プロローグ:夢の中で
俺は今夢を見ているようだ。
最近はこの夢ばかりを見る。
『結べ…』
『魂の契約を…』
魂の…契約?…
『わが名は』
『アメシストドラゴン……レムなり……!』
その名を言い放った瞬間、水の中にいる気がした。暗く、あたりを見渡しても、続くのは闇。
(ここは海底か…?)
『進め』
そのような声が聞こえた気がした。俺はその声に導かれるようにして進む。
続くのは闇。不安と恐怖を象徴した混沌とした世界にも見えてくる。不思議とここはどこだろうという疑問は思い浮かばなかった。
何故だろうか、水の中なのに、なぜか暖かい、ぬくもりを感じる。
(俺は前ここに来たことでもあるのだろうか…)
そんな気もした。実際は一度も体験したことがないはずなのに、体験したことのあるように感じる…デジャヴって奴か。
俺は進む。ただ、ひたすら。
この闇の向こうには何があるのだろうか。
何があっても驚くことがないという自信があった。
前までの夢だと、ここで目が覚める。何か出てこないと、俺のモヤモヤも消えない。
すると…
だいぶ奥のほうにある、小さな光。
(あった…!)
その光は今にも消えそうであった。
急いで俺は駆ける。水の中を。
そして俺はその光を手にした。
刹那その光がすべてを飲み込む。
次にたっていたのは、白い世界の中。水の世界でも何でもない、ただ無限に続く白い世界。
俺の目の前には、巨大な石版が…あった。
そこには複雑な魔方陣が。
黒い石版には白い円があり、その中に3つの円がある。
その円にはスナイパーライフルのスコープのように中心に向かって4つの線があり、その中心に、
「Amethyst」
アメシスト…そう書かれてあった。
その石版に俺が手を触れると、一瞬でその石版は消えてしまった。
そして、またさらに声が。
『危機がせまる。危機が訪れる。忘れるな、この魔方陣を…』
次の瞬間
……目が覚めた。
(今回の夢は…なんだったんだ……?)
俺はそう思いながら時計を見る。
時刻は8時をさしていた。
ん?…8時…?…っ!やべぇ!
激しく遅刻の予感……ッ!
早急に支度をする。
歯を磨き、顔を洗い、朝飯は…パスだ!
何か、郵便物が着てるかもしれないので、ポストを覗く…
あった…なんだ?
『水道使用料金 3128円 九条 寛様』
「水道料金か…」
そんなことは今考えることじゃないと気づき、
制服を整え、寮を出る。
朝から約400mを猛ダッシュしなければならなくなった少年…九条寛。
なんとか学校には間に合ったのだが、人生を変える出来事がおこるなど、このときは知る由もなかった。
まさかこの後、最終定理と呼ばれる何かをめぐる、戦乱に巻き込まれるなど、思いもしなかった。