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Psychopath  作者: 東都湖 公太郎
ヴォルケイノ
38/45

7




 …

 ……

 ………


『定時になった。会議を始める』

『では第8009回、S4定例会議を開始します。議題や承認事項、提案事項のある者』

『ファーザー』

『ファーザー』

『A、発言を許可する』

『ユーロ圏で本日から明後日にかけて金融危機の兆し。介入に成功すれば2億の収益が見込めます』

『円か?』

『ドルです』

『素晴らしい。喜んで承認する』

『ありがとうございます』

『では次、F。発言を許可する』

『はい、我が同志として迎えるに値する人材が4名おります』

『資料の提示を許可する』

『ではF、皆にデータを。それと、人事について希望がある者はいるか』

『即戦力はウチに回して欲しいです。特に、このmenace8は』

『N、それはNS.FA-00115を指しているのですか?』

『menace8はそいつしかいませんが』

『彼女の配属については、第二諜報部の管轄を希望します』

『理解不能。何故二諜にこんな人材が要るのですか? 一晩中端末つついてるだけのカス部署には不要な人材かと思いますが』

『少し黙れN』

『しかしファーザー』

『二度、同じことを言わせるな』


 Nは萎縮したのか、それ以上口汚い発言することはなかった。


『珍しいな。普段おとなしいFがこんなわがままを言うとは』

『申し訳ございませんファーザー』

『良い。おまえはよく働いている。今までの功績を鑑みれば安いものだ。N、NS.FA-00115はFに譲ってやれ』

『はい。ですが次からは譲りませんよ。我が部署も兵隊が少ないのですから』

『ありがとうございます』

『しかし、menace8となるとスカウトが骨だぞ』

『ファーザー。それについて提案があります。スカウトにはNS.FA-06701を緊急出動させたいと思っています』

『ミストか。大事になるぞ』

『NS.FA-00115はつい先程まではmenace9……今は孤立し、精神的に弱ってはいる故のmenace8です。であるなら、早急に動ける上位ナンバーのミストをぶつけるのが上策かと』

『というのは建前で、本音はそろそろ奴にガス抜きをさせてやりたいだけだろう? 最近下位ナンバーの損失がやけに多いようだしな』

『当然です。奴が戯れに潰す下位ナンバーも我々にとっては貴重な戦力ですから』

『やっかいな同志を持ったものだな』

『はい。ですが使えます』

『一長一短であるのは人も機械も同じか。良し。ではNS.FA-06701の出動を許可しよう。すぐに行けるか?』

『1時間ほどで配置が完了します』

『30分で済ませろ。早いほうがいい』

『ファーザーの意のままに。A、いつものように事後処理は任せます』

『結局私に尻拭いをさせるのですか? 私にはユーロへの介入任務があるのですが』

『Aよ、無能は我がS4には必要無いぞ。並行進行しろ』

『御意。ファーザーの意のままに』

『うむ、良い返事だ。期待しているぞ』

『他に、議題や承認事項、提案事項のある者』


 ……

 ……

 ……


『では、これにて第8009回、S4定例会議を終了します。次回の定例会議は12時間後です』


 誰も窺い知ることが出来ない隔絶された電子世界の片隅で、わずか数秒間の間に行われた交信。

 この会話を機に、ユーロ圏とひとりの少女のもとに、大いなる厄災が振りかかることになる。 


 ………

 ……

 …







 高速道路を疾走する黒塗りの高級車。

 その後部座席に腰を沈めた亞璃紗は、鬱屈した面持ちで流れていく車外の景色を眺めている。


「セバスチャン」

「は」

「この車はどこへ向かっているのかしら?」

「傷心旅行には日本海が一番かと」

「別にわたくしは、傷ついてなどいませんわ」

「左様でございますか」

「……ですが、海も悪くありませんわね」

「は」


 剣家は全国各地に別荘を所有している。

 おそらくは、そのうちのひとつを目指しているのだろう。

 しかし、今の亞璃紗にとってはそんなことはどうでも良かった。


「海……どうせなら莉子とふたりっきりで行きたかったですわ」

「左様でございますか」


 あれだけこっぴどく莉子を叱責しておきながら、何故彼女はそんなことを言い出すのか。

 その理由は明白。

 彼女は未だに、想いを寄せているからである。

 未練がましくも、その心は今をもってしても別れを告げたはずの莉子に奪われたままだった。


「……だいたい、元はといえば莉子が悪いと思いませんこと?」

「そうですな」

「すぐ近くにこんなに魅力的なレディーがいるのにあっちへフラフラこっちへフラフラ……ふしだら極まりませんわ」

「左様でございますな」

「まったく……ああいう手合いは一度痛い目を見たほうがいいのですわ」

「仰る通りでございますな」

「だいたい、あんな寂しそうな顔をする前に言うべきことがあると思いませんこと? 今までの振る舞いを反省するなり、もっと必死に引き止めるなり……」

「その通りでございますな」

「まぁ、莉子が萎縮するような態度を取ってしまったわたくしにも非はあるかも知れませんけど? でもっ、それは致し方ないじゃありませんか。わたくしにだって鬱屈した想いがあるのですから」

「左様でございますな」

「……セバスチャン? 貴方、さっきから適当に聞き流してませんこと?」

「おや、バレてしまいましたか」

「はぁ……もういいですわ」


 まるで魂の半分を欠いたような空虚さで、亞璃紗は再び窓の外に視線を移す。

 しかし、そこには先程まで見えていた緑の山々は消え失せ、無機質な壁面ばかりが続いていた。

 オレンジ色の照明に照らされたトンネル、山脈を穿つ大穴の内部は、退屈極まりない。

 どこまで行っても壁。

 いつまで経っても壁。

 そして視界を遮る霧。

 ……霧?


「お嬢様」

「ええ……妙ですわね。トンネル内でこんなに濃い霧が出るなんて」

「は。念の為、速度は落としますが」

「ええ、そうして頂戴。貴方の腕を信頼していないわけではありませんけど、どうも嫌な感じが―――っ!? セバスチャンっ! 前っ!」


 そう言いかけた刹那、亞璃紗の視界に飛び込んできたのは、成人男性の腕ほどの大きさの虫。

 それが、亞璃紗の乗るリムジン目掛けて突っ込んできたのである。


「むっ!? ぐッ!」

「っ……! セバスチャン!」


 常軌を逸したサイズの巨大昆虫は、リムジンのフロントガラスに突撃し、たやすくそれをぶち破って見せた。

 虫がぶつかった衝撃で飛び散るガラス片に、セバスチャンは一瞬だけ動じるも、冷静なブレーキングで車を停止。

 後部座席の亞璃紗はガラスのシャワーと急制動にも眉一つ動かさず、その元凶を凛として見据え―――


「シッ!」


 緊急展開した精神武装ミリタリア・ブレイドで一閃。

 蚊とアブを掛け合わせたような不気味な虫は、いともたやすく両断され……消滅した。


「ふぅ……セバスチャン、怪我は?」

「は。顔を少し切りましたが、かすり傷です。それより、申し訳ございません。不覚ながら、なににぶつかったのかすら分かりませんでした」

「……いえ、気にしないでください。“あれ”は、普通の人には見えないものですから……」


 亞璃紗はそれだけ呟くと、ドアを開けて車外の空気に身を晒す。

 トンネル特有の、排ガスの臭いとじめっとした不快な湿度が纏わり付く。

 おまけに辺り一面に濃い霧が充満しており、10メートル先すらもまともに見えない。


「お嬢様」

「なんですの?」

「危険です。車内にお戻りください」

「ふふっ……剣の女がこれしきのことで臆していたら、おじい様に笑われますわ」

「では、お供させて頂きますぞ」

「ダメです。許しません」

「む。しかし……!」

「“あれ”はどうやら、わたくしに用があるみたいですから。貴方は後方で発煙筒を焚いて、これ以上車が来ないようになさい」

「……は。承知致しました」


 

 じっと目を凝らすと、薄ぼんやりとした光の点滅が見える。

 おそらく先行していた車両のハザードランプだろう。

 とりあえず亞璃紗は、その光を目標にして歩を進める。

 一歩一歩、慎重に。


「…………」


 20メートルほど進んだところで、車線を塞ぐようにしてひっくり返った乗用車に行き当たる。

 亞璃紗がおもむろに屈んで車内の様子を覗き込むと、そこには顔面をガラス片でぐちゃぐちゃにされたドライバーの亡骸があった。


「っ……!」


 あまりにもショッキングな様相に、亞璃紗は咄嗟に目を背ける。

 初めて目の当たりにする人間の死体に、胃酸が逆流しそうになるのを必死に堪える。

 この車の主は、速度を緩めずに霧中を突っ切ろうとしたところに例の虫がフロントガラスに直撃してこうなったのだろうか。

 もっとよく調べようと、再び車内を覗こうとしたその時。 


「た、助けてくれ……誰か……」

「……? どなたかいらっしゃるの?」


 そう遠くない距離から、弱々しい男の声がする。

 しかし、状況が状況。

 亞璃紗はブレイドを構えたまま、ゆっくりと声のほうへにじり寄る。


「はやく……助けて……」

「大丈夫ですか? どこかお怪我を……っ!?」


 亞璃紗の視界に飛び込んできたのは、車外に投げ出されてうつ伏せになった若い男性。

 そして、彼に群がる奇怪な虫の数々であった。

 齧っている。

 精神武装ミリタリアで生成された蟲達が、青年の背中からその精神を食っているのだ。


「背中が痛いんだ……なにかが、俺の背中を……ぐあァ!!」

「……悪趣味な精神武装ミリタリアですこと!」


 一喝。

 横薙ぎに、青年の背中を撫でるように刃を滑らせる亞璃紗。

 5~6匹はいた精神昆虫を一瞬にして殲滅する。


「い、痛い……背中が……あぁ、やめてくれ……」

「ご安心なさって。貴方の背中は無事です。どこも怪我してませんわ」

「痛い、痛いよ……なにかが、ずっと俺の背中を齧ってるんだ……取って、はやく取って……母さん……母さん……」

「…………」


 手遅れだった。

 この状態の人間を、亞璃紗は何人も見てきた。

 精神武装ミリタリアによって過度の精神ダメージを受けた人間は、心に深刻な傷を負う。

 そうなってしまうと、もう元へは戻れない。

 こうやって一生、死ぬまで、悪夢のような苦痛を味わい続けるのだ。


「酷いことを……どうしてこんな―――」

「やーっと見つけたぁ~♪」

「っ!?」


 場の雰囲気に似合わない、どこか軽い口調の声。

 霧に阻まれた視界から、その声の主が姿を現す。

 白のパーカーと扇情的なミニスカートを身に纏った少女が、横転した大型トレーラーを足蹴にしていた。

 少女の顔の上半分は妙なゴーグルに覆われて伺い知ることは出来ないが、おそらくは莉子や雪と同年代くらいであろうか。

 口元には棒キャンディーが垣間見えており、見るからに柄の悪そうな少女である。


「……貴方が、この虫の形をした精神武装ミリタリアの主ですの?」

「オールライトっ☆ その通りぃ~♪」


 少女はそう言いながら媚びたポーズを取る。


「それと……その口調と態度は、わたくしに喧嘩を売ってると受け取ってよろしいのかしら?」

「ん~? これはぁ、めいちゃんのキャラだからあんまり気にしないで欲しいっていうかぁ~」

「…………」


 どこかおどけたようなその態度に、亞璃紗のフラストレーションは蓄積していく。

 しかし、目の前の少女はどことなく不気味で、直感的に仕掛けることを躊躇っていた。


「……先程、遺体を見ました。貴方の精神武装ミリタリアに巻き込まれて死んだのでしょう。こちらの男性も、もうまともな生活は送れませんわ」

「ふ~ん、それがどうかしたのぉ?」

「貴方、彼らになにか恨みでもありますの?」

「ん~? ていうかぁ~? めいちゃんそんなこきたない男のことなんて知らないしぃ~♪」

「っ……! 知らないって……! ではどうしてこんな酷い仕打ちを! 罪もない一般人に対してこんな行いをして、なにも感じませんの!?」

「は? なにヒスっての? チョーウケるんだけどぉ~。向こうで死んでるのも、そこに転がってるのもぶっさい男じゃん? ていうか、汚い男には生きる権利なんて無いしぃ~♪ これ常識~! きゃはははっ!」

「なんですって……?」


 少女は笑顔で言い放つ。

 それは、莉子の太陽のように明るい笑顔でも、雪が莉子へ向ける月光のような淡い笑顔でもない。

 底の見えない泥沼……その奥底で蠢く混沌カオスのような、笑顔。


「それにぃ~……剣 亞璃紗? だっけ? アンタだって今まで何人も精神病院にぶち込んで来たじゃん? だったらめいちゃんと同類じゃん?」

「……? 貴方、どうしてわたくしの名前を?」

「は? めいちゃんなんでも知ってるしぃ~。アンタが両親に忌避されてることも、精神異能者サイコパスになってから暇つぶしのように他の精神異能者サイコパスに喧嘩を吹っかけてたことも……もちろん、アンタが片想いしてる一ノ瀬 莉子? とかいう子のこともね。ていうかアンタってレズなわけ? チョーウケるんだけど!」

「ふぅん……よほどわたくしに興味がお有りのようですわね」

「ん~? つーかぶっちゃけ、アンタに興味を持ってんのはS4の上層部だし。めいちゃんはただ命令されて来ただけだしぃ~」

「S4……?」

「はぁ? ひょっとしてS4を知らないの? うっわ、チョーウケる。ダッサ。それってアンタ人生の8割を損してるしぃ~! いい? S4ってのは、めいちゃん達みたいな精神異能者えらばれしものの為の素敵な組織って感じでチョーイケてるっていうかぁ~」


 S4……亞璃紗はその名を、脳内検索してみる。

 記憶の引き出しから、該当する名称を探す。

 巨大企業から汚れ仕事を請け負う荒事屋?

 勢力を広げつつある海外マフィア?

 それとも単なるカルト宗教?

 過激派のテロ組織?

 亞璃紗の知り得る限り、それらにはS4なんて名の付いた組織は存在しなかった。


「……今、選ばれし者の組織と言いましたわね? S4という組織には、貴方の他にも精神異能者サイコパスがいらっしゃるのかしら?」

「もっちろん! いっぱいいるよぉ~☆ めいちゃんみたいに強い奴から、雑魚っちぃ奴まで、たっくさんいるしぃ~♪」

「そう……そんな大勢の駒を所有しているS4さんが、このわたくしになにか御用がお有りですの?」

「用が無きゃmenace9のめいちゃんが、わざわざこんな汚らしい場所に出向いたりなんてしないっつーの。ていうかアンタさっきから質問多くない? チョーウザいんですけどぉ~」

「menace……9……?」


 またもや聞き覚えのない単語が少女の口から飛び出す。

 menace……menace……

 危険、脅威、厄介者という意味であろうか?

 おそらくは、組織内で用いられる隠語のひとつなのだと亞璃紗は解釈する。


「まぁいいや。とりあえず自己紹介しとくね? めいちゃんの名前は片霧かたぎり めい。剣 亞璃紗? だっけ? アンタを、S4の名の下にスカウトしに来たっていうかぁ~、まぁそんな感じ」

「……スカウト?」

「そ。スカウト。めいちゃん達と一緒に、この糞つまんないダッサ~い世界を、チョーイケてる面白おかしい精神異能者サイコパスが支配する、素敵な楽園にする手伝いをして欲しいってわけ。分かる?」

「ふふっ……」


 瞑の申し出に、亞璃紗は微笑する。

 これはスカウトなどという穏便なものではない。

 単なる脅しだ。

 精神異能者サイコパスの力を無差別に振るってその力を見せつけ、畳み掛けるように個人情報を暴露して組織の情報力をひけらかす。

 その上で『スカウト』と称してへりくだって見せて相手の自尊心を汲み、至極穏便に従わせる。

 この手法を考えた者は、それなりに交渉上手かも知れない。

 しかし相手が悪かった。

 そんな小手先のテクニックなど、亞璃紗はそれこそ物心がついた頃から飽きるほど見てきた。

 今更この程度の駆け引きを見せられても、幼稚園のお遊戯にも劣る。

 故に、彼女は笑ったのだ。 


「見くびらないでくださいます? わたくし……そんな低俗なお誘いに軽々しく乗るような尻軽女じゃなくってよ?」

「え? なになに? 断んの? ウケるー。ていうかなんで? 普通ここはOK出すとこじゃない? ていうかぶっちゃけノリ悪くない?」

「お生憎、わたくし……こういった下品で下衆な手管も、その品性の欠片もない喋り方も、それを放任しているS4とかいう組織も気に入りませんわ。第一わたくし―――」


 亞璃紗はブレイドを構えてその切っ先を瞑へと向ける。


「名前に“霧”が付く人間が……大っ嫌いですの」

「うっわ、なにそれ? ひょっとして元カレに霧山とかそんな感じの奴がいたとかぁ?」

「違います」

「え~? じゃあ好きな人を霧島って感じの名前の奴に取られたとかぁ?」

「……貴方には関係のないことです」

「はい図星ー! 図星ゲットぉ~♪ 今一瞬目ぇ逸らしたっしょ? はい大当たり~! 逆恨みとかチョーウケるんですけどー!」 

「……! いい加減お黙りなさい……! さもなくばその減らず口、二度と叩けないようにして差し上げますわよっ!?」

「ん~? なにそれ? もしかして……めいちゃんとサシでやろうっての?」

「……っ!」

「ま、元々めいちゃんのスカウト断ってきたら腕ずくで連れてくつもりだったけどさぁ~」

「…………」


 瞑も、亞璃紗に向き直って構える。

 その構えはどこからどう見ても素人のそれであるが、どことなく侮り難い雰囲気……オーラがあった。

 一歩踏み込んだら二度と抜け出すことが出来ない、そんな底なし沼のようなオーラに……亞璃紗は、気圧される。

 おかしい。

 今まで、どんな相手に対峙してもこんな感覚を覚えることはなかった。

 ……斬り込みたくない。

 身体が、精神が、拒絶反応を示している。 

 彼女……片霧 瞑には、“なにか”がある。

 それがなんなのかは、皆目見当が付かない。

 不気味……まるで、得体の知れない虫が蠢く紙袋に手を突っ込まされるような、不安感と恐怖感。

 しかし、そんなものに圧倒されるわけにはいかない。

 気持ちで負けるわけには……いかない!


「わたくしは、剣 亞璃紗っ! 誇り高き剣家の娘っ! わたくしのブレイドは……ッ! 何人をも寄せ付けないッ!」


 凛とした亞璃紗の眼差しに、大気が震える。

 空気すら身震いするナイフのような鋭利な殺意。

 しかし、そんな殺意をぶつけられても……暝はケロリとした顔で微笑むだけだった。


「なにそれぇ~。チョーウケるんだけどぉ~♪」


 瞑のひとを小馬鹿にしたようなその言葉に呼応するかのように、霧に覆われた先から発せられる無数の気配が蠢き出す。

 霧の中で一体なにが起こっているのか。

 それは誰にも分からない。

 そして……

 この日を境に、ひとりの少女の消息が……ぷっつりと途切れることになる。




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