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アナザーワールドへようこそっ!  作者: mitsuzo
第四章「夏期(サマーシーズン)へようこそっ!」 【069】
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第四章  【095】




  【095】




「久しいな……ロマネ・フランジュ」


 その『黒い渦』から、ガーギル・アーチボルトが出現した。


「その顔……ガーギル、お前、何があった?」

「言ったろ? 私は、『神』から力を授かり、伝説の『闇属性の魔法士』となった、と」


 ガーギル・アーチボルトのその表情は、人間離れしたふてぶてさを醸し出していた。


「『闇属性の魔法士』……これまでの文献の中には、その存在の可能性を示唆する話や、物的証拠もあったが、よもや、実際の『使い手』が存在するとは、な」

「これこそが、わたしが特別な存在……世界を統べる存在として『神』から認められたという証拠だ、ロマネよ」

「ふん。お前は、相変わらずだな、ガーギル」

「何?」

「お前の、その『特別』を求める性格は、側近魔法士ボディーガード時代と変わらないと言っている」

「それの何が悪い?」

「その思い自体は、別に悪いとは思わん。ただ、その『求める欲』が強い余り、他人を犠牲にしたり、傷つけたりするところが相変わらずだし、残念だと言っておるのじゃ」

「ふん。えらそーに……説教か?」

「ああ、説教だ。欲に溺れて挙句、こんな『負の力』を手に入れ、己の欲のみで、多くの人間を傷つけおって……そのお前に授けた『神』とやらは『神』ではない。ただの……『邪悪な何か』だ」


 ロマネが強い口調で、ガーギル・アーチボルトに言い放つ。


「ふん。『神』と思うか、『邪悪な何か』と思うかは人それぞれ……お前にとやかく言われる筋合いはない」

「なるほど、まあ、それは一理あるな。では、わたしはわたしが信じる『信念』に従って……お前を葬る!」

「やってみろ」


 ロマネは、懐から『魔法符カード』を取り出す。


火炎フレイムレベル7!」


 ロマネの手のひらから巨大の火の塊が出現し、ガーギル・アーチボルトを襲う。


「……吸収アブソーヴ序の段!」


 ガーギル・アーチボルトがそう唱えるやいなや、ガーギルの正面に先ほどの『黒い渦』が現れ、勢いよく襲ってきた巨大の炎をスーッと音もなく、軽々と吸収した。


「な、何っ!?」


 ロマネは、目の前の光景に唖然とした。


(い、今のはレベル7の火炎フレイムじゃぞ? それをいとも簡単に吸収など、以前のこいつ(ガーギル)であれば防ぐのがやっとのはず……)


「ふふ……何を驚いている? この程度の火炎フレイムなぞ、取るに足らん」

「くっ……」

「ロマネよ、お主がもし、以前のわたしをイメージして攻撃しているのであれば……死ぬぞ?」

「?!」

黒炎乱舞ダーク・フレイム・ダンシング序の段!」


 すると、黒い渦の後ろに立つロマネの身体全身から「黒い炎」が弾け飛び、ロマネ・フランジュ向けて襲ってきた。


「くっ! 術者防御(セルフガード)レベル7!」


魔法符詠唱カード・アリア」により、再度、ロマネの目の前に虹色の膜が展開される…………が。


「ぐはぁ……!?」


 ロマネを保護する虹色の膜は、「黒い炎」を完全には吸収することができず、炎に包まれることはなかったものの、大きな衝撃を身体に受けた。


 そして……膝をつくロマネ。


「ロマネーーッ!?」


 そんな、ダメージを受け、膝を突くロマネの肩にリサが飛びつき、叫ぶ。


「ロマネ! もう無理しないで! ここからはわたしが何とかするから!」

「リ、リサ……様?」


 驚きの表情を浮かべるロマネ。


「わたしだって、少しくらい魔法は使えます! それに、何より…………わたしはこの国の王です!」

「……?!」

「国を守る……それが王のすべてです!」


 そう言うと、リサは腰を上げ、ロマネの前に…………立った。


「……さあ、ガーギル・アーチボルト! 今度は、わたくし、セントリア王国、リサ・クイーン・セントリア女王陛下がお相手です!」


 ロマネの前に立ち、ガーギル・アーチボルトに向けて放つその姿は、神々しさに満ち溢れていた…………が、その手、足、全身は震えていた。


「ふっふっふ……震えてなお、前に立つ。なるほど、勇ましいですな、女王陛下。しかし……」


 ガーギル・アーチボルトの『禍々しい黒いオーラ』が全身から溢れ出してきた。


「わたしは……そういう『偽善』が嫌いなんですよ?」

「……くっ!?」


 リサに向けて言い放つガーギル・アーチボルトのその顔は、さっきよりも一層、凶悪に……狂悪に満ちた表情をして、リサを威圧してきた。


「いいでしょう……あなたのその言葉、試させてもらいますよ?」


 ガーギル・アーチボルトの『禍々しい黒いオーラ』がさらに膨れ上がる。それは、同時に、ガーギル・アーチボルトの魔法力の上昇を意味していた。


「ま、まずい!? い、今まで、とは、比べ物にもならな、いくらいの……魔法力。リ、リサ様……お逃げ、くだ、さい!」


 ロマネは、必死に立ち上がろうとしたが、思ってた以上にガーギル・アーチボルトの『黒い炎』の衝撃を受けており、身体の自由を奪われていた。


「わ、わたしは……負けません! あなたのような、平気で人を踏みにじるような相手には…………絶対っ!」

「リ、リサ……様……」

「ふっふっふ……あなたのその『偽善的信念』をへし折って差し上げましょう。すぐには殺しません。ジワジワと、ゆっくりと、苦しんでいただきます。そして、あなたがわたしに許しを乞う姿を……見せていただきましょう!」


 そう言うと、ガーギル・アーチボルトが右の手のひらを天にかざし、叫ぶ。


天界千蟲サウザンド・マッド・ワーム序の段!」


 ガーギル・アーチボルトの手のひらから天に黒い光が一閃。すると上空でパーンと破裂し、『黒い雨粒のようなもの』が降ってきた。


「な、何……?」


 リサが空を見上げながら、近づいてくる『黒い雨粒のようなもの』を確認していた。


「?!……ま、まずい!!」


 ロマネが、『何か』に気づき、咄嗟に懐から2枚の魔法符カードを取り出し、自分とリサに向けて『魔法符詠唱カード・アリア』を放つ。


領域防御リージョンガードレ、レベル……10!」


 すると、ロマネ自身とリサの全身が、虹色の膜に覆われた。


「あ、ありがとう、ロマ………………きゃあああああああああ!!!!!!」


 虹色の膜が、リサの全身を覆い尽くした瞬間、上から…………『黒い蟲』が大量に降ってきた。


 まるで『黒い雨粒』のように。


 一瞬。ロマネが放った『領域防御リージョンガード』が早かった為、二人は『黒い蟲』の直撃を免れていた。しかし……、


「ふふふ……さすがだな、ロマネ。あの一瞬で、その判断ができるとは。まあ、それはそれで一向に構わんがな」

「?……なんだ、と?」

「この『黒い蟲』は天界に住む『マッドワーム』という蟲でな。こいつらは何でも食う。肉でも魚でも人でも、そして…………魔法障壁でもな」

「な……何っ?!」

「こいつらの食欲は旺盛も旺盛……咄嗟に二人分の『領域防御リージョンガードレベル10』を放ったのはとりあえず正解だったが、いずれにしろ、そう長くは持たんだろう……くっくっく」


『千ノ蟲』がモゾモゾと蠢き、二人を包む虹色の膜を侵食していく。


「い、嫌……」


 リサは、真っ青の顔で膝を抱え座り込み、ただただ怯えていた。


「リ、リサ様……」


 苦悶の表情を浮かべるロマネだったが、身体が言うことをきかない。


「さあ、見せてもらいましょうか、リサ様? あなた様の『偽善的信念』を」


 リサの目の前に立ったガーギル・アーチボルトが、狂悪な表情を歪めて、笑みを作り、見下ろす。


『千ノ蟲』が、リサを守る虹色の膜を猛烈な勢いで食いつぶしていた。





  「更新あとがき」




おはようございます。


気づいたら、もう年末。早~い、


mitsuzoです。



更新しました~。



更新が大分、遅れてしまいました~。


これは、正直、年内での『第一部完結』は難しいかも。


展開的にはあと少しではあるのですが……う~ん、どうしよう。


まあ、やれるだけのことをやりますので、どうぞ、よろしくお願いします。



というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)

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