この字…
蕎麦を食べ終えた後…
「かすみちゃん…かすみちゃんの親族にね、はるさんて居なかった?」
「はるさん?…あ、居たよ。私から見たら…おばんちゃ?になるのかな?」
…おばんちゃ…。祖母の上の祖母の事だ。
「そのおばんちゃって、健蔵さんと親戚なの?」
「うん。親戚。えっと…母さん側だったかな?」
「ねぇ…そのおばんちゃと話って出来る?」
「う~ん…。どうかな?施設に居て…認知症もあるし。まあ仕方ないよね……。」
「認知症…。あのね、かすみちゃん。」
日和光さんが、今までの経緯を話してくれた。
「はなちゃんてこの時代の子じゃないのかぁ…。ね、はなちゃんが身に付けていた物って今持ってる?」
「はなちゃんあるかな?」 「あります。」
「見せてくれる?」 「はい。」
はなは、首から下げている布の袋を外して、かすみさんに渡した…。
「…これは?」健蔵さんがはなに聞いた。
「母さんから貰いました。下げといてねって…。」
「…中見ていい?」 「はい。」
袋を開けて紙を取り出した、かすみさん。健蔵さんも一緒に見ていた…。健蔵さんが…
「お父さん…権蔵さんか…お母さんがいね?さんかな?でも…この字…”な”にも見えるね…」
「…え?…な?」 「な?って…?」
「…?」
「”な”?…」
「健蔵さん…”ね”だよ?この字…?」
日和光さんが、健蔵さんに聞いた。かすみさんから紙を借りた。老眼鏡に手を…。眼鏡の位置を調節…。
「…この字は…おそらく旧字体だね。…うん。”い”は、平仮名で…こっちは…漢字の…”那”…かな?」
「”な”ってどの漢字?」
かすみさんが、スマホを健蔵さんに見せた。
「この那だよ…。」
「全然違うよ?」 「違う…。」 「違いますね…(汗)」
「…この那は、今の字だよ…。この紙に書かれているのは、昔の字。旧字体と言うんだ。」
「…旧字体…。」
そう言えば…患者でも旧字体を使ってた方いたな。平仮名の…確か…”え”…だった。
「…じゃ…じゃぁ…はなちゃんの、母親の本当の名前は…い那?…さん?」
日和光さんが健蔵さんに聞いた…。
「う~ん…ちょっと…この字…僕には判断出来ないなぁ…。微妙なんだよね…。」
健蔵さんが、かすみさんに紙を渡すと…元通りに折りたたみ、布の袋の中に入れ、はなに渡したかすみさん…。
「光庵さん達は、なんて話していたの?」
「…特には。ただ…光庵さん達も判らなかったって事?」
健蔵さんが日和光さんに聞いていた。




