家庭浴
17号室へ向かう。病室に入ると、彼が漫画を見ていた。週間…。懐かしいな。俺もよく読んでいた。今は、そうでもだけど。
「…あ、看護師さん。」
漫画から目を離し、俺を見た。やっぱり、真っ暗な目。と…患者が俺に聞いた。
「…明日さ、お風呂かシャワー浴びれない?」
「お風呂ですか。」
「もう暫く入ってないんだ。全身痒くてね。」
「ちょっと待ってて下さい。」
「うん。」
1度17号室を出て、ナースステーションへ向かう。ナースステーション内に入り、1番左奥にあるデスクへと向かう。そこには、患者入浴表…。ケア表が置いてある。バインダーに挟めてある、ケア表。火曜日は…あ、家庭浴空いてるな。13時30~。…後は14時30が1人か。…特浴は、無理だから、家庭浴でイケるかな?
家庭浴は、そのままで家にある風呂と同じ。自立の患者さんが入浴する。
「どうしたの?」
由美子さんが俺に声をかけた。
「あ、由美子さん良かった。カンファレンス終わりました?」
「えぇ。」
「実は、17号室の方、明日入浴希望されたんですが、特浴がいっぱいなので、家庭浴でイケないかと…」
「うーん…。彼は立てる事が出来るし、車椅子をギリギリにして、椅子に座ってもらって…シャワー浴でいこうか。…浴槽は跨がないと思うしね。それにフラつきも出ると悪いから。」
「そうですね。」
確かに彼は、車椅子からベットに自力で移っていたからな。シャワー浴なら…
「どうしたの?」
チームリーダーと大類部長が来てくれた。事情を話す。すると
「…それならシャワー浴で大丈夫ね。」
「でも、必ず看護師付き添いだね。」
…決まり。明日の13時30分~シャワー浴。看護師付き添い。
とケア表に記入した。
「明日、小野寺君、付き添ってね。ケア番だから。」
「分かりました。」
17号室へ戻る。
「失礼します。明日の13時30分からシャワーなら良いですよ。」
「シャワーで良いです♪」
めちゃくちゃ嬉しそうな笑顔を見せた。その後、彼が俺に言った事…。
「…貴方は優しいね。」
…優しい…。かな?




