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蝶を飼う  作者: 鮎川 了
第三章 闇喰う闇
16/21

父の面影

◇





 家へ帰り、両親の部屋を調べた。

 あんな写真を取っておくぐらいだから、他に何か無いかと思ったのだ。  段ボールに、父の古い手帳があったが、書いてあるのは仕事や会社の事ばかりで、あの写真に関係すると思われる様な事は書いていない。

 駄目元でアルバムも見たが、まさか母の目につく物に昔の恋人の写真など貼っておく訳が無い。

 一番古いアルバムの一番最初の頁には両親の結婚式の写真。その次の頁には新婚旅行などの写真、そして、俺が赤ん坊の頃の写真が貼ってある。  

 笑顔で寄り添う父と母の間に入って、今の俺からは想像も出来ないような、愛らしい赤ん坊が笑っている。

 「幸せそうだな」

 誰も居ない座敷で、そんな事を語りかけた。

 写真の中の、赤ん坊の自分に。


 何も収穫が無いまま、両親の部屋を片付け、自分の部屋に行った。

 どこから入って来たのだろう?蛾が、電灯の傘に当たって耳障りな音を立てている。

 鱗粉や埃が落ちて来そうで不快だ。

 そう思いながらも、じっと蛾の様子を見ていた。

 膨らんだ蛾の腹を見て、あれを食ったらどんな味が……と、つい想像し、身震いする。

 おかしな女に使われているとだんだん自分もおかしくなる様な気がする。

 もう寝よう。

 そう思ってタオルケットを腹に掛け、目を閉じるた。

 幸せだった赤ん坊の頃の夢でも見よう。

 そう思った途端、身体中に鳥肌が立った。

 何故、今まで気が付かなかったのだろう?

 否、何故今更気付いてしまったのだろう?

 心臓が高鳴る。

 どうか、思い違いであってくれ。


 久し振りに父の写真を見たせいか、温室で幼虫に食われていた男は俺の父だったような気がしてならない。

 顔など殆ど食われていたのに、何故かそんな考えが頭の中にこびりつく。










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