パート1
(1)皇学園高校、超自研部室
校門
看板「皇学園高校」
部室
表札「タノシイ超自然現象研究クラブ」
走ってくるノリコ、扉をあける。
ノリコ「ごめーん、おくれちゃった!」
部室で、
優雅にお茶を飲んでいる樹麗
その膝枕で眠っている麒麟
なんとんく本を読んでいる沙羅香
鉄アレイを両手にヒンズースクワットをしてる左馬子
左馬子「ノリコ、おっそ~いっ!」
ノリコ「ごめんてばぁ、左馬子」
樹麗「(周りを無視して)そろったわね。それじゃ、超自然現象研究クラブのミーティングを開始いたしましょう(麒麟を片手ではたく)」
麒麟、はたかれて目が覚め、欠伸する。
ノリコ「樹麗さん、今日の議題は何?」
樹麗、ぎろりとにらむ。
樹麗「ノリコ、今が何月か、知ってますわね」
ノリコ「え~と、十月ですね」
樹麗「十月って言うと、何があるかも御存じですわね」
ノリコ「はい、肉まんが美味しい季節ね」
左馬子「焼き芋も美味しくなるわ」
樹麗「そう、紅茶もまた一層美味しく…って、ちがうでしょ!学園祭のことを言ってるのですよ!」
ノリコ「あ、そういえばそうだったっけ!(と、舌を出す)」
樹麗「…(咳払い)さて、わたくしたち超自然現象研究クラブとしては、この学園祭で何を、何処で発表するか、早急に決めなければなりません」
ノリコ「当然、発表のテーマは超自然現象についてよね」
樹麗「もちろんです。」
沙羅香「不思議なこと、ですか‥‥‥」
麒麟「うちのミーちゃんが、いっぱいミーちゃんを生んだんですぅ」
ノリコ「単に子どもを生んだだけでしょ?」
左馬子「あれ?ミーちゃんて、雄じゃなかったっけ?」
一同「‥‥‥」
ノリコ「もしかして、クローン再生?」
左馬子「う、宇宙人のしわざ?」
ノリコ「あやしい!」
麒麟「あやしすぎるですぅ!」
樹麗「うそくさい…なんか、うそくさい…」
沙羅香「あのネコは雌よ。」
一同「‥‥‥」
左馬子「そういえば、うちの裏で、よく牛がいなくなるの。」
ノリコ「キャトル・ミューティレーション?」
左馬子「ん~ん、内蔵だけ残していなくなっちゃうの…」
ノリコ「逆・キャトル・ミューティレーション!」
麒麟「気色悪いはなしですぅ!」
樹麗「うそくさい…うそくさすぎる…」
沙羅香「‥‥‥あんたの家のうらは解体場でしょ。だからよ。」
一同「‥‥‥」
ノリコ「はい部長!わたし、ミステリー・サークルの写真を撮りました(写真を出す)」
麒麟「えっ、どれどれ?」
左馬子「見せて見せて見せて!」
樹麗「ゴホン!」
一斉に樹麗に視線が集まる。
樹麗「部長であるわたくしがまず拝見します」
樹麗、写真を手にとって見るなり顔を引
きつらせる。
樹麗「な、何ですかこれは?」
ノリコ「はい、教頭先生の頭にできた、ミステリー・サークルでーす」
樹麗「ミステリー・サークルって、ノリコさん、あなた、これは…」
ノリコ「(ごそごそ捜しながら)それからこれは、苦労して隠し撮りした、イタリアからの留学生・シニョール=スフォルツァの、かくされた…」
麒麟「えっ、スツォルファって、あのド金髪美形外人のプレイボーイですかぁ…?」
左馬子「きゃーっ、見せて貸して触らして!」
樹麗、机に空手チョップ。静かになる。
樹麗「これはミステリー・サークルなどではなく、ただの円形脱毛症です!」
樹麗、ゼェ、ゼェ。
沙羅香「ところでさ…発表するのはいいけど、場所は決まってるのかしら?」
全員、顔を見合わせる。
樹麗「そうですわね、沙羅香さん。そのとうりです。まずは生徒会にかけ合って、場所を確保しなければ…」
(2)生徒会室
超自研、全員来ている。
委員たちの見ている前で、5人は生徒会庶務長に直談判。
奥の回転椅子に生徒会長。こちらに背を向けている。
庶務長「で、どこを希望するって?」
樹麗「(体育館の図面を指さし)ここです。」
庶務長「しかしだね、そこはいちばんめだつ場所で、もう茶道部が使うことになっているのだ。何処か別の場所にできないのか?」
ノリコ「とられちゃってるんだって」
左馬子「そりゃそーよ、一番いい場所だもん」
麒麟「いわゆる、檜舞台ですぅ」
前へずい、と出る沙羅香。
沙羅香「庶務長、御存知ないのですか?そこは、呪われた空間なのです」
庶務長「呪われた…空間?」
ぴくっと反応する生徒会長の背中。
はっと気が付いた全員が、それに便乗すしてまくしたてる。
ノリコ「そうなんですよ、超自然現象がおきるんです!」
麒麟「ゆーれいが出るって噂ですぅ!」
左馬子「ミステリーサークルも出るんです!」
庶務長「そ、そんなばかな…」
ノリコ「呪われた危険な場所なんですよ!」
麒麟「そこで出し物をすると、必ず不幸がおこるんですぅ!」
庶務長「いや、しかし…」
左馬子「実はあそこは、江戸時代に処刑場だったところで…」
ノリコ「UFOの着陸も目撃されてるし…」
庶務長「ちょっとまて、そんな話は聞いたことないぞ…」
麒麟「戦国時代の古戦場なんですぅ…」
左馬子「すでに15人の自殺者が出て…」
樹麗、片腕をあげて一同を黙らせる。
樹麗「そういう訳ですので、会長。この場所はわたくしたち超自然現象研究クラブが責任をもって調査いたします。だから、茶道部は外してください。」
庶務長「しかしだね、これは…」
樹麗、机を叩く。
樹麗「何か起こってからでは遅いのですよ! そうなったらあなたどう責任をとるおつもりですか!」
しどろもどろな庶務長。
奥で窓のほうを向いていた生徒会長が、後ろ姿のまま白扇をさっと振る。
生徒会長「庶務長、君の負けのようだな。このお嬢様がたにしたがいたまえ。」
ノリコ「さすが会長! 話がわかるぅ!」
庶務長「わ、わかった! 善処する、善処するから…」
(3)廊下、部室への帰り道
左馬子「あの時の庶務長の顔ったら、なかったね!」
沙羅香「…ところで部長、場所はこれでいいとして…何を発表するんです?」
ノリコ「それはやっぱり、ミステリー・サークルの写真を…」
樹麗「絶ーっ対に却下します!」
麒麟「でも、樹麗さぁん、学園祭はしあさってからですぅ」
沙羅香「やはり、ミステリー・サークルの写真しかありませんね。」
樹麗「何を言っているのですか、沙羅香さん! あんなまがい物では…」
沙羅香「いいえ、部長。本物の、ミステリーサークルの写真です。」
(4)体育館、夜中
時計の針が2時を指している。
五人が忍びこんでいる。
5人は声を立てず、茶色いチョークで静かに床に円を描き始める。
樹麗「(こもった声で)どこが本物のミステリー・サークルですか!」
沙羅香「(こもった声で)‥‥‥知らない人にとっては本物ですわ。」
(5)廊下、夜中
警備員のおじさんAが懐中電灯を持って見回っている。
(6)体育館、夜中
二重丸を描き終わったところで警備員のおじさんAが近づいてくることに気が付き、5人は
あわてて隠れる。
左馬子は入口の壁に張りつく。
ノリコが、舞台の幕に隠れようとしてつまづいてしまう
ノリコ「きゃあっ!」
警備員さんAが駆けつけてくる
警備員A「誰だっ!誰かいるのかっ?」
ライトが向けられ、幕の下から出たノリコの足が見えてしまう。
ノリコ「…うっふ~ん♪」
ノリコ、下半身だけ出したまま色っぽく足を動かす。
呆気にとられる警備員さんA。
その後ろから近づく樹麗。とつぜん紫の扇で警備員さんAをたたく。
樹麗「奥義、パープル・スラッシュ!」
警備員さんA、脳天を殴られて気を失う。
5人、出てくる。
麒麟「ひゃ~、まずすぎますですぅ!」
ノリコ「みつかっちゃったわぁ…。」
輝麗「この際、こうするしかありませんでしょ…?」
左馬子「だけど、これでは問題になるわ…」
沙羅香「何も心配は要りません。」
沙羅香に集まる視線。
沙羅香「だって、私たちはここにいなかったんだもの。これをやったのは宇宙人さんなのよ。」
(7)体育館、朝
気を失っている警備員Aが、手足を広げてミステリー・サークルのまんなかに転がっている。
集まるやじ馬たち。
(CF)