第四章 【097】
【097】
ガーギル・アーチボルトを殴り飛ばしたのは、もちろん、この男……二ノ宮隼人。
『金色の戦士』となっている二ノ宮隼人であった。
「そ、それにしてもハヤト様……何ですか? その金色の髪は?」
「ああ、これですか? これは、俺が力を出す時の『変身』みたいなものです。」
「『変身』……ですか?」
「はい、まあ気にしないでください。……それよりもリサは、女王陛下は大丈夫なんですか?」
隼人は、ロマネが抱きかかえているリサの様子を窺う。
「は、はい、心配には及びません。リサ様は、今、少し気を失っているだけですので……」
「そ、そうですか。良かった~」
隼人はロマネからリサの無事を確認するとホッと胸を撫で下ろす。
「それにしてもハヤト様……」
「ん? 何?」
「お、お一人で来られたのですか?」
「いえ、違います。生徒会長や他の何人かの学校の生徒と、ジュリアや何人かの組合の方々と一緒に来ました。今ちょうど、街の中で交戦していると思いますが、もう心配ないですよ。何せ、圧倒的な差で敵を蹴散らしていましたから」
ニッコリと笑顔で答える隼人。
「ジュ、ジュリアとはまさか、ジュリア・フランヴィル総隊長ですか?」
「はい」
「お、おおおお……それは、何とも頼もしい」
「あと、生徒会長のヴィクトリア・クライフィールドもいますしね。もう最強ですよ、あの二人」
「お、おおお……」
「あと…………エックハルト・シュナイデンも一緒に来て戦っています」
「エ、エックハルト・シュナイデン!?」
ロマネが、驚嘆の顔を浮かべ、さらに問いかける。
「い、いるのですか? 今、ここに……エックハルト・シュナイデンが?!」
「はい、います。ただ……」
「? ただ……?」
「ただ……姿を見たらビックリするかもしれませんが、ハハ」
「? どういうことですか?」
ロマネが、隼人の答えにクエスチョンを浮かべる。
とは言え、隼人もどう説明すればいいのか、わからず困惑している」。
(い、いや、どう理解させろってんだよ。『おっさん』が今、『幼女』となって生き返っているなんて……)
「ま、まあ、それは、後で本人から直接聞いてください。ちょ、ちょっと複雑な事情がありますので……」
「? は、はあ……? わかりました」
後に、エックハルト・シュナイデンを見て驚くであろうロマネが容易に想像できた。
「さて……では、ロマネさん。これからみんなと合流しましょう」
「何を勝手に終わらせて……いる?」
「「!?」」
突然、二人に『黒い炎』が襲い掛かってきた。
隼人は、その『黒い炎』に特に動揺することなく、右腕で払いのけようとした。
すると――。
「!? 何っ?」
その『黒い炎』は弾け無くなるのではなく、払いのけようとした隼人の右手に絡みついてきた。
「ハ、ハヤト様……?!」
さらに、その『黒い炎』は隼人の右腕から全身へとどんどん拡がっていく。
隼人は、全身、『黒い炎』に包まれた。
「ふっふっふ、出て来ましたね、ハヤト・ニノミヤ。いや……………………二ノ宮隼人」
「?!」
ガーギル・アーチボルトの口から、自分の『本名』が出てきたことに驚く隼人。
「な、何だ? お前は?」
「……自己紹介がまだでしたね、失礼しました。わたしの名はガーギル・アーチボルト。『闇属性の魔法士』です」
「や、闇属性? そ、それって……?」
(た、たしか、授業では、存在が確認されていない『属性』だって……)
「わたしは『神様』からこの力を授けられました」
「?!……か、神様、だと!」
(ま、まさか、その神様って……)
「隼人様のお気づきのとおり…………『新しい神様』のことです」
「?! あ、新しい神様だと!」
「はい……」
隼人がガーギル・アーチボルトの言葉に困惑を隠しきれないでいた。
「お、お前の目的はなんだ……」
「目的……ですか? わたしの目的は……」
そう呟きながら、ガーギル・アーチボルトは隼人に深く頭を下げる。そして……、
「……二ノ宮隼人を『闇の王』として君臨させることです」
「なっ……?!」
すると、隼人に、両手を向けてガーギル・アーチボルトが叫んだ。
「洗脳侵食序の段!」
「!?」
ガーギル・アーチボルトが魔法を展開。隼人に纏わり付いていた『黒い炎』がベルトのようになり、隼人の顔以外の全身を締め付け出した。
「な、何だ、これは?!」
グググ……と、『黒い炎のベルト』はどんどん隼人を締め付けてくる。
「『洗脳侵食』……それは、闇属性特有の魔法。効果は、相手を『洗脳し、意のままに操る』というものです」
「なん……だと?!」
「隼人様ーーーーー!!!!!!」
ロマネが叫ぶ。
「わたしの目的は二つ。『この世界を征服すること』と、そして、『二ノ宮隼人を洗脳し、闇の王として君臨させること』です」
「せ、洗脳? や、闇の王……っ!」
「そうです。わたしは神から二ノ宮隼人、お前を闇の王として君臨させるよう命じられました。この『闇属性の力』を使って……」
「な、なぜ……俺を?」
「さあ、そこまでは知りません。別にそんなのには興味がありませんから。わたしが興味があるのはこの世界、アナザーワールドの支配……それだけです」
「ア……アナザーワールドの支配」
「そうです。わたしはこの世界の神となる。わたしをバカにし、排除したセントリア王国や側近魔法士の連中を殺して!」
「……」
「その為に、あなたのような『特別招待生』や、他の学校の生徒、そして、組合の連中も邪魔ですので、獣人族を洗脳し、襲わせたのです」
「!? あ、あれは……お前の仕業だったのか?」
「そうです。『組合実習』は、セントリアから学校の生徒と組合の連中がいなくなる……そのチャンスを見逃さない手はないでしょう」
「こ、この……野郎」
「第一次種族間戦争終結の為、命を投げ出した『英雄五傑』の一人、エックハルト・シュナイデン……奴を、利用する手筈だった。しかし……『以前の神』の干渉により、それは失敗に終わった」
「『以前の神』の干渉……?」
「そうだ。『以前の神』は、エックハルト・シュナイデンを俗世から離脱させ、森へと移し、そこで結界を展開させた。そのおかげで、俺たち『闇の者』からは察知されないようにし、二ノ宮隼人が訪れる今まで、隠れる生活を送ることとなったのだ」
ガーギル・アーチボルトがさらに続ける。
「そして、二ノ宮隼人がこのアナザーワールドに姿を現したのと同時に、『以前の神』が再度、エックハルト・シュナイデンと接触し、『今のような姿』に変わり、『管理者』としてアナザーワールドに顕現したのだ」
「?……今のような姿?」
ロマネが再度、首をひねる。
(あ、ロマネさん。すみません、その話はまた後でしますね)と、隼人は心の中でロマネに呟く。
「……その後、『新しい神』が『以前の神』を消滅させ、今に至るというわけです。そして、『新しい神』は、二ノ宮隼人、あなたを今度は『闇の王』と君臨させ、『神殺し』を計画したのです」
「か、神殺し……だと?」
「そうです。『以前の神』の抹殺です。それが、わたしたち『闇の者』や『新しい神』の目的です」
「……な、なるほど、そういうことだったわけね」
依然、『黒いベルト』は隼人を締め付けている。
「そういうことです。なので、あなたは、これからわたしの…………『操り人形』として生きていくので……!」
「全力でお断りします」
「!?」
隼人が、ガーギル・アーチボルトに言葉を返した瞬間、金色のオーラが一瞬で『黒い炎のベルト』を弾け飛ばした。
「!? な、何っ?!」
驚くガーギル・アーチボルト。
「何? じゃないよ。このくらいの魔法……神通具現化の前では」
「?! ディ、神通具現化……だとっ!? な、なぜ、お前が神通具現化を……?!」
「えっ? なぜって……知らなかったの? あんた……」
「わ、わたしは、そんな話……二ノ宮隼人が『神通具現化』を使うなんて聞いてないぞ! 『あの方』と同じ力を持つなんて……」
「あの方?…同じ力?」
その時――。
ドーーーーーン!!!!!
「「!?……」」
突如、空から『黒い雷』がガーギル・アーチボルトを貫いた。
「…………」
ガーギル・アーチボルトは、一瞬で、その場で黒炭と化した。
≪ガーギル・アーチボルト……しゃべり過ぎだ≫
「!? だ、誰だっ!」
突然、空?……から『声』が響き渡る。
その『声』は、低く、不快感や違和感、嫌悪感や憎悪感といった『負の感情』を喚起させるような、ずっと聞いていると『頭がおかしく』なりそうな……そんな『声』だった。
≪この世界では『初めまして』……だな、二ノ宮隼人。わたしが『新しい神』だ≫
「!? この世界……?!」
≪そうだ。そして、『今のお前』では、まだわからないだろうが、わたしはお前を…………以前から知っている≫
「えっ……?!」
≪しかも……地球にいた時代からな≫
「な、何っ……!?」
隼人が目を見開き、驚く。
≪ふふ……まあ、よい。楽しみはこれからだ、二ノ宮隼人よ。とりあえず、ここは引かせていただくとしよう。また、すぐに会うがな……≫
「お、おい! ま、待てよ……! 俺はお前に聞きたいことがまだ……!」
≪まあ、そう焦るな、二ノ宮隼人…………………『ゲーム』はこれからだ≫
「ゲ、ゲーム……?!」
≪……さらばだ≫
その『言葉』と同時に、あの『禍々しい声』が完全に消えた。
「な、何だよ、今の……? どうなってんだよ、一体っ!」
俺は、しばらく、何もできず、その場で立ち尽くしていた。
「更新あとがき」
おはようございます。
いよいよ2014年も終わりますね、
mitsuzoです。
更新しました~。
これが、2014年最期の更新となります。
去年の12月25日から始まったこの「アナザーワールドへようこそっ!」も、1年を迎えました。
正直、ここまで続けられるとは思いませんでした。
2015年は一旦、この「アナザーワールドへようこそっ!」は第一部を終わらせて、その後、また続きを書くか、新しいのを書くのかは未定です。
でも、何かしらは書きたいと思います。
読んでいただいた皆さん、ありがとうございました。
また2015年もよろしくお願いします。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




