表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆笑三姉妹〜陽翔・結音誕生から、燈真・灯乃、彩羽・悠翔誕生まで  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/40

『博多ブロック参上!—秋風と“おせっかい愛”配達便—』

タイトル:『博多ブロック参上!—秋風と“おせっかい愛”配達便—』

(2047年・初秋/博多)



玄関チャイムが鳴った。


ピンポーン♪


ドアを開けた瞬間――


古賀真理子「あらぁ〜ん、元気しとるねぇ!だんだん寒ぅなるけん、風邪ひかんごとね〜!」


高山由紀「ほらブランケット持ってきたよ!“ぶはぁ耐寒仕様”!」


森本さやか「みかんネットで三袋分どーん!ビタミンCで“うんばぁ免疫”アップ〜!」


中原志穂(真顔)「今日は“遊び相手・家事・笑い”の三本立て。段取りは任せて」


井上明美「写真も撮るけん!“博多ブロック出動”でトレンド入りやね!あ、顔出しは確認とるけん安心して〜!」


一気に玄関が賑やかになる。


青柳光子と柳川優子は、思わず顔を見合わせた。


光子「……来た」


優子「博多ブロック、出動」


そして二人は、救われたように笑った。


リビングに、わあっと温かい空気が流れ込む。



遊び係、即席フォーメーション。


真理子「陽翔〜、結音〜、おいで〜。今日は“てけてけ遠足ごっこ”ばするばい!」


陽翔「てけ〜♪」


結音「てけ〜♪」


さやか「じゃあ“段ボール電車”乗車〜!」


ガムテープで連結された段ボール車両が、リビングを横断する。


由紀「駅アナウンス担当いきまーす。次は〜“ぶはぁ前”〜“うんばぁ中央”〜」


志穂「安全第一。角にクッション、床に滑り止め。この列車、保険完備」


明美「ホームで写真!“てけてけ特急、元気を運びます”はいチーズ!」


陽翔と結音は段ボールの窓から身を乗り出し、手を振る。


陽翔「ばいば〜い!」


結音「ぶはぁ〜!」


リビング――いや、もはや“待合室”状態の空間が爆笑に包まれた。



その裏で、“まんま支援”は同時進行。


志穂「洗濯機まわす→干す→哺乳瓶消毒、タイムライン作成。光子さんは休憩、優子さんは温かいお茶」


由紀「夕飯の下ごしらえしとくけん。鶏団子の生姜スープでポカポカや」


真理子「肩まわして〜深呼吸して〜。妊婦さんの冷えは大敵、首・手首・足首を“ぬくぬく包囲網”!」


光子はソファに体を預ける。


光子「ありがたかぁ……天使降臨……」


優子も湯気の立つお茶を両手で持ちながら笑う。


優子「うち、今日、久々に“座ってお茶”しとる……」



そこへ突然始まる。


ちびっこラジオ体操(博多版)。


さやか「せ〜の、“いっちに!ぶはぁ!”」


明美「“さんし!うんばぁ!”」


陽翔&結音「ぶぁっくしゅん!」


偶然のシンクロくしゃみ。


一瞬の沈黙。


そして――


全員「出たぁぁぁーー!!ぶぁっくしゅん!!」


由紀「このくしゃみ、暖房より効くね」


志穂「幸福ホルモンの放出、確認」


リビングは再び大笑い。


光子と優子はお腹を押さえながら笑った。



台所では、秋の“あったか作戦”が密かに共有される。


真理子「夜は湯たんぽ、日中は腹巻き。外出は帽子+首元スヌード。“三首”は死守!」


由紀「加湿器まわして、寝る前の白湯。喉の“うんばぁ”予防やね」


志穂「買い出しは私らがシフト組む。リスト送って」


明美「撮影・配信系は私がフィルター管理。“プライバシー死守&かわいさ最大化”でいくけん!」


光子と優子は同時に頭を下げた。


光子・優子「……本当に助かる……」



夕方。


さやかが絵本を開いた。


さやか「『てけてけ電車、ぶはぁの森へ』……」


陽翔「てけ〜……」


結音「てけ〜……」


小さなあくび。


まぶたがゆっくり閉じていく。


真理子(小声)「寝たねぇ……」


志穂「作戦成功」


由紀「スープ仕上げて帰るね。明日も寄るばい」


明美「“爆笑発電所女性部 本日の戦果”はクローズド投稿で共有しとく!」


玄関のドアが静かに閉まる。


五人の背中が秋の夕方に溶けていった。



残った部屋には、


鶏団子スープのやさしい香りと、

子どもたちの穏やかな寝息が広がっていた。


光子はソファにもたれ、お腹に手を当てる。


光子「……ほんと、みんながおるけん、頑張れるね」


優子も同じようにお腹を撫でる。


優子「うん。笑いはやさしさやね。あったかい」


窓の外から入る秋風がカーテンを揺らした。


その風は、まるで

「ありがとう」と言うみたいに、


静かに部屋を通り抜けていった。







タイトル:『博多ブロック集合!〜笑いと子守の秋風便〜』

(2047年・初秋/福岡市博多区・青柳家リビング)



ピンポーン。


「は〜い、どなた〜?」


青柳家の玄関が開いた瞬間、秋風と一緒に、にぎやかな声が雪崩れ込んできた。


古賀真理子「どーも、爆笑発電所女性部・博多ブロック、秋の陣でぇす!」


高山由紀「風邪ひかんように、しょうが入りスープ作ってきたけんね〜!」


森本さやか「こっちはみかんとお芋の山!“笑いビタミン補給祭”〜!」


中原志穂「今日は“育児支援+笑い警備”の二刀流で来ました」


井上明美「カメラも持参〜。ほら、陽翔くんと結音ちゃん、今日もかわいかぁ〜!」


リビングにどっと入ってくる女性部の五人。そのあとを、ちょこちょこ小さな足音が追いかけてくる。


光子が思わず笑った。


光子「秋の陣、ほんとに来た……」


柳川優子も、肩の力がふっと抜けた顔でうなずく。


優子「来た瞬間、部屋があったかくなるんよね」



子どもたちも登場。


古賀真理子の娘・まりあ(7歳)「こんにちは〜!陽翔くん、結音ちゃん、いっしょにあそぼ〜!」


陽翔「てけ〜!」


結音「うんばぁ〜!」


高山由紀の息子・けんと(5歳)「見て見て!これ、紙コップけん玉!」


陽翔「けんま〜?」

けんと「そう!こうやって……うわっ、すっぽ抜けたー!」


さやかの娘・みお(6歳)「けんとー、やっぱり今日もスカかぁ〜!」

けんと「うるさいなぁ!」


陽翔と結音が同時に息を吸って、目をまん丸にする。


陽翔&結音「ぶはぁ〜〜!!」


全員「出たー!“ぶはぁタイミング”完璧!」


その一言で、部屋がもう一段笑いで揺れた。



ママトークと、癒し現場。


リビングの一角で、真理子が光子と優子に顔を寄せる。


真理子「光子ちゃん、優子ちゃん、最近どうね?お腹順調?」


光子はお腹にそっと手を当て、笑いながらうなずいた。


光子「うん、順調よ。陽翔が毎日“ぽんぽん”言いよるけん、胎教バッチリ」


志穂が淡々と付け足す。


志穂「胎教の内容が“ぽんぽん”と“ぶはぁ”中心なのが気になるが、家族の幸福度は高い」


優子が吹き出した。


優子「うちは結音の“ちゅっ”攻撃がね。もうお腹の赤ちゃんまで笑っとると思う」


由紀「想像しただけで可愛いか〜!」


明美「SNSで“ぽんぽん姉弟”タグ作ったら伸びるばい!」


優子「やめり、勝手にトレンド作らんで」


光子が笑いながら、ゆっくり呼吸を整える。お腹の中の命が、今日も静かに一緒に笑っている気がした。


光子「ねぇ……うちの子の名前、決まったんよ」


五人が一斉に顔を向ける。


光子「燈真とうま。灯りみたいに強うて、真っすぐ育ってほしいって」


真理子が手を叩いた。


真理子「よか名前!秋の夜みたいに、あったか灯るやん」


志穂「記録。青柳家、次子の名前“燈真”。」


優子が優しく笑って、光子のお腹に目を落とす。


優子「とうまくん、きっとこの家の笑いに鍛えられるね」


光子「最初の発声が“ぶはぁ”になったらどうしようって、ちょっと思いよる」


由紀「それはそれで、元気でよか!」


明美「“初ぶはぁ記念日”撮影、予約しとく?」


優子「やめりって」



遊び係、大奮闘。


まりあ「陽翔くん、こっちこっち〜。おままごとしよ!」


陽翔「まんまごと〜!ぼく、ぱっぱ〜!」


結音「まんま〜!」


みお「あら、夫婦役もう決まっとるやん!」


けんと「じゃあオレ、犬役するー!」


陽翔「わんわん〜!」


けんと「……まてって言われる前に寝たらダメやろ〜!」


結音「うんばぁ〜〜〜!」

拍手みたいに小さな手を叩いて、本人だけが満足そうな顔をする。


笑い声が絶えない。


台所から、さやかがそっと覗き込んで、ぽつりと言った。


さやか「あの子ら見よってごらん。あの光景が、一番の“発電”やね」


志穂がうなずく。


志穂「笑いは地域資源。エネルギー循環、良好」


光子と優子は顔を見合わせて、ふっと肩の力を抜いた。家が“守られている”感じがする。言葉にすると大げさなのに、この五人がいるとそれが当たり前になる。



晩ごはん支援と、温もりの輪。


由紀「今日のメニューは、鶏団子スープと南瓜コロッケ!冷凍して明日も食べれるけん、安心しとって!」


光子「助かる〜……ほんとにみんな、神様や〜!」


優子「明日からまた頑張れる。ありがとう」


さやか「次はおでん持ってくるけん!大根“ぶはぁ味しみ”スペシャル!」


優子「味しみは普通で頼む」


真理子が台所の湯気に向かって笑う。


真理子「やっぱ博多の秋は、スープで決まりやね」



帰り際の、やさしい約束。


玄関で靴を履きながら、子どもたちが口々に言う。


まりあ「また遊ぼうね〜!とうまくん生まれたら、抱っこさせてね!」


けんと「次はオレが“てけてけ列車”ひっぱるけん!」


みお「ばいば〜い!“ぶはぁ〜”も忘れんでね〜!」


陽翔&結音「ばいば〜い!ぶはぁ〜〜!」


ドアが閉まって、足音が遠ざかる。


残ったリビングには、スープの匂いと、子どもたちの熱の余韻がふわりと漂った。


光子は静かに笑って、優子を見た。


光子「……ほんと、みんなに支えられとるね」


優子「うん。笑いがあると、どんな日も“あったかい”になる」


その言葉に呼応するみたいに、リビングの奥から小さな声が響く。


陽翔「まんま〜、ぶはぁ〜」


結音「うんばぁ〜」


光子と優子は同時に笑って、同時にお腹を撫でた。


秋風がカーテンを揺らす。

その揺れの向こうで、博多の空は高く澄んでいた。


そして今夜も、青柳家のリビングには、笑いと子守と、これから生まれてくる命の気配が、ちゃんと並んで息をしていた。





タイトル:『フランスの空に、光とやさしさの風が吹く』

(2047年・パリ&パリ郊外/ローラン・ギャロス&パレ・デ・スポール)



第1章:翼、赤土の舞台へ――全仏オープン初戦


パリ、ローラン・ギャロス。

早朝の光が赤土の粒をひとつずつ起こし、コートを薄い朱に染めていた。

観客席はまだ満席ではない。それでも、音はもう立ち上がっている。靴底が土を踏みしめる音。ボールが弾む乾いた響き。遠くのフラッグが風を受けて鳴る布の擦れ。


青柳翼は、ラケットのグリップを握り直した。

深く息を吸う。吐く。

その呼吸の中に、博多の家の匂いが一瞬だけ混ざった気がした。湯気の立つスープの香り。畳の温度。子どもたちの足音。


ベンチに腰を下ろすと、スマホが小さく震えた。

画面に浮かんだのは、青柳光子からのメッセージ。


「陽翔と燈真も応援しとるばい。ぶはぁパワー全開でいけ」


翼は目尻を落として笑った。

燈真――まだこの世に姿を持たない名前。

それなのに、もう家の真ん中に居るみたいに、当たり前に呼ばれている。


「よし、“ぶはぁパワー”ね」


誰にも聞こえない声でそう言って、翼は立った。

ラケットが軽い。体が軽い。

遠く離れても、心の軸は家にある。それが分かっていると、人は強くなる。


試合開始。

相手はスペインの俊英、アレハンドロ・バルベルデ。鋭いトップスピンで先に仕掛け、時間を奪い、相手の足を止めてくるタイプだった。


だが、翼の足は止まらなかった。

赤土の上で、滑って、止まって、また滑る。

相手の回転を受け止め、角度で返し、空いたところへ刺す。

ラリーの途中、観客席がざわめく。無理に見える球が返ってくるからだ。


実況(仏語)「Incroyable!青柳、驚異的なディフェンスから一気にカウンター!」


ブレイクポイント。

翼は一歩、踏み込んだ。

ラケット面がボールを捉えた瞬間、スライスが細く伸び、コート際へ吸い込まれるように落ちた。


観客席が、喉の奥から声を出す。


「アォォォオ!」


翼の表情は変わらない。

ただ、目だけが少し柔らかい。

その目は、フランスの空の下にありながら、博多のリビングの灯りを見ている。


セットカウントは一方的に進んだ。

6-2、6-1、6-0。

わずか1時間28分、完勝。


試合を終えた翼は、コートを見上げた。

まぶしい空に向かって、唇が確かに動く。


「光子、ありがとう」


誰に言うでもない一言。

だがその瞬間、電光掲示板の大型スクリーンに日本からの中継映像が映った。

青柳家のリビング。光子が手を振り、陽翔がぴょんと跳ね、画面の外から誰かが笑っている。

字幕が添えられていた。


「ぶはぁ勝利!」


翼は、ほんの少しだけ肩を揺らして笑った。

赤土の王子――そんな呼び名はどうでもいい。

家族が笑ってくれるなら、それでいい。



第2章:拓実、団体戦・初陣――日本、完全勝利


同じ頃。

パリ郊外、パレ・デ・スポール。

卓球ワールドカップ団体戦の会場は、熱気が壁に張りついていた。ボールの乾いた音が連打されるたび、客席の空気が揺れる。照明は白く、床は光り、汗は一瞬で乾きそうなほどに明るい。


柳川拓実は、円陣の中心に立っていた。

キャプテンとして、いつもより少しだけ声を落とす。落としたほうが、言葉が届くと知っているからだ。


「俺たちは、強くて優しいチームだ」


顔を見上げる仲間たちの目が、すっと真剣になる。


「遠くに家族がおる。応援してくれよる。

その気持ちを背負うってことは、重たいことやない。

むしろ、軽くなる。進める。

笑っていこう。勝っていこう」


誰かが吹き出しそうになる。

拓実は最後に、いつもの調子で付け足した。


「“ぶはぁ”と“うんばぁ”を信じて、全員で勝ち取るぞ!」


選手たちが、堪えきれず笑った。

笑いは、気の緩みではない。拓実にとってそれは集中のスイッチだった。

肩が落ちる。呼吸が整う。視界が澄む。

そして、勝負の刃が静かに立つ。


初戦の相手はドイツ。

第1試合、エース戦。

拓実はレシーブの角度で流れを掴み、早いタイミングで前へ入る。

小さな白球が跳ねた瞬間を逃さず、スマッシュが突き刺さる。


ポイントが積み上がるほど、会場のざわめきは大きくなる。

日本チームは第2、第3試合もストレートで押し切った。


最終スコア:日本 3 – 0 ドイツ。


会場が揺れた。

勝利は音になる。拍手は波になる。

そして、遠く離れた日本のスマホにも、その波は届く。


博多。

柳川優子のスマホに速報が飛び込む。


「柳川拓実、日本代表 初戦完勝!団体戦ベスト8進出!」


結音はタブレットの画面を見つめていた。

まだ言葉はたどたどしい。けれど、目の奥の喜びだけは大人と同じくらいまっすぐだ。


結音「ぱっぱ、すご〜い……うんばぁ」


その一言が、優子の胸の奥をあたためた。

画面の向こうで、拓実がほんの少し笑う。

その笑いが、家に返ってくる気がした。



第3章:遠く離れても、心はひとつ


フランスの空の下。

赤土を蹴る翼と、白い球を追う拓実。


そして日本の空の下。

博多のリビングで、光子と優子が画面を見つめる。

応援は祈りに似ている。

声を出しても出さなくても、心の中で同じことを繰り返すからだ――どうか無事に、どうか勝って、どうか笑って帰ってきて。


光子「翼、赤土の王子やね。ほんと頼もしか〜」


優子「拓実も“団体戦の要”や。

もうこれは、ダブルで風が吹いとる」


美鈴が台所から顔を出す。

笑いを堪えるように、でも結局、笑っている。


美鈴「あんたたち……夫が遠征で活躍中でも、笑いが絶えんてどういう家庭よ」


光子と優子が、声を揃える。


光子・優子「笑いが家庭の燃料ですっ!」


美鈴は呆れたふりをして、プリンを冷蔵庫に押し込む。


美鈴「燃料、入れすぎて爆発せんごとね」


陽翔がそれを聞いて、なぜか得意げに言う。


陽翔「ぶはぁ〜!」


優子が指を立てる。


優子「それは合いの手やね」


陽翔は満足そうにうなずく。

そのやりとりの中で、光子はそっとお腹に手を当てた。

燈真――その名の気配が、今日も静かにそこにある。



エピローグ:翼からのメッセージ、拓実からの言葉


翌朝。

フランス時間の夜、光子と優子のスマホがほぼ同時に震えた。


青柳翼から。


「1勝。これを家族の誇りにする。

陽翔、燈真。パパは“ぶはぁスマッシュ”で勝った」


柳川拓実から。


「初戦、完勝。チーム全員笑顔。

結音、赤ちゃん。こっちも“おとーたんファイト”で行くばい」


光子と優子は、スマホを胸に抱いた。

胸の奥で、笑いと涙が同時にほどける。

遠く離れていても、言葉ひとつで繋がるのが家族だ。


光子・優子「――次も、勝てる。うちらの笑いが届いとるけんね」


博多の夜。

カーテンの向こうで、空は静かに澄んでいた。


陽翔が、画面の向こうに向かって両手を振る。

結音も真似をする。

そして、家の中にいつもの合図が響く。


陽翔・結音「ぱっぱ〜!がんばれぇ〜!」


少し遅れて、陽翔が付け足す。


陽翔「ぶはぁ〜!」


その声は、家の天井で跳ね、窓を抜け、夜の博多をすべっていく。

そしてきっと――フランスの空にも、届いている。


勝負の熱の中に、家族の笑いが混ざる。

それが、青柳家と柳川家の風だった。





タイトル:『ぽよりんむにょたろう、博多デビュー!』

(2046年・初夏/福岡市博多区・青柳家リビング)



昼下がり。

青柳家の玄関チャイムが、軽い音を鳴らした。


ピンポーン。


畳の上でころころしていた陽翔が、反射みたいに顔を上げる。

結音も、よちよちの体を揺らして「なに?」という顔をした。


青柳光子は、キッチンから顔を出し、笑いながら玄関へ向かう。


「来た来た〜」


扉を開けると、抱っこ紐姿のママふたりが並んで立っていた。

どちらも、眠気と幸福を同時に抱えているような顔をしている。


日向さおりは、髪をひとつにまとめ、抱っこ紐の中の赤ちゃんの頭をそっと支えたまま微笑んだ。


「おじゃましま〜す。今日も“ぽよりん”、絶好調よ〜」


大畑小春は、片手で抱っこ紐を軽く直し、もう片方の手で肩を回す。


「“むにょたろう”も朝から元気すぎて寝不足やけどね〜」


その腕の中には、ふたりの赤ちゃんがすやすやと、あるいはきょろきょろと、世界を見ている。


大畑陽生はるき――通称“ぽよりん”。

頬がぷにっと柔らかく、笑うと「ぽよっ」と音がしそうな癒しの塊。


柳川紬つむぎ――通称“むにょたろう”。

ほっぺがもちもちで、指をしゃぶりながら「むにょ〜」とご機嫌そうに唸ることがあるらしい。


光子は、玄関先でいきなり声のトーンが上がった。


「うわぁ……ちょ、かわいすぎて事件!入って入って!」


さおりと小春が「おじゃましまーす」と声を揃えた瞬間、リビングのほうから別の声が飛んでくる。


「事件って何が来たん?」


柳川優子が、結音を抱き上げながら顔を出した。

結音は優子の肩に顔をこすりつけ、まだ眠そうに瞬きをしている。


光子が腕を伸ばすより早く、陽翔が「てけてけ」と寄ってきた。

玄関の段差の手前で止まり、赤ちゃんふたりを見上げて固まる。


陽翔「……あかたん?」


優子が吹き出す。


「陽翔、今日は“あかたん”が二倍やね」


光子がリビングへ案内すると、さおりと小春は抱っこ紐のままソファへ腰を下ろした。

赤ちゃんはそっとクッションの上へ。

室内の空気が、ふわっと甘くなる。


光子が、陽生の頬を見つめたまま、声のボリュームを落とした。


「陽生くん……もうこんな大きくなったんね……」


続けて紬のほうを見る。


「紬ちゃんも……ほっぺ、もちもちが過ぎる……」


優子が腕を組むふりをしながら、真顔でうなずいた。


「これはもう、次世代が来とる。

“ふわもちぷにすけ”の後継が、ここに座っとる」


さおりが、さらりと言う。


「実はね、私ら最近コンビ名つけたんよ」


小春が食い気味に続ける。


「そう。“ぽよりんむにょたろう”!」


光子と優子が同時に顔を上げた。


「……ネーミングセンス、完全にうちら譲りやん」


「遺伝子レベルで爆笑しよる」


ふたりの声が重なって、リビングが一瞬で“いつもの空気”になった。



赤ちゃんを並べてみよう、という流れは自然だった。

気がつけば、畳の上に小さな布団が二枚敷かれ、そこに陽生と紬が並ぶ。

少し離れた場所には陽翔と結音。

まるで小さな舞台の左右に、出演者が配置されたみたいだった。


光子が両手を叩く。


「よーし。夢の共演!

“ふわもちぷにすけ”と“ぽよりんむにょたろう”!」


優子が、司会者みたいに片手を上げる。


「第一部、おむつ替えステージは……今日はやめとこう。

ここでやると、絶対に誰かが拍手し始めるけん」


さおりが笑いながら頷いた。


「この家、拍手のハードル低いよね」


小春も苦笑いする。


「拍手が先か、くしゃみが先か、みたいな世界やもん」


そのときだった。


陽生が、先に口を大きく開けた。

ゆっくり、時間をかけるあくび。


「ふわぁ〜……」


その“ふわぁ”が、空気の合図みたいにリビングを撫でた瞬間、紬が同じ角度で口を開ける。


「ふわぁ〜〜……」


全員が固まって、次にいっせいに声を上げた。


「出たーーー!」


光子がソファから立ち上がりかける。


「シンクロあくび!しかも見本みたいなやつ!」


優子が笑いすぎて肩を揺らす。


「芸術点高すぎて採点不能!」


さおりが胸を張る。


「毎回このシンクロ率よ。たぶん、呼吸合わせに来とる」


小春が頷きながら、紬の手をそっと押さえる。


「うちの子、誰かと一緒にやるのが好きなんやろね。

……って、あくびで分かることある?」


「あるある」と光子と優子が同時に言って、また笑った。



その笑いが少し落ち着いた頃。

陽翔が赤ちゃんのほうへ、ひとつだけ慎重に歩いた。

手を伸ばしていいのか迷っている指先が、空中で止まる。


陽翔「ぽより……?」


優子が囁く。


「陽翔、触るなら“なでなで”やよ。ぽんぽん禁止」


光子が横から訂正する。


「ぽんぽんはお腹限定ね」


結音は、優子の膝からずり落ちて、赤ちゃんを見つめた。

そして、急に思い出したように言う。


結音「てけてけ」


歩く真似なのか、応援なのか、本人にもよく分からない。

でも場の空気だけは、間違いなく優しくなる。


その直後――。


陽生の鼻が、ほんの少しだけ動いた。

小さな胸が、吸って、止まって、放つ。


「へっ……くちょん!」


間髪入れず、紬も同じリズムで。


「へっ……くちょん!」


完全に同時。

しかも、音の大きさまで似ていた。


一拍の静寂。

それから爆発みたいな笑いが起きた。


光子「ぶはぁぁぁーー!!出たぁぁ!!ダブル“へっくちょん”!!」


優子「これぞ“ぽよりんむにょたろう・同時くしゃみ選手権金メダル”や!」


さおりはティッシュを探しながら、もう諦めた顔で笑っている。


「ティッシュ渡す前に笑いが止まらん」


小春は肩を叩きながら言った。


「この子ら、前世で漫才師やったんちゃう?」


光子が間髪入れずに返す。


「現世でも十分やろ」


優子が頷く。


「デビュー戦、勝利確定」



陽翔と結音は、赤ちゃんたちに向かって手を振り始めた。

陽翔の手は大きく、結音の手はちょこちょこしている。


陽翔「ぽより〜!」


結音「むにょ〜!」


赤ちゃんふたりは、返事の代わりに手足をばたばたさせた。

偶然の動きなのに、そこに意思があるように見えるのが不思議だった。


光子は、カーテン越しの光を眺めながら、ぽつりと言う。


「……これがまた始まるとよ。笑いの次の世代が」


優子も静かにうなずく。


「ぶはぁDNAは、ちゃんと継がれとる」


初夏の光が畳に落ちて、赤ちゃんのほっぺをふんわり照らした。

“ぷにっ”と“もちっ”が、そのまま光になるみたいにやわらかく輝く。


そして、ママたちの笑い声と、赤ちゃんたちのくしゃみの余韻が、

博多の午後に長くこだました。


「ぽよりんむにょたろう、ただいまシンクロ活動中」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ