表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナザーワールドへようこそっ!  作者: mitsuzo
第一章「アナザーワールドへようこそっ!」
11/104

第一章  【010】




  【010】






「『利己的欲求エゴを一つ封印』……?」



 俺は、シーナの『イノキの件』は早々に切り上げ、話を続けた。



「うむ。『利己的欲求エゴ』とは『人間』が持っている『五大欲(食欲・睡眠欲・色欲・物欲・名誉欲)』のことを差し、そして、お前が『媒介役メディエーター』となるためには、その『五大欲』の中から『一つだけ封印する』ということなんだ」


「欲を……封印……」


「うむ。これが『神』が用意した、お前が『媒介役メディエーター』となるためのプレゼントだ。『前世』が『地球の人間だった魂』で『媒介役メディエーター』になれるなんてまず初めてだからな……はっきり言って、この程度の条件で『前世が地球の人間だった魂』が『媒介役メディエーター』になれるなんて、ものすごいことなんだぞ?!」


 シーナは、本当に感心しながら熱心に説明していた。


「そ、そんな『ものすごいこと』って言われてもな~……何だか、よくわからないし」

「まあ……それもそうだな。なんせ、隼人はまだ『力』を使う場面に遭遇したことが無いからな」

「いやいや、できればそんな場面に遭遇なんてしたくねーよ! 俺は、はっきり言って争い事なんて嫌いだからな。人を殴るのも、人に殴られるのもどっちも嫌だし……。まあ、力をちょっと『遊び程度』で楽しむくらい気楽なほうがいいんだけど……」


 シーナは『呆れ顔』でこっちを見て、


「……まあ、な。そうあって欲しいものだけどな」

「?……シーナ?」



(争い事を避けるなんて…………『アナザーワールドに転生した魂』には無理だがな)



「えっ? シーナ今、何か言った?」

「……いや、何も」

「?…………あっ、シーナ、ところでさ、その『媒介役メディエーター』になるために『五大欲のひとつを封印する』って言ってたけど、そんなのどうやって封印すんだよ?」

「うむ。それなんだが………………まあ、まず、これを飲め」

「? カプセル?」

「ああ。まずそれを飲むんだ。話はそれからだ」


 そう言うと、シーナは俺に『ピンク色のカプセルのようなもの』を差し出した。大きさは『地球』でよく見かける市販の『かぜ薬のカプセル』程度なので、俺は特に水を必要とせず、スッと飲み込んだ。



 ゴックン。



「……飲んだか?」

「あ、ああ。まあ、飲んだけど…………これ何?」

「うむ。このカプセルを飲んだことにより、今からお前は『媒介役メディエーター』として『神の力』を『具現化』することができるようになりました。おめでとうございます」

「えっ……そ、そうなの? え? え? あ、ありがとう……」


 なっ……や、やけにあっさりだな。


 でも、何だ……? 何かひっかかるぞ…………。


……あれ?


「そ、そう言えばシーナ、お前、さっき『五大欲(食欲・睡眠欲・色欲・物欲・名誉欲)』の中から『一つだけ選んで封印する』って言ったよな?」

「……ああ、言ったな」

「じゃ、じゃあ、何でこの『カプセルを飲んだだけ』でお前は俺に『媒介役メディエーターになれた』なんて言うんだ?」

「それはな、このカプセルにはな、『事前』にわたしがお前の『封印する欲求を仕込んでおいた』からだ」



「!? な、なにーーーーーっ!」



 し、しまった!? うっかり流れで飲んでしまった。


 どう考えても「変」だろ? あんな「カプセル」……。


 バカッ! 俺のバカッ!


「大丈夫だ、少なくとも『食欲』ではないから安心しろ。おいしいものを食べる欲求はちゃんとそのままにしておいた。わたしはやさしいからな」

「ちょ、ちょちょ……ちょっと待てっ! じゃ、じゃあ、お前、俺の……俺の、どの『利己的欲求エゴ』を封印したんだ?」

「んっ? ああ……封印したのは『色欲』だ」

「!?……し、色欲?……そ、それって」

「ああ、『性欲』のことだ」



「な、なな、ななななーーーにーーーーっ!」



「大丈夫。五大欲の中で『色欲(性欲)』のほうが一番『利己的欲求エゴを抑える』のが『ラク』だし、しかも、その割に『神の力』を『具現化』するのは『封印する五大欲』の中で『最大』だからな……つまり『一石二鳥』てやつだっ!」


 と、シーナは『お前のためにやってあげたぞっ!』的な得意満面の笑顔で答えた。


 俺は、しばらく、そんなシーナの『気遣い』に呆然としていた……が、すると、おそらく今の『カプセル』を飲んだからなのか……身体が熱く火照ってきた。


 それは、ジワリジワリとゆっくり熱を帯び、次第にどんどん加速して身体を火照り始めてきた。


「ぐっ……あ、熱い。身体が焼けるように……熱いっ! お、おいシーナ、これは一体……?」

「うむ。大丈夫だ。これはその『カプセル』を飲んだことにより『色欲(性欲)を封印する』という『契約』を『神』と交わしたことによる現象のひとつだ。しばらくすれば元に戻るから、まあ、少しガマンしろ」

「くっ! な、なんだよ、それ…………」



 それも、先に言えよっ!



 俺の身体は、内側からどんどん熱くなっていった。そして、それと同時に、俺の身体の外側は光を発していた。


 身体の内側では『熱』が、外では『光』が、どんどん加速度を増し急上昇していく。


 そして、『熱』と『光』が最大になったとき、俺の『右手の甲』にチリチリと何かを『刻む』ような『熱と痛み』を感じた。


 その後、その右手の甲の『熱と痛み』が無くなると同時に、俺の身体の『内側・外側』の『熱』も『光』も、消え去っていった。



「ふむ。これで『神との契約』は正式に完了した。これで、お前も『媒介役メディエーター』として『神通具現化ディバイン・フォース』が使えるようになった」

「そ、そうなのか……?」

「ああ。その証拠に、ホレ、ここ、ここ……ここを見てみろ……」


 と、シーナが、俺に『右手の甲』を見るようゼスチャーした。すると……、


「……あっ!」


 そこには何か『記号』のようなものが刻まれていた。


「こ、これって……まさか?」

「これは『六芒星』というやつで、この『印』が『神との契約が正式に完了した』という『印』になる」

「六芒……星……」


『六芒星』……地球にいたときにその手の小説・映画は好きだったからその言葉は聞いたことがあった。だから、何となくだが『神との契約の印』という話には、しっくり受け入れることができた。


 そして、その横でシーナが『神との契約』について続きを話し始める。


「ちなみに、この『神との契約』である『色欲の封印』を破ると『媒介役メディエーター』の力は無くなり、二度と使えなくなる。つまり『再契約』は無いということだ。そして、この世界アナザーワールドで『力』を使えないということは即『死』を意味する…………この意味がわかるな?」


 と、シーナが真面目な顔で俺に凄んで説明をする。


 しかし、


「いやいやいやいや……おかしいだろ、お前っ! 順序、逆っ! 契約も何も、そもそも、どうしてそんな大事なことを『カプセルを飲む前』に話さなかったんだよ? そんな大事なことなら『利己的欲求エゴ』くらい自分で選ばせろよっ! そんな契約……ただの『詐欺』じゃねーか!」

「さ、詐欺だとぉー! 失敬なっ! わたしはお前に少しでも楽して『媒介役メディエーター』になってもらおうとだなー……け、けっして、『『色欲の封印』のほうが面白そうだから』なんて動機でやったわけじゃ、な、ないんだからねっ!」



 シ、シーナさん……本音が漏れてますし、ツンデレ風な言い方になってますし、あと、ツンデレの使い方も間違ってますよ。



「あっ! 忘れてたーっ!」

「!……な、何、何、なによっ!? もう勘弁してくれよ! まだ、何かあんの?!」

「あのな、隼人、実は……」


 これ、また、すごーく「嫌な予感」がした。


 そして……またもや「的中」した。



「わたしの『媒介役メディエーターの力』は、ここ(アナザーワールド)では封印されてるから……」



「……えっ?」



「でも、大丈夫っ! この先、何かと戦うことになってもわたしは『アドバイス』でサポートするからっ! だから、何か、わからないことがあったらいつでも聞いてくれ、何でも答えてやるぞっ!…………わたしの知識と『メモ帳』に書かれている範囲であればなっ!」


 いや、何でもじゃ、ないじゃん!


 いやいやいやいや、ちょっと待て。落ち着け、俺。今、ツッコむところはそこじゃねえ。


「なので、何かに襲われたときは全力でわたしを守るように、以上……………………あとは頼んだよ、お兄ちゃん」

「お兄ちゃんじゃねえ! て言うか、お前…………本当に、力使えないのぉー?」

「うむ。ここでは使えない。『仕様』だ」

「うるせーよっ!『仕様』とか言うなっ! で、でも、さっきお前、おじさんに魔法が見られると困るって言ってたじゃん?!」

「ああ、あれか……? あれはだな、『お前の媒介役メディエーターの力を見られるのは困る』という意味だ」

「は……はあぁあぁぁぁあーーー?? じゃ、じゃあ、お前、自分の力は使えないのに、神父には娘さんを助けに行きますとか、おじさんには足手まといだから、とか言って帰しちゃったわけ? 何の『アテ』もなかったわけ?」

「いやいや、だから、『アテ』は隼人……いやさ、『お兄ちゃん』だったってこと。それでー、そうなると、おじさんがいたままだと、お兄ちゃんの『媒介役メディエーター』の力を見せてしまうことになるでしょ? そうなると、力を使えなくてアンリちゃんを助けることができないじゃない? だから、おじさんには帰ってもらう必要があったの? わかった?」


 シーナにとって、この口調が『妹』なのかは知らんが、その『妹設定のキャラ』で説明した。


 うぜー。


「あ、そっかー、わかった!………………て、なるわけねーだろ!」


 ノリツッコんでみました。


「お前、話、擦り替えるなよ。お前のその言い方って……『俺が媒介役メディエーターになって戦う前提』じゃねーかよ! お前、もし、俺が『媒介役メディエーターなんてならない』って言ってたら、どうするつもりだったんだよ?」

「ああ、それなら大丈夫だ……どんな手を使ってでもこの『カプセル』をお前に飲ませるつもりだったから」

「……………………」



 ガチョーン。



 そりゃ、出ますよ…………「昭和のギャグ」も。



 つまり、俺は……「どっちにしろ、この選択しかなかった」て、ことかよ。



 まったく、やり方が「ブラック企業」並みだな、おい。


 それにしても、こいつ、とんでもねーな。


 自分で言ったことはすぐ忘れるし、おバカだし、そして……、


「自分が面白そうと思うことなら、俺よりも優先しやがるしっ!」。



――とは言え。


『色欲(性欲)の封印』…………か。まあ、確かに、こんなシーナに俺が欲情するなんてこと、今後、まず『無い』だろうし、最初は、すごく不安だったけど、よく考えてみればシーナの言う通り『あり』なのかもしれないな。なんせ、『色欲の封印』は我慢するのがラクな上、『神通具現化ディバイン・フォース』を引き出す力は、封印する五大欲の中では一番高いらしいし……。そう考えると、確かに『一石二鳥』なのかも知れないな。



 まあ、『シーナの言う通り』になるのが『シャク』だけど。



「はー、わかったよ、シーナ。『色欲の封印』……何とか我慢して『媒介役メディエーター』として、このアナザーワールドで頑張ってみるよ」


 と、俺はシーナに『納得してないけどしょうがないから』という『大人の対応』を見せ、あわよくば、今後の『貸し』にでもするつもりな態度で、そう答えた。


「そ、そうか? い、意外と物分りがいいじゃないか。やるな、隼人。少し見直したぞ」

「ふっ……まかせとけ」



――二人は、このときの『色欲の封印』の選択を、後に、深く後悔することとなる。


 そして、それは、隼人やシーナ、また、この先関わってくる女の子たちすべてをも巻き込んでいく。



 この先、訪れる「女難の元凶」はすべて、このときの「色欲の封印」という「神との契約」から始まった。




更新しました~。


今のところ、ほぼ順調に更新できてますが、そろそろ「書き溜め切れ」になるので、もしかしたら更新頻度が落ちるかも……。


という「言い訳」を今のうちからしておきますねww


本日も読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ