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落としん坊・宮田



 僕はよく物を落とす。自覚はあるし気をつけているつもりだが手からするする抜けるのだ。物が逃げているのではないかとも思う。朝も、横浜駅のホームでカバンごと落とした。駅員さんに拾ってもらおうとしたら女の子を拾ってしまったけれど。

 今まで落としたもので一番高価なものはカメラだ。3年前に祖父が亡くなったときに遺品整理をしていたら金庫から出てきた60年モノだ。それを家に持って帰るときにタクシーの中に忘れてきてしまった。幸いタクシーのナンバーが携帯番号の下4ケタと同じだったために覚えていたので問い合わせて戻っては来たが、あのときは祖父に叱られるのではないかとドキドキした。

 なぜこんなにもモノを落としたりなくしたりするのだろうと考えるが原因がみつからないので生涯の悩みになりそうだ。ボーッとしてしまうのだろうか、どんなに重いものでも気付かないときがある。そんなことを考えている今も文庫本5冊とノートと写真がたくさん入ったカバンが肩からスルスル抜けて落ちた。まだ半日も経ってないのに2回目だ。

 今日は東京駅八重洲口から徒歩10分のところにある喫茶店で父と待ち合わせている。両親は僕が中学生になるころ離婚した。父は昔から落語好きで僕が幼い頃テープを一緒に聞いた記憶がある。最近はチケットをネットでしか取れないらしく、ネットはともかくパソコンにも弱い父に頼まれ月に一度チケットを取ってはここの喫茶店で渡してパフェをごちそうになる。この喫茶店は壁一面に空や海や黒人の子供の写真が貼ってある。店主のおじさんがカメラ好きのようだ。

 父が来る前にいつもチケット確認をしている。一度だけチケット袋に入ってなかったことがあるからだ。今日もいつも通りにサイフの一番奥から出す・・・ない・・・袋ごとない・・・なぜだ?サイフから出してないはずなのに。もしかしてという記憶が頭をよぎる。切符を買うときに千円札と一緒に出して落としてしまった・・・かもしれない。そうだ取れなかったことにしておこう。パフェはいらない。そして次からは気をつけよう。誰が拾うのだろう。拾ったところで行くのか?どうか落語好きな人に拾ってもらえますように。


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