第一章 【020】
【020】
俺とシーナは「アカデミー長」であり、「元・側近魔法士」のカルロス・ワイバーンに促され、『魔法力測定器』の前に立たされていた。
「そ、そんな……『予言』の内容を教えてもらえないことには、俺たちも、その証拠を見せられませんよ……」
俺は、何とか『予言』の内容を教えてもらおうとシーナのように交渉をしようとしてみた。しかし、
「ハヤト様……そんなことを言っても、それが『予言』の内容を開示させる理由にはなりませんよ? こちらとしてはそのままお二人が『虚言だった』ということで『牢』に入れ、『力づく』でお二人の身元を聞きだすことも可能なのですから……?」
と、さらっと怖いことを言い放つ。
「カ……カルロスッ!?」
ここで、リサ・クイーン・セントリア女王陛下からカルロスは一喝される。
「失礼しました、リサ様…………言葉に気をつけます」
カルロスは謝罪の言葉を述べる…………が、俺たちを逃すつもりは毛頭ない。
「――とにかく。お二人がこの『魔法力測定器』を試してもらうためだけに、『予言』の内容開示をすることはできません。なので、申し訳ありませんが、こちらの要望どおり、『魔法力』を測らせてもらいます」
と、カルロスが俺とシーナに再び、迫った。
すると、シーナがカルロスだけじゃなく、リサ・クイーン・セントリア女王陛下や、執事のロマネ・フランジュにも向けて話し始める。
「――わかりました。この『魔法力測定器』を使って測らせてもらって結構です。ただし、一つだけ言っておきますが、まず、わたしには………………『魔法力』はありません」
「!?…………シ、シーナッ!」
シーナはいきなり『ネタ』をばらした。
な、なぜ……?
「――ですが、わたしの兄である、この『ハヤト・ニノミヤ』なら『力』を持っていますので、それをお見せすれば、わたしたちが『異世界の人間である』ということを認めてくれないでしょうか?」
シーナはそう言ってカルロス、リサ、ロマネに提案した。
しかし、
「ダメです。シーナ様が『魔法力』が無く、ハヤト様が『魔法力がある』とすれば、『特別招待生』はハヤト様だけで、シーナ様の『特別招待生』の特権は剥奪します」
と、カルロスは即答した。
だが、
「まあ待て、カルロス……」
ここで、執事のロマネ・フランジュがカルロスを止める。
「リサ様、どうしましょう?」
ロマネはリサに判断を委ねた。
「…………うむ」
リサ・クイーン・セントリア女王陛下は考える。
正直、俺は思った…………この中で一番偉いのはこのリサ……『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』だ。
そして、俺とシーナの出現に真っ先に喜びを表したのも、リサだった。
だから…………だから、俺は、『リサ・クイーン・セントリア女王陛下がシーナの提案を認める』と、
そう……思いこんでいた。
しかし……、
「カルロスの言う通り、ハヤト様がもし『桁違いの魔法力』を持っていて、シーナ様がそうでないのだとすれば、シーナ様のほうは『特別招待生』という特権は剥奪とします」
「……えっ?」
「それだけではありません。もし、本当に『魔法力の無いシーナ様』であれば、それなりの身元確認を『牢』にて『尋問』させていただくことになるでしょう」
「な……っ!」
『アテが外れた』俺は、そのリサ・クイーン・セントリア女王陛下の言葉に呆然とした。
「そ、そんな……別に俺だけでも『力』を証明すればシーナも同じ待遇でいいじゃないか? どうして……」
俺はリサ・クイーン・セントリア女王陛下に詰め寄る。しかし、
「ハヤト様、それはなりません。この『特別招待生』の資金はすべて、この国の民から頂いてる『お金』……『国費』から賄われています。ですので、『魔法力を持たないシーナ様』には『特別招待生』の特権を認めるわけにはいきません。また、その場合、『国防上』、シーナ様をこちらで監視体制下に置く必要があります。別に、ハヤト様やシーナ様を信じていないわけではありません…………ただ、この国を治める者として、『正体が掴めていない人物』はすべて『国の脅威』とみなしますので、厳しく対処させていただきます。もちろん、ハヤト様も、もし、この『魔法力測定器』での測定結果が我々が『想定しているもの以下』であれば…………同じです」
と、リサ・クイーン・セントリア女王陛下は、厳しい表情で言及する。
しかし、リサの言っていることは…………正論だ。
俺だって、お金を国に収めている立場なら、政府にそんな『無駄遣い』されても納得いかない。
それに、『正体を掴めない者』に対して国の対応として「監視体制下に置く」というのは当然だろう。
何者かわからない以上、それだけでも『脅威』として成り立つのだから。
リサは、まだ俺よりも幼いであろう女の子ではあるが、芯をしっかり持ち、国を治める『主』としての器・資格を持っていた。だからこそ、今のような『厳しい発言』を『心待ちにしていた』という『異世界の人間』である俺たちに、そうはっきりと言えるのだろう。
すごい女の子だ。
そして、俺も……、
そのリサ・クイーン・セントリア女王陛下の言葉を聞いて、覚悟を決める。
「わかりました。…………陛下、申し訳ありません、それでしたら、わたしもシーナと同様『特別招待生』の特権を剥奪してもらって結構です」
俺は、リサ・クイーン・セントリア女王陛下の目を見て、はっきりと意志を示した。
「えっ……?」
リサはその発言が意外だったようで驚いている。
「い、いいのですか、それで? そうなったら、もし『力』を持っているハヤト様だとしても『城で尋問』……つまり『牢』に入ってもらうということになるのですよ? もしも、ハヤト様が『力』を使って城自体を壊すということを企んでいるのなら、我々、『セントリア王国の力』をあまり甘く見ないでいただきたい」
と、リサは逆に、ハヤトの言葉が『セントリア王国』を甘く見ているように感じたらしく、少し、感情的な答えを返した。
「いえ、俺はそんなことはしませんし、『セントリア王国』を甘く見ているわけでもありません。ただ…………ただ、もし、仮にわたしが三人の納得するような『力』を出せたとしても、シーナが……妹だけが牢屋に入れられて、俺だけが『特別招待生』の待遇のままなんて……そんなの嫌だからっ! それだけです」
俺は、感情的な返答をしたリサに対して、素直な気持ちで、そして力強く、自分の想いをはっきりと伝えた。
すると、ここでシーナが一度、ため息をついて口を開く。
「……ふう。お兄ちゃん。ちょっと耳貸して」
俺はシーナのほうに耳を傾ける。
(ハヤト……いいか、わたしの言う通りにイメージして『神通具現化』を発動するんだ? いいな?)
(えっ?)
(いいからっ! とにかくハヤトはわたしの言う通りに『神通具現化』を発動するんだ。後は、わたしのほうで何とかするから……では、お前に『神通具現化』させるイメージについてだが……)
と、言うことでシーナから俺は『具現化するイメージ』を聞いた。そして……、
(そ、そんなことできるのか?!)
(できるっ! ハヤトなら多分、大丈夫だ。迷うなっ!)
(わ、わかった……)
シーナからいろいろとアドバイスをもらった俺は『魔法力測定器』の前に立ち、
「お願いします」
とカルロスへ一言。
「うむ。では、早速、測定のほう始めさせていただく。ハヤト様……この機械の真ん中のほうに『的』のようなものがあるのがわかりますか?」
「は、はい」
「その『的』に手を当てて、魔法力を解放してください。そうすれば機械が魔法力を測定してくれますので……」
「わ、わかった」
この『魔法力測定器』……見た目は、地球で言うところのゲームセンターなどに置いてある『パンチングマシーン』と非常に似ている。ただ、この『魔法力測定器』は『的』を叩くのではなく、『的』に手を当てて、自分の中に潜在している魔法力を高めていき、それを測る機械らしい。
「では、お願いします」
俺はその『的』に手を当てて、魔法力(魔法力らしきもの)を高めていく。
しかし……機械は……『魔法力測定器』はウンともスンとも言わない。
「あのう……何も反応していないみたい、なんですけど……」
と、俺はカルロスに尋ねた。
すると、カルロスは驚いた様子で、
「そ、そんな……初めてみた…………」
「……えっ?」
何? 何?
「魔法力が……ゼロ……まったく無い人間なんて………………信じられないっ!」
そう言って、カルロスが『マジビビリ』をしていた。
しかし…………カルロスの『マジビビリ』はこれで終わりではなく、まだ『序章』に過ぎない。
本番は、これからだ。
更新しました~。
ね、眠い……。
明日もまた更新できるよう、が、がんばり、ま…………、
……Zzz。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




