いつも通り・・・?
その言葉を聞いて、冷水を浴びせられた様な感覚に捕らわれた。
いつも通りの朝だった。
3人いつも通りの会話で…
「え、もしかして知らないの!?」
女子の一人が声を上げる。
「じゃぁ、阿久津君に直接聞いた方が良いのかな…?」
「いやいや、まずは谷口だよ」
「それじゃ、小野さん。ありがとう」
後には私だけが残される。
力が抜けて、壁に寄り掛かる。
「っ…」
廊下に響き渡るチャイムが、私を正気にさせた。
「いけない…授業に遅れちゃう…」
教室へ、急ぐ。
+++ *** +++
「小野はんが、珍しいですな」
社会の先生が、サラサラと髪を揺らしていう。
中本 景子先生。生粋の京都人。
上京するも、京都弁と直す気はサラサラ無いという。
着物を綺麗に着こなし、腰まで伸びた艶のある黒髪の一部を後ろで束ねている、
何処か日本人形のような先生だ。
「すみません…」
明梨が頭を下げる。
「まあ、小野さんは普段良い子や。そない気になさんな?」
ほほほ、と中本女史が笑い、明梨も寂しげに笑う。
「ほんとに珍しいな…明梨が時厳取るなんて」
そう呟いて、斜め前の明梨の姿に目をやる。
「そな、みなはん。教科書十一ページを――」
明梨の様子がおかしいのが気になって、その日の授業は身が入らなかった。
+++ *** +++
「阿久津。なんか今日の委員長、様子おかしかったな」
「お前もそう思ったか、谷口」
「ああ。今まで一度も時厳をとった事の無い委員長が、チャイムが鳴り終わっても教室にいないなんてな、おかしすぎるぞ」
腕を組んでそう、谷口はいった。