ぼくのおうちのしろいねこ
ちょっとまえに、ぼくはこのおうちにひっこしてきました。
おとうさんがろーんでかったんだそうです。ふるいおうちですが、ぼくたちだけのおうちです。
でも、そのおうちには、さきにねこがすんでました。
おっきくてまっしろなねこです。むかしからいるのよって、おとなりのおばさんがいいました。5さいのぼくよりずっととしうえみたいです。
ぼくのおとうさんもおかあさんもねこずきです。
おかあさんは「あらあら」といって、ねこにごはんをあげました。ねこはごはんをたべて、おかあさんのてをペロッとなめました。
おとうさんはねこに、すずのついたくびわをあげました。ぴんくのリボンがきにいったみたいで、ねこはおとなしくすずをつけられて「にゃあ」といいました。
ぼくもねこはすきです。
だけど、うちのねこは……まだすきじゃありません。
よるにトイレにいったとき、ぼくはみました。
うちのねこがげんかんのドアをあけて、またきちんとしめて、どこかにいったとこ。
あさになったらねこはかえってきてました。でもぼくは、そのあともずっとねこをかんさつしてました。ねこはなんかいか、おんなじようにでかけていきました。
おかしいです。だまってかってにどっかにいくなんて。
ねこはきょうもでかけるみたいです。
だからぼくは、あとをつけてみようとおもいます。
ぽけっとにぶきをしのばせて、ぼくはねこのあとをおいかけました。
よるなのでみちはまっくらです。ねこのしっぽだけがみえるので、ぼくはいっしょうけんめいしっぽをみてました。
そしたらきゅうに、ぱっとまわりがあかるくなりました。きれいなあおいひかりでした。
びっくりしてまわりをみると、ぼくはしらないひとたちにかこまれてました。
「おやおや。とうとうついてきてしまったねぇ、この子は」
まっしろなかみのおねえさんがいいました。あたまにねこのみみがついてました。うしろのほうで、ながいしっぽが2ほん、ゆらゆらゆれてます。
くびにつけたすずが、りん、となりました。
「ほほ……ひとの子がここへくるなど何年ぶりやら」
「僥倖僥倖。稀有の事は酒の肴よ」
まわりでほかのおにいさんやおねえさんがわらいます。みんなみみとしっぽをつけてます。
ここはこすぷれかいじょうなんでしょうか。
「生意気にこわがりもせぬわ。気に入ったぞえ」
「おねえさん、だれ? もしかしてうちのねこ?」
「……気付いてしまったか」
おねえさんがちかづいてきます。ぼくはりょうてでかおをはさまれました。
「そうでなくとも、こんな夜中に出歩く悪い子よなぁ。どうしてくれよう……このまま食らってしまおうか?」
このときはちょっとこわかったです。たべられるのはいやです。
だからぼくは、いそいでぶきをだしました。
「ババーン! またたびのこなー!!」
「そ、それは!」
みんなのめがぎらりとひかりました。
しろいおねえさんはぼくをはなして、てでくちをふきました。
「そ、それを我らにゆずってくれるのかえ? ならば今宵ばかりは見逃しても良いぞ」
「うん。あげるよ。おとなりのおばさんにもらったんだ。まだあるって」
「そうか。ならばそれを置いてゆけ」
「人ははよう帰るがよい。道はそれ、その先をまっすぐじゃ」
「しかしな少年。帰る前に約束じゃ」
しろいおねえさんがもういちど、ぼくをのぞきこんできました。
「ここで見たことは他言無用。誰にも言うてはならぬぞ。
言えば……食らうからな?」
おねえさんがゆびをさしてきたので、ぼくはあわててずぼんのまえをおさえました。
なんだかどきどきしました。
「そら。行け!」
ぼくはまたたびのふくろをおいてはしりだしました。
はしっていくうちに、いつのまにかぼくはぼくのおうちのまえまできていました。
あれからねこはでかけません。
ぼくがみててもしらんかおで、まどぎわのあったかいところでねています。
だけどときとき、ちらっとこっちをみることがあります。そうするとぼくはちょっとどきどきしてからだがあつくなります。
また、おとなりのおばさんにまたたびをもらってこようとおもいます。
そしたらねこは、またしろいおねえさんになって、ぼくとあそんでくれるんじゃないかな?
END
ぐうたらパーカーさん主催の短編企画「陽だまりノベルス」参加作品です。お題は「笑い重視の既存ホラー萌え化」でした☆