第四章 【096】
【096】
「ふふふ……そろそろですよ、リサ様?」
不適な笑いを浮かべながら、ガーギル・アーチボルトが呟く。
『千ノ蟲』は、リサとロマネの『虹色の膜』をどんどん喰い潰していく。
「リ、リサ様ーーーー!!!!」
ロマネは、何とか身体を起き上がらせ、立ち上がる。
「ふん、ロマネよ……貴様、他人の事を心配している余裕があるのか?」
「何……?」
「お前が、さっき放った『領域防御レベル10』……咄嗟の判断としては良かっただろう……が、しかし。お前は、そのおかげで、かなりの魔法力を消耗。立ち上がれないのは先ほどの『黒い炎』のダメージではなく、魔法力の消耗……だろ?」
「……くっ!」
(……隠せぬか)
「おいおい、そんな誤魔化しが通用すると思うのか? あまり、人を舐めるのもいい加減にしろ」
言葉とは裏腹に、ガーギル・アーチボルトは、ロマネを見下しながら、ケタケタと下品に笑っている。
「まあいい。とりあえず、ロマネよ、ひとつ言えることはだな…………お前らは詰んだ! ということだ。ギャハハハハ……!!!!」
「き、貴様~~……!!!!!」
ロマネは、怒りを露わにして震えていた。しかし、心とは裏腹に身体は言うことを聞かない。
「ち・な・み・に! この『マッドワーム』……こいつを消滅させるには、少なくとも『魔法力レベル15』は必要だぞ? 仮に、貴様が何とか立ち上がって攻撃したとしても、今のお前では、無・理! だ。ヒャヒャヒャ……!」
「レ、レベル15……」
ロマネが愕然とする。
ちなみに、『魔法力レベル15』というのは、『側近魔法士』の手前のランクにいる『上級魔法士レベル』の魔法力となる。もちろん、ロマネは『側近魔法士』で、しかも『室長レベルなので、本来なら、それ以上のレベルの魔法力を持っている。だが、しかし、現状、今のロマネは、魔法力がかなり減少し、枯渇する手前であった。理由は、年齢による体力的なものであり、また、ここまで連続で、かなりの魔法力を必要とする攻撃や防御を展開していたこともその要因であった。
「……くっ!」
ロマネは、力無く、再度、膝を突いた。
「……折れたか。ふふふ……ついに、ついに、あの『側近魔法士室長のロマネ・フランジュ』を屈させた! いいぞ……最高に良い気分だ!!!!!!」
その時――。
「大丈夫よ、ロマネ……」
リサがそっと呟いた。
「ああーん?」
「!?……リ、リサ様?」
見ると、先ほどまで、膝を抱え、怯えていたリサが、ロマネとガーギル・アーチボルトに身体を向け、凛とした態度で立っていた。
「わたくしはリサ・クイーン・セントリア。このセントリア王国の女王。必ず、ロマネを助けてあげます」
「リ……リサ……様?」
その言葉は、優しく、かつ威厳に満ちた声でロマネに呟き、そして、ガーギル・アーチボルトに向けて言葉を放つ。さっきまで怯えていたリサとは、全くの別人のようだった。
「……恐怖の余り、頭がおかしくなったのか?」
ガーギル・アーチボルトは、そう言って首をひねる。
実際、リサの様子は少しおかしかった。
普段の輝く『青色』の瞳は『灰色』に変わり、遠くを見るような目で二人を見ていた。
「リ、リサ様に一体、何が?」
リサは、さらに言葉を続ける。
「ガーギル・アーチボルトよ、言ったはずです。わたくしは、あなたのような……平気で人を踏みにじるような相手には絶対に負けない、と」
「ふふ……そうですか。では、どうやって反撃をするのですか? 口だけなら、誰だって言えま……」
「こうやって」
ボッ!
リサがそう呟いた瞬間――『灰色のオーラ』が全身から突如噴出し、一帯を『灰色のオーラ』で埋め尽くした。
「こ、この光は……! ま、まさか! な、なぜ、この小娘が……!?」
さっきまで、余裕を見せていたガーギル・アーチボルトが一転、激しく動揺した。
リサの『灰色のオーラ』が収まると、リサやロマネに張り付いていたマッドワームが全て消滅していた……また、それと同時にリサはその場で気を失い、膝からがくっと倒れる。
「リ、リサ様ーーーーーーー!!!!!」
ロマネが、リサの横に咄嗟に駆け寄った。
ガーギル・アーチボルトは、リサに駆け寄るロマネに一切、目もくれず、一人呟く。
「ま、間違いない、今の『灰色の光』は『あの方と同じ光』……」
ガーギル・アーチボルトの身体が少し震える。
「し、しかしっ! そんなわけはない! それは何かの間違いだ! わ、わたしは認めないぞ!」
「……?」
ガーギル・アーチボルトが一人叫ぶ様を、リサを抱えるロマネが様子を見ていた。
(『あの方の同じ光』? 何のことじゃ?)
「ま、まったく! お前らは本当に目障りだ。いちいち癇に障る! もういい……もうこれで遊びは終わりだ、ロマネよ」
そう言うと、ガーギル・アーチボルトは再び、『黒いオーラ』を漲らせ、魔法力を上昇させる。
「特に、この小娘は、絶対に生かすわけにはいかない。ロマネ等、もはや、どうでも良い。二人とも姿形を消滅させてやる」
「……くっ?!」
ロマネが懐から『魔法符』を取り出す。
「無駄だ、ロマネ。お前のその残りの魔法力では頑張ってもせいぜい、『レベル10程度の領域防御や術者防御』しか発動できん。今、わたしが繰り出すものは、『レベル20以上の領域防御』じゃないと…………防ぎきれん」
「……」
ロマネは一瞬、沈黙し、そして……、
「リ……領域防御レベル10!」
ロマネは再び領域防御を発動。『虹色の膜』が再び、ロマネとリサを包む。
「……ふん。まあよい。好きにするが良い。どうせ、結果は変わらぬが、な」
そう、ガーギル・アーチボルトは淡々と語りながら、『黒いエネルギー』がどんどん集まる手のひらを二人に向けていた。
「これで最期です。さらばだ、ロマネ、リサ様……」
「…………」
『黒いエネルギー』が『直径5メートル大』まで膨れ上がる。
「存在消滅!」
「最期はお前だ」
バキッ!!!!!!!
「ぐはああああああ!!!!!!!!」
ガーギル・アーチボルトに突然、横から『金色に光る拳』で殴られ、おもいっきり、横の壁に吹き飛ばされた。
その『金色の拳』の衝撃は、ガーギル・アーチボルト以外の周囲にも飛び、その瓦礫の雨はロマネやリサのほうにも飛散したが、ロマネが先ほど張った『領域防御』で保護されていたので、瓦礫がロマネやリサに当たることはなかった。
「ロマネさん、ボクのこと気づいてくれていたんですね、さすがです!」
「も、もちろんです。姿形が変わっていても、わたしはすぐにわかりましたよ?……………………ハヤト様」
今、ガーギル・アーチボルトを殴って吹っ飛ばした『金色の拳』は隼人だった。
「すみません、遅れました。もう大丈夫です!」
隼人は、笑顔でロマネにそう力強く言い放つ。
「更新あとがき」
おはようございます。
年末休み入りました。皆様はどうですか?
mitsuzoです。
更新しました~。
え~……、
いろいろとこれからのスケジュールを考察した結果……、
残り2日で「第一部完結」は無理であることが判明しましたww
だいたい、その確率は「90%以上」ww
もちろん、書けるところまでは書きますが、実現できない可能性が高いです。
自分の中で、『絶対に年内までに第一部完結させる!』という決心が弱かったことを悔やみますが、でも、だからと言って、無理やり書くのも違うなと思ったので。
て言うより、ただの自己管理が出来ていないだけのことなんですけどねww
ただ、まあ、どんなに遅くても来月には『第一部』は完結します。
それは、断言します。
一応、年内までに書けるだけのことは書くので、お付き合いの程よろしくお願いします。
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




