#4 そう呼んで。
「何かあったんだろうな」
そう言い、俺を見る、谷口。
「…何故俺を見る」
「いや…阿久津が何か変な事したのかなって…」
「…例えば?」
「……」
なんか嫌な予感。
「い、言わなくて良い。なんか『学校で言っても大丈夫かな…?』みたいな顔になってるし…!」
「さすが。俺の心の友だ!テレパシーだな?なっ!」
「テレパシー…って…」
「お前、たまに面白いこと言うな…」
*** +++ ***
「静音ちゃん!」
声のする方に目をやる。
と、金髪蒼眼の女子が此方に向かってくる。
「湯口先輩、何ですか?」
立ち止まって、返事を返す。
「あのね、静音ちゃんは、今年、生徒会立候補してくれるかなって…」
「生徒会…?」
「うん。ワタシは、静音ちゃんに後釜やってほしいんだ」
湯口 早百合先輩。
現生徒会長。クウォーター。
綺麗に整った身体、顔立ちは、西洋人形のような女性だ。
「あたしが…ですか?」
「うん。ワタシの知ってる後輩の中で、一番適任なコは、静音ちゃんだからお願いできないかな?」
フワフワとした金髪が揺れて、湯口先輩が頭を下げた。
「…か、考えてみます…」
視線が、あたしに集まってきているのがわかる。
湯口先輩は、人気者だからなぁ、と思う。
会話が聞こえていなかった人から見れば、あたしが先輩に何かしたとでも思って知るのかもしれない。
「そ、それでは…後日に…」
あたしが生徒会長。
それは重すぎるんじゃないかな、と思う。
あたしよりも、適任なのは…
*** +++ ***
「明梨、如何したんだ?」
「あ、阿久津君…何よ、いきなり…」
いきなり、声を掛けられた。
頭を掻いて、阿久津君が言う。
「その阿久津君っての止めてくれないかな…祐樹で良いって…」
「……」
「な、何だよその顔は…つか、静音は良くて俺はダメなんだ?」
「なんとなく」
「そ。じゃぁ、今日からちゃんと祐樹って呼べよ」