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恋人or落語・横濱亭渚



僕は迷っている。来月から晴れて真打に昇進するというのにここを出て大都会東京に行くのがこわい。それだけではない、僕が一目惚れした恋人・ゆかりを置いていくのだ。横浜から東京は近いようで遠い。それは物理的な距離だけではなく気持ちも離れていきそうだ。

 この10年、ゆかりと支えあいながら共に過ごしてきた。二つ目に昇進したばかりの頃は大した収入も得られず、それでもゆかりは嫌な顔ひとつせず生活費や着物代を出してくれた。去年の夏からやっと僕の出番が増えてきて半分は僕が出している。だがここまでしてくれたゆかりを置いていきたくはない。

 一度「一緒に東京にこないか」と言ってみたが、彼女の仕事も山場を迎えているらしく「それどころじゃない」の一言で流されてしまった。

 落語を取ればゆかりを失う。ゆかりを取れば仕事を失い今までの10年が水の泡になる。

 お互いもう30歳になったので結婚ということも考えていたが、まだまだ安定していないし、僕の落語にゆかりが笑ってくれない。彼女が言うには「オチまでが長い」のだという。

 この一週間、未来のことばかり考えて寄席場ではうまく笑いを取れなかった。昨日などなかなかオチにたどり着かず15分で終わるものが30分もかかってしまい、後に出る出演者に嫌味を言われた。

 ゆっくり考えよう。東京に行っても会えないことはないのだ。少しは自立しないと人間としても一人前にはなれない。

 あぁ、やっぱり僕は気持ちにもこの話にもオチにたどり着かない。



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