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UFOキャッチャー・美雪

    

 毎朝、家を出てから学校に着くまで2時間かかる。就職のために選んだ専門学校は地元横浜から少し遠い東京の外れにあった。合格から入学までは「東京」という響きが格好良くて憧れと誇らしい気持ちがあったが最近ではそんなこともなくなり、生まれ育った横浜とそれほど変わりを感じなくなっていた。高校まで徒歩通学だった私にとって朝のラッシュの電車は辛かった。

 横浜駅の改札を抜けて階段を駆け上がる。ホームは電車から降りてきた人とその電車に乗る人でいっぱいになっている。次の電車に乗るために急ぐ。しかし、前からも後ろからも人がたくさん押し寄せてホームから落ちそうになる。いつも同じ状況になるので気をつけてはいるのだが、ふと油断したために人ごみに押された私は2m下の線路に落ちてしまった。

 周りにいたサラリーマンは自分たちが前に進むことに必死で気付いていない。線路とホームにはかなりの高さがあり、身長150センチもない小柄な私が自力で登るには無理がある。どうしようで頭がいっぱいになり声も出ない。ここで電車に轢かれて死ぬのかと思った。

 そのとき、上からドスッという何かが落ちる鈍い音がした。と同時に「うわあ」という男の声がした。音がしたほうを見てみると声の主が落としたのだろう、白い布地のトートバッグからノートや文庫本が散乱していた。しばらくして頭上からUFOキャッチャーのアームのようなものがこちらをめがけて伸びてきた。UFOキャッチャーのアームはトートバッグではなく私の頭をつかんだ。私はぬいぐるみのように運ばれ、助けられた。「おめでとうございます!パフパフ!」




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