分け、六月までの三ヶ月間はそのグループで授業を受けてもらう」
げっ! 『魔法力測定器』……例のアレか!
これは、マズイのでは?
俺は自席である『窓際の最後尾の席』から、その横にいるシーナのほうを見ると、シーナも同じことを考えているような顔をしていた。
これは、後で相談の必要があるな。
「そして、七月から九月までの夏の期間に入ると、新入生もいよいよ…………『組合』に加入してもらうことになる」
「「「おおーーー!」」」
ほとんどの生徒が皆、一斉に『組合』という言葉に反応した。
『組合』?
何それ、おいしいの?
これも、後から『アイリ通信社』から情報をもらうことにしよう。
「また夏は、『セントラル合同合宿』も控えており、そこにはお前たちの先輩である『上級生』らも参加しての合宿となる。そこで上級生からいろいろと学ぶこともあるはずなので必ず参加するように。というより、Aクラスの生徒は『絶対参加』だ。異論は認めんっ!」
でしょうね。
それにしても……『上級生』か。
…………『きれいなお姉さん』とかいるといいな。
「そして、十月から十二月の秋の期間は、一年の内に二回ある試験のひとつ『中間試験』がある。試験範囲は『座学』だけで『魔法実技』は無い。この学校はお前らも知ってのとおり、『軍事面の教育』が主になるので『座学』よりも『魔法実技』が重要であることは確かだ。しかし、『座学』ができないような奴が『魔法実技』だけで『戦いの場』に行くとまず……生きて帰るのは難しいだろう。理由は、『座学』には『戦略』や『多種族の情報』といった『戦いに必要不可欠なもの』があるからだ。なので、この学校……『セントラル』では『座学』には他の四地区に比べても力を入れている。なので、真剣に『座学』を学ぶように。ちなみに赤点の者は落第は無いが、合格範囲の点数が取れるまでずっと、授業終了後、わたしの『補修』を受けてもらう。ミッチリしごいてやるので心するようにっ!」
げっ! 試験……だとっ?!
『座学』ってつまり、国語とか英語とかそういう『勉強』のことだよな?
そりゃ試験くらいあるよなー、異世界とは言え、だって学校だもん。
まあ、でも『魔法実技』が試験科目に含まれないのはラッキーだったかも。ただでさえ、『神通具現化』とは違う『魔法』自体がよくわかっていないのに、さらに『魔法実技』まで試験なんて…………そりゃ無理ゲーです。
とは言っても、『座学』も正直危ないだろう…………だって俺、この世界の人間じゃないし、歴史とか文化とかまったくわからないし、それはそれでハードな感じは想像つくな、うん。
まあ、落第が無いらしいからその辺は良かったな……………………いやいやいや、でも、さっき『メガネツン女史』の話だと『合格範囲の点数が取れるまでずっとつきっきりで補修』的なことを言ってた。『合格範囲に届くまでずっと補修』って、それはそれでキツイだろ。
『メガネツン女史』との補修だなんて…………どんな拷問だよ。
隼人は『赤点』だけは絶対に免れるよう頑張ろう、と改めて決意した。
それにしても……、
この世界の人たちはやはり最初の予想どおり、『他種族との争い』というのがあるんだな。…………『生きて帰るのは難しいだろう』って、そんな言葉が淡々と、こんな十代前半の子供にも使うなんて、俺が地球……日本に住んでいたときの平和な社会では考えられない。
俺はそういう『この世界の現実』を、先生の言葉の中に少し感じた。
「ちなみに、この秋には『中間試験』の他にもうひとつ、翌年一月に開かれる『全地区魔法士大会』の地区予選である『中央区魔法士大会』が開かれる。お前らは13歳を迎えており、『ジュニア』から『一般』へと参加資格が変わる。『魔法力の差』や『経験の差』で苦労するとは思うが良い経験となるので必ず参加するように。というより、これも『絶対参加』だ。これも異論は認めんっ!」
…………『メガネツン女史』姉御っ! どこまでもついていきます!
「そして、翌年一月から三月までの冬の期間には、大きな大会が二つ控えている。一つは一月に行われる『全地区魔法士大会の本選』そして、来年度の二年次のクラスを決める『クラス分けトーナメント』だ。とりわけ、『全地区魔法士大会の本選』については、一年生にはほとんど関係のない大会となるだろうから、この時期は、お前たち一年生は次年度の『クラス分けトーナメント』だけを集中していればいいだろう。理由は至って単純…………お前ら『一年生』は、『上級生』や『一般の参加者』に比べれば、あまりにも『差』があり過ぎるからだ。まあ、『クラス分けトーナメント』は三月だ、本選は一月にあるので、見学くらいはしても良いだろう」
なるほど、確かにそうだ。
俺たち一年生であれば、どちらかと言うと、『クラス分けトーナメント』のほうが重要なのはまさにそのとおりだろう。
あんな『一般の参加者』……つまり『大人』も出るような大会、ましてや『本選』だなんて、まあ、まず『予選通過』自体が無理だろうからな。
そもそも、この学校の生徒で『本選』に出場する人なんているのだろうか?
普通に考えれば、『一般参加者(大人)』がほとんどを占めると思うんだけどな。
でも、わざわざこの学校のスケジュールに『本選』を入れてあるのは、もしかしたら『上級生』に参加者がいるのだろうか? もしくは、ただ『見学目的』としてスケジュールに入れているのか……。
とりあえず、この辺も後で、『何でもは知らないわよ、知ってることだけ』のアイリさんに聞いてみよう。
「あと、二月には一年に二回ある試験の二つ目……『年度末試験』がある。これも『中間試験』と同様、『赤点の奴らは合格点を取るまでずっと補修』だ。――以上、これが、お前たち一年生の『年次スケジュール』だ。詳しくは後で用紙を配っておくので確認するように」
ズルッ。
何だよ、用紙配るのかよ!
ま、まあ、『一回しか言わない』と言っただけで、『用紙は配らない』とは言っていないし、別に間違ってはいないけど…………何だか複雑っ(プンスカッ!)
「では、今日はこれでHRは終了となるが、この後、お前たちは『学生寮』に行き、『入寮手続き』を済ますように。詳しくは、寮に行けば『寮長』がいるのでそこで確認するように。以上で、HR終了だ。明日からはミッチリと行くから今日は良く眠るようにな。では、解散っ!」
そう言い放つと、『メガネツン女史』……『サラ・スカーレット』はそのまま教室入口から出て行った。
去り際も、終始キレのある動きだった。
あの人、そうとう『できる人』なんだろうな、きっと。
といったわけで、開始前からいろいろあったHRも無事終了した。
「更新あとがき」
今日は、調子に乗って二度目の更新っ!
mitsuzoです。
て言うか、今日の仕事休みを利用してこれまでの更新記事のチェックをして、必要なものは『改稿』もしております。
その『改稿作業』の中で、実は大きな改稿内容が一箇所ありました。それは……、
※「王立中央魔法アカデミー」への入学と卒業についてです。
※最初、「13歳から入学で、18歳までの6年間で卒業」としてありましたが、「13歳から18歳まで」を「入学資格の年齢条件」と変更しました(第一章 【014】と【015】)
※なので、「13歳から18歳」まででしたら、何度ダブッても毎年試験は受けられるということになります
※また、「同じ学年・同級生」でも「年齢」が「上の人」がいたり、「下の人」がいたりもするということです
※だから、16歳の隼人と14歳のシーナが、13歳のアイリと同じ一年生であるということになるわけです
すみません……。
完全にこの「王立中央魔法アカデミー」の「入学内容」の説明を「うっかりミス」してました。
と言ったわけで、そんな改稿作業も一通りでき、しかも、一日に二度記事も更新できたので、休みが充実でき、良かったです。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




