第四章 【098】 --第一部最終話--
【098】 第一部最終話
ガーギル・アーチボルトが『新しい神』により消滅させられた後しばらくして、俺とロマネ、リサのもとに、ジュリア・フランヴィルやヴィクトリア・クライフィールド等、皆が終結していた。
俺たちがガーギル・アーチボルトと対決している間、街では『学校』と『組合』の合同班により、圧倒的な火力で事態を収拾。さらに、俺たちが獣人族と戦った実習現場の森で残っている生存者がいないか確認にいった『生存者救出班』が、生き残った生徒や組合の人達も駆けつけていたこともあり、あっという間に事態は収まった。
それに、元々、ガーギル・アーチボルトに操られていた獣人族や側近魔法士も、ガーギル・アーチボルト本人が死んだことにより、その『人を操る魔法――洗脳侵食』の効果が消えた。その為、戦闘は激化することもなく、事態はすぐに沈静化していった。
セントリア王国は再び、平和を取り戻した。
――次の日。
俺やシーナ、アイリ・カールトン、フレンダ・ミラージュ、マルコ・デルフォード、サラ・スカーレット、ベル・コリンズ、ヴィクトリア・クライフィールド等、学校の生徒は、昨日の戦闘の後、リサが住む『セントラル・パレス』にて一泊した。あんな戦闘があったこともあり、俺たちはセントラル・パレス『かかりつけの医者』に一通り、診てもらっていた。幸い、誰も命に別状はなく、ケガもたいしたケガをしている者はいなかったので良かったのだが、ひとつ、皆が心配していることがあった。それは、リサの容態だった。
昨日、ガーギル・アーチボルトが消滅した後、しばらくして他の皆も俺たちのところに駆けつけたのだが、その時もまだリサは気を失ったままだった。
そして俺たちは皆、『セントラル・パレス』へ移動し、到着した後、リサはすぐに何十人もの医者たちに囲まれながら『医療特別室』へと運び込まれた。そして、俺たちもまた、一人ひとり、再度の精密検査を行うということで一通り検査を受けることとなる。
それから10時間後――いくつもの検査が終わり『異常無し』との太鼓判をもらった俺たちはやっと開放されたが、もうすでに外は夜で、しかも深夜だった。皆、戦闘で体力も魔法力もヘトヘトだったということもあり、俺たちは病室のベッドですぐに眠った。
朝――。セントラル・パレスのメイドさんに起こされ、朝食を取りに部屋へと移動。扉を開けるとそこには、まぶしい笑顔で正装したリサ・クイーン・セントリア女王陛下がいた。
「皆さん、本当にお疲れ様でした。そして……ありがとう、王国を守ってくれて」
リサは、王国の伝統にある『最大の賞賛を送る礼』を持って、隼人たちに挨拶をした。
俺たちは、いきなりの『不意打ち』に唖然、硬直。
しかし、すぐに意識が戻り、改めて、俺たちもリサへ『最大の賞賛へ返す礼』を持って返した。
その後は、リサもいつも通りに戻り、皆で朝食を取りながら談笑をしていた。
そして、朝食も終わり、俺たちは学校へと戻ろうとした、その時……、
バン!!!
いきなり扉を開け、血相を変えたロマネが入ってきた。
「リ、リサ様っ!」
「な、何事です、ロマネ?!」
「……す、すみません、お食事中のところ。で、ですが、今、大変なことが起こっています!」
ロマネが深刻な顔で告げる。
「な、何があったんですか、ロマネさん!」
「隼人様……あと、学校の諸君、君たちも手を貸して欲しい!」
「「「「「「えっ?!!! わ、わたしたちも……?!!!」」」」」」
「どういうことですか、ロマネ!」
「リ、リサ様! と、とにかく、一緒に来てください」
俺たちは、ロマネの後を追った。
ロマネは、セントラル・パレス最上階の間である『福音の間』へと向かっているようだった。
セントラル・パレスの最上階である『福音の間』は、普段、公式行事で王国民へ『顔』を見せながら発表を行う場所として利用される。そんなところへ、ロマネさんはどうして俺たちを移動させるんだ?
隼人は走りながらロマネの行動について考えていた。
そんな、隼人があーでもない、こーでもないと考えている間に、最上階の扉の入口でロマネは止まった。やはり、ロマネが誘導していた場所はセントラル・パレスの最上階……『福音の間』だった。
「リサ様、隼人様、そして学校の諸君……!」
ロマネが厳しい顔で皆に声を掛けた……………………が、すぐにその顔は綻び、笑顔に変わる。
「……王国民に、ご挨拶を!」
そう言うとロマネは、『福音の間』の扉をいきおいよく開けた。
扉を開くと、正面にベランダへ出るための窓があり、そこから………………『大きな歓声』が聞こえてくる。
「リサ様ーーーーー!!!!!」
「リサ様ーーーーーー!!!!!!!!」
「おーーーーい! 学校の生徒はまだかーーーー!!!」
「ヴィクトリア様はまだなのーーー?!」
「あたしは、はやく生でフレンダ・ミラージュ様を見てみたーーーーーい!!」
「ベル・コリンズちゃんはまだーーーー! あたしファンになっちゃたーーー!! すごい小さくて可愛いのに強いのよ!!」
「アイリちゃーーん! 俺たちはアイリちゃん一択だぁああ!!!」
「サラ・スカーレット様はまだかーーーーー!!!!!!」
ワー、ワー、ワー。
「な、何……?」
「…………こ、これは一体っ?!」
「な、何が、何が起こって……?!」
「う、うわあ…………すごい」
「ど、どうして私達の名前を? こ、これは、どういうことですの?」
リサも含め、皆がその光景に、ただただ呆然としていた。
窓の外では、リサはもちろんのこと、学校の者たちを呼ぶ大勢の王国民が集まり、歓声を上げていた。
「ロ、ロマネ……これは一体?」
「どうやら、組合の者たちの仕業のようで……」
「組合の?」
「はい。実は『組合実習』で一緒に参加をしていた広報班がいたらしく……」
「広報班?」
「はい。広報班の本来の活動は『組合実習』の記録をカメラに収め、学校の生徒たちへ今後の指導に活かすための『記録用部隊』みたいなものであります。しかし、今回のこのアクシデントにより、その広報班は『記録用部隊』から、本来の目的である『組合宣伝活動部隊』に変わったようでして……?」
「…………えっ?」
「つ、つまり……このアクシデントを『自分たちの組合員勧誘映像にしよう』となったようでして、昨日の王国での皆の戦いを横からカメラが着いてそのままライブで流していたようです」
「「「「「「「ええええええええええーーーーーーーー!!!!!!!!!」」」」」」」」
ロマネの言葉に皆、びっくり。
「ラ、ライブって……つまり生放送であの昨日の戦闘が流れていたってことですの?」
フレンダ・ミラージュが尋ねる。
「はい。そのとおりです」
「だ、だから、私達の名前を呼んでいるの?」
ベル・コリンズが聞く。
「はい」
「わ、わたしたちはどうすれば……」
とまどいを隠せずに尋ねるアイリ・カールトン。
「はい…………その窓を開けて、王国民に元気な顔を見せてあげてください!」
そう言うと、ロマネがその窓を開け、皆をベランダへと案内した。
「これが、学校の君たちが守ったものだ」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
「きたーーーーーー!! 姿を現したぞーーーーーーー!!!!」
「きゃああああああ!!! ヴィクトリア様---------!!!!!!」
「ベルちゃん、ベルちゃあああああああああああん!!! きゃーかわいい!!!!」
「フレンダ様! なんとお美しい!! まさに『凍結天女』!!!!」
皆がベランダに姿を現した瞬間、一気に歓声が大きくなった。
「な、なに……? これ?」
「ちょ……! 何なのよ、これ?!」
「ベ、ベル・コリンズって、あ、あたしの名前まで…………うれしい!」
「…………は、恥ずかしい」
皆が、ただただ目の前の光景に驚く。
「これが、皆さんが命をかけて守ってくれたものです。本当にありがとう。君たちがいなかったらセントリア王国はガーギル・アーチボルトに支配され、世界が奴の手に落ちていたことでしょう。それを、あなた方が食い止めたのです。本当にありがとう……」
ロマネが優しい笑顔で、力強く呟く。
「まあ、今回のこの組合広報班の行動はけっして褒められるものではありません。ですが、それを指示したのは、総隊長ジュリア・フランヴィルですので、まあ今回は、目を瞑りますがね」
「ジュ、ジュリアが……?!」
隼人がロマネの言葉に反応する。
「はい。何でもジュリア様曰く…………『これから、この世界を守っていく者たちの活躍を全王国民に知らしめよっ!』という指示のもとで、組合広報班は総力を挙げて、その任務を遂行したとのことでした」
ちなみに、広報班がライブで届けた映像は、現在もリピートして繰り返して流されているらしく、その録画映像には、みんなの『名前』も入っているとのことだった。おそらく広報班が編集したのだろう。仕事はえーよ。
「ジュリア…………まったく」
隼人は苦笑いしながら、ジュリア・フランヴィルの相変わらずの行動にため息をついた。
ベランダからの光景は、下には、大勢の王国民の姿があり、右手には大きなテレビモニターを映し出すパネルがあった。もちろん、そこに映っているのは、現在、組合の広報班が流している昨日の戦闘の映像だった。そして、ロマネの言うとおり、その映像には、出てくる学校の生徒が名前付きで紹介されていた。
「あ、あの映像が流れているの、今!」
アイリが、もっともな反応をする。
「だ、だから、みんな、名前知ってるんだ……」
ベル・コリンズが呟く。
「…………は、恥ずかしい」
ヴィクトリア・クライフィールドは、ただただ、下を向いていた。
すると、皆、ある『違和感』に気づく。
「あれ?」
「えっ……?」
「ど……どういうことだ?」
「な、なんで?」
「こ、これは一体……?」
「これって…………」
そして、隼人とシーナもその『違和感』に気づく。
「「「「「「ハヤトとシーナが…………いない?!」」」」」
皆が、その『違和感』に気づくと同時に、部屋の中から気配を感じた。
振り向くと、そこにはジュリア・フランヴィルとエックハルト・シュナイデンがいた。
「その『違和感』については、わらわから説明しよう」
「「「「「「ジュリア様! シュナイデン様!」」」」」」
二人は、引き締めた表情をして立っている。
「ジュリア様、そ、それに……エックハルト・シュナイデン。どうして……?」
リサが二人に近づき尋ねる。
ジュリアは、これまでのいきさつや、エックハルト・シュナイデンの経緯も含めて説明をした。
「そ、そうだったんですか……」
リサは、複雑な表情で呟く。
「ロマネには、リサ様たちに声を掛ける前に話をしました。そして、ロマネの了承を得て、今、こうして説明に上がった次第です。その上で話を聞いていただきたい」
ジュリアは、リサにそう言って頭を下げる。
「……わかりました。窺います」
最初、戸惑いを見せていたリサだったが、すぐに冷静さを取り戻し、改めて『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』として話を聞く姿勢に切り替えた。
「では、話してください。ジュリア・フランヴィル総隊長殿」
「ありがとうございます、女王陛下」
一礼をしたジュリア・フランヴィルが、改めて、皆に説明を始める。
「今回、ハヤトやシーナを映像に出さなかった理由は、これからの二人の目的遂行の為の処置です」
「目的遂行?」
すると、ジュリアの横にいるエックハルト・シュナイデンが呟く。
「はい。隼人の『記憶を取り戻す』という目的です」
「ハヤトの…………記憶」
そうして、今度はエックハルト・シュナイデンが、自身の話も含めてリサに説明をした。
「では、エックハルト・シュナイデン……あなたはその為に生き返ったと?」
「はい、そうです。そして、残りの隼人の記憶は、わたし以外の生き返った『英雄五傑』が持っています。なので、隼人とシーナは、彼女らを探す旅に出なくてはなりません。その為には、彼らの存在はあまり知られないほうが良い」
「……なるほど。そういうことだったんですね」
「しかし、目的はそれだけではないです」
と、ここでジュリアが説明をする。
「これは、わたしの個人的な意見ですが、この『事件』で大きな活躍をした学校の生徒に、今後のセントリア王国の未来を託したいとも思ったからです」
「未来……?」
「はい。ここに来る前の獣人族との戦闘で犠牲になった組合員や、学校の生徒は多く、生き残った組合員は4割、学生の生き残りに至っては、約1割しかおりません」
「い……1割! そ、そんなにも……」
「はい。それほどの犠牲をこの戦いで強いられました。なので、王国の再建には、生き残ったメンバーは大きな『要』です。ですので、そこにいる学生たちには『学校の再建』と『王国の再建』、両方の再建を託すつもりです。その為に、皆の活躍を映像で流し、王国民の大きな支持を得た中で羽ばたいて欲しいのです!」
「「「「「「ジュ……ジュリア総隊長」」」」」」」
ヴィクトリア・クライフィールド以下、皆がジュリアの言葉に言葉を失う。
ここで、またエックハルト・シュナイデンが変わって話を始める。
「リサ様……隼人とシーナの旅に付き添うのは、わたくしエックハルト・シュナイデンだけです。ジュリアは、『王国の再建』と『学校の再建』の為に残ります。なので、わたしたちの旅をお許しください」
そう言うと、エックハルト・シュナイデンがリサに頭を下げた。
「……頭を上げてください、エックハルト・シュナイデン」
「は、はい!」
「わかりました。あなた方の話、すべて認めます。この世界は、あなた方の活躍により守られたのです。わたしに断る理由などありません」
「リ、リサ様……」
「ハヤト、シーナ……」
「「は、はい」」
リサが、隼人とシーナに寄る。
「本当にありがとう、この世界、アナザーワールドに来てくれて……」
「「リ、リサ……様」」
「もっとお話したいことも楽しみたいこともありましたが、でも、それは、わたくしのワガママでしかありません」
「「リ、リサ……」」
リサは、笑顔で言葉を紡ぐ。
「行ってらっしゃい、救世主様! 今度は、あなたたちの目的を叶えてくださいね!」
そう二人に声を掛けるリサの目からは涙が溢れていた。
「あ、ありがとう……リサ」
シーナが呟く。
「旅が終わったら、必ず、ここに遊びに来るよ、リサ」
隼人がリサに力強く答える。
「ハヤト、リサ……ありがとう」
すると、エックハルト・シュナイデンが横から呟く。
「では、行きましょう……隼人、シーナ」
「「「「「えっ?! 今から?!」」」」」
他の皆がエックハルト・シュナイデンの言葉に驚く。
「……わたしがこの世界で隼人に出会った今、『闇属性の魔法士』も同時に動き出すでしょう」
「闇属性の魔法士!……ガーギル・アーチボルト以外にもいるのですか?!」
リサがエックハルト・シュナイデンの言葉に反応する。
「はい。わたしが隼人に接触したことにより、『闇属性の魔法士』に『英雄五傑』が復活したのも気づかれています。そうなると、隼人の『記憶の一部』を持つわたしたち『英雄五傑』は『闇属性の魔法士』に命を狙われるでしょう」
「そ、そんな……!?」
「なので、隼人、シーナ……行きましょう。時は一刻を争います」
「「わ、わかった……」」
そう言うと、隼人とシーナはエックハルト・シュナイデンのほうへと歩き出す。
「「「「「「ハ、ハヤト! シーナ!」」」」」」
アイリや他の皆が隼人とシーナに声をかけた。
すると、隼人とシーナが振り向く。
「みんな、ありがとう! 何だか、急な展開で俺もビックリだけど、でも、みんなのおかげですげえ助かった。ありがとう!」
と、隼人が皆に向けて叫んだ。
「みんな、ごめんね! ちゃんと話ができなくて!……あと、アイリ!」
「えっ?!」
アイリがシーナの呼びかけにビックリした反応をする。
「アイリ、本当にありがとう! あなたがいなかったら、こんなにも多くの人の助けを得られることはできなかった! 少し、離れ離れになっちゃうけど、また、必ず、すべてが終わったら会いに行くから!」
「シ、シーナ!…………」
アイリは、シーナに言葉をかけようとしたが、涙が先に出てしまい、出そうとした言葉を一瞬、殺される。しかし、改めて大きく息を吸って……叫ぶ。
「ぜ、絶対だからね、シーナ! 絶対に会いに来てよ! 約束だぞっ!」
「……うん」
シーナは、アイリの言葉に小さく笑顔で頷いた。
アイリは、そう叫ぶと同時に泣き崩れた。
「ハ、ハヤト……!」
「!?……フ、フレンダ」
隼人に声を掛けたフレンダは、もうすでに泣いていた。
「わ、わたくしは……絶対、あなたに負けないくらいの特別招待生となって……側近魔法士になります。だ、だから、その時は、セントリア王国に来なさい! 絶対ですよ! こ、これは…………命令です!」
「フレンダ…………うん、わかった」
そして、今度はヴィクトリア・クライフィールドが声をかける。
「ハヤト・ニノミヤ……お前は男だが、わたしはお前を少し見直したぞ。今度、ここに来るときは、一度、立会いしてもらうぞ」
「え、えええ! そ、そんな生徒会長……!」
「……待ってるぞ」
ヴィクトリア・クライフィールドが笑顔で呟く。
「!?……は、はい!」
「あと、シーナ君! 君は、いつでも歓迎する。必ず戻って来るんだぞ!」
「は、はい! 生徒会長、ありがとうございます!」
「うむ」
シーナは、ヴィクトリア・クライフィールドに深く頭を下げた。
「ハヤト……」
「ジュ、ジュリア……」
ジュリアが隼人に声をかける。
「お主は、まだ、わらわの恋人だ。道中の浮気はならんぞ?」
「え、ええ! それ、まだ続いているんですか?」
「当たり前だ。だから、旅が終わったら、必ず、ここに戻ってこい。そしたら、すぐに……結婚じゃ!」
そう言うと、ジュリアが隼人に思いっきり、抱きついた。
「「「「「ああああああああーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」
一斉に皆がジュリアを攻め立てる。
「ちょ、ちょ、ちょっとーーー! ジュリア様、抜けがけズルイです!」
「ジュリア様、それはいくらなんでも反則です!」
すると、皆も一斉に隼人とシーナに抱きついた。
泣く者。涙を堪える者。
皆が思い思いの『想い』を、隼人とシーナにぶつけた。
そうして、一通りして……、
「じゃあ、行くわ、みんな……」
「みんな、ありがとう……じゃあね」
隼人とシーナが皆に最後の言葉を送ると、
「……では、行きましょう、隼人、シーナ」
「「はい!」」
そうして、三人は扉の向こうへと消えていった。
「そ、そんな……急すぎるよ、シーナ、隼人」
「ほ、本当です。どうして……」
アイリやフレンダのその言葉は、周りの皆もまた同じ気持ちでいっぱいだった。
「……大丈夫ですよ、みなさん」
「「「「「リ、リサ様……?」」」」」
リサが皆に声を掛ける。
「わたくしの能力……『天啓』が告げてます。二人は必ず、ここに、このセントリア王国にまた帰ってきます」
「「「「「リ、リサ様!」」」」」
「だから、二人が帰ってくるまで、セントリア王国再建と学校再建に全力を注ぎましょう! わたしたちが今、やるべきことはそれだけです。そうして、その先に、また、二人との出会いが必ずあります! だから、皆さん、一緒に頑張りましょう!」
「「「「「は、はい!」」」」」
「さあ、皆さん、笑ってください! 笑顔で、王国民の声援に応えて下さい! 再建は……ここから始まります!」
「「「「「はい!!!!」」」」」
リサを先頭に皆がベランダに戻り、多くの歓声に全力で応えていた。
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「隼人、シーナ……」
「「な、何ですか?」」
皆と別れた隼人、シーナ、エックハルト・シュナイデンの三人は、セントラル・パレスの『隠し通路』を使って、すでにセントリア王国の敷地から離れた場所に立っていた。
「これからは、『闇属性の魔法士』がどんどん現れます。かなりの強敵です。なので……腹を括ってください」
「わ、わかってるよ……わかってるけど、あ、あんまり、怖がらすなよ」
「そ、そうよ、エックハルト……『メモ帳』が役に立たなくなったわたしはもう何が何だかわからないんだから……」
隼人とシーナがエックハルト・シュナイデンの言葉に愚痴をこぼす。
「はあ……まあ、それもそうですね。どうせ、やるしかないですからね」
と、エックハルト・シュナイデンがため息をつきながら答える。
「それにしても、お兄ちゃん……じゃなくて、隼人!」
「な、何だよ、シーナ」
「あんた、後半、ハーレムモードに移行したら、まー鼻の下伸ばしまくってたわね!」
「なっ?!……の、伸ばしてねーよ!」
「うそおっしゃい! ジュリアの『幼女アタック』にタジタジしてたじゃないの! この変態!」
「へ、変態ちゃうわー!」
「『変態ちゃうわー』って……何、あせって変な言い方になってんのよ?! やっぱり変態だ……」
ジト目で見つめるシーナ。
「なっ?!……ち、違うっていってんだろうーーーー!」
「いえ、シーナの言うとおりです。隼人は『ロリ変態』です。その証拠に、わたしがこんな『容貌』になったのも、隼人の性癖が原因ですから……」
「わー、わー、わー!!! お前は少し黙ってろ! エックハルト!」
「やっぱりそうだったんだー! はあ、マジ幻滅だわ……隼人」
「お、おい! そんな顔でマジ幻滅すんなよ、シーナ……!」
「あ、ごめん。話しかけないでくれる?『隼人ロリ変態菌』がうつるから……」
「シ、シーナ!? てめえーー!!!」
「えっ……そうなんですか? それって、やっぱり『空気感染』するんですか? じゃあ、隼人……わたしにも話しかけないでください」
「エ、エックハルト……お、お前まで……」
ガックシ肩を落とす隼人。
そんな隼人を見て、笑うシーナとエックハルト・シュナイデン。
こんな調子で、三人の旅は、さらに続いていくのでした。
『アナザーワールド』――。
なぜ、俺は『記憶を失って、ここに転生する必要があったのか』?
なぜ、『闇属性の魔法士』が『以前の神』と関係があるのか?
なぜ、リサが『灰色のオーラ』を出現させることができたのか?
そもそも、『灰色のオーラ』とは一体……?
はっきり言って、俺には、まだ『謎だらけ』でしかない。
俺は、まだ何ひとつ、真実を知らない。
俺は、一体、どこへ向かっているのか……。
でも。
それでも、ひとつだけ、俺はこの世界で『大切なもの』ができた。
それは、この世界――アナザーワールドで出会った『仲間』だ。
俺は、この『仲間』たちのもとに、もう一度、帰ってくる。
そして、その時は、ちゃんと挨拶をして、この世界を去りたい。
それが、俺の今の『願い』だ。
俺は、その為にも死なないし、絶対に目的を達成する。
それと、シーナと一緒に、このセントリア王国に戻ってくる。
また、絶対に戻ってくるからな、みんな!
第一部 完。
「更新あとがき」
おはようございます。
新年、明けましておめでとうございます、
mitsuzoです。
更新しました~。
2014年での『第一部完結』は叶いませんでしたが、何とか、2015年一発目で『第一部完結』の目的を達成することができました。
初めての『1年間の連載』という経験は、ボクにとって、いろいろと気づかせてくれる経験でした。
『小説の難しさ』『連載の難しさ』『表現の難しさ』『設定の大事さ』『モチベーションの保ち方』……等、実際に書き続けないとわからないことばかりでした。
でも、そのおかげで逆に『小説を書く楽しさ』も知りましたので、本当に書き続けてよかったです。
2015年はこの話を続けるのか、新しく書くのかは、前にも書きましたが、はっきりとしていません。
一応、この「アナザーワールドのリメイク」をして、もう一度、書き直したいな~というのも少しあるかな~ww(あまりにも設定が自転車操業だったので)。
まあ、とにかく。
2015年も何かしらの『小説執筆活動』は続けるので、その時は、また、作品を読んでいただければ幸いです。
また、お会いましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




