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「ペンは剣よりも強し」と言うそうなのでペンの力で乱世を統一せしめん  作者: 果ル神頼(遥か未来)
第一章 大陸統一の下ごしらえとして国家転覆しましょう
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13話

すでに書画の部屋の前には最後の一人を除いて全員集まっていた。


現在、王宮内にいるのは俺、宵宮、メフィト、そして俺が途中から仲間に迎え入れた布施、翔……


「あら、私が最後になってしまったようね」


書画の部屋から出てきた最後のメンバー、響の六名である。書画を除くほかのクラスメイト達は事前にメフィトの部下の指示のもと、九重とともに第三訓練所に移動済みである。


「最終確認を行う。時間が惜しいから手短に話すぞ」


 俺が皆にそう確認すると黙って頷く。普段は口数の多い宵宮もこの時ばかりは大人しかった。その後、響が宵宮に向けて微笑みかけ、それに対して宵宮はどこかきまり悪そうな様子であったが、まあ、書画の部屋の中で何かがあったのだろう。特に響からの言及はなかったので、その辺の所索は後回しでもよいのだろう。


 俺は改めて本作戦の目的を確認する。本作戦の目的はよそが介入する余地もないくらいに速やかにメフィトに国王の座を明け渡すことであり、武力的な反乱ではないこと。

 そして、本作戦の唯一にして絶対に達成しなくてはならない目標が『国王と実に平和的な交渉を行う』であること。

 その他いろいろな確認をしている間、響と布施は、メフィトは『分かっていますよ』といった具合に頷いてくれるが、翔は時々こちらが目線を合わせると頭を掻き、『難しいことはよく分からないや』といった目線でこちらに何か訴えてくる。宵宮は響と目線があってからは普段の様子からは想像できないほど物静かで微動だにしない。そのせいで理解しているのかしていないのかが判断できなかった。本番を前に緊張でもしているのだろうか?


 以前、彼女について幼馴染の書画に尋ねたのだが、彼は露骨に嫌そうな顔をした後、

『俺はあいつの言わんとしていることが分かるだけであって、あいつの思考回路や倫理観が理解できてるわけではない。あいつは分かっているようで分かってなくて、論理が飛躍しているかと思えば、よくよく聞けばまったくもって的外れではないことのほうが多い。国語のテストもそこそこ良い点とれてるからバカではない。バカではないんだろうが……』

そこまで言った後、彼はよい例え、あるいは彼女を形容できる言葉が思いつかなかったのだろうか、そこまで言うと腕を組み『……なんなんだろうな、あいつ』と苦笑するのであった。


「とりま、今夜は国王様に直談判しに行くってことでオケ?」

「……まあ、それでいい」


途中で考えるのを放棄していそうだった翔の呑気な問いに対して、布施がため息交じりに答える。

ここにいるメンバーは全員俺が声をかけた人間(メフィトはどちらかといえば書画かもしれない)のはずだが、なんだかこの様子を見ているとものすごく心配になってくる。それと同時に改めて書画のありがたみを痛感させられた。


 俺がはっきりと『お前に託す』と言えるのは書画、強いて言うなら響の二人だけであろう。だが、響の状況は俺と似ていたので彼女に託したところで自分と出来ることにそう差はなかっただろう。


 もし、あいつがいなかったら……そんなこと、考えただけでも恐ろしい。


「それじゃあ、王の寝室へ向かう。案内は宵宮で殿は俺と翔だ。行くぞ!」


俺たちの寝室がある場所と王の寝室にはそれなりに距離がある。もちろん王宮内には常に見回りの兵士がいるが、宵宮はすでに彼らの行動ルートや時間帯を把握しているようで、ほとんど鉢合わせすることはなかった。ただし、俺たちの寝室がある離れから食堂がある本館への道がある扉の前には常に二人組の兵士が立っているようだが、


「ああ、汝らに与えられた偽りの光など……真実を前には実にはかない……」


手慣れた様子で彼らの背後に姿を現し、一瞬でその手に携えていた明かりの火を消した。何も見えない暗闇の中で宵宮の笑い声と衛兵の慌てて逃げていく足音だけが響き渡る。


「ここだを切り取ってみればとても頼もしく見えるのに」


布施はその様子を見ながら本人には聞こえないくらいの音量でぼやくように言った。


「あなたがそんなに毒づくなんて珍しい。何かあったの?」


「……前に俺があいつに能力について話したらいきなり『冥府の王』だとか『夜神との契り』だとかわけわからないことを永遠と聞かされたんだよ。ちなみに俺の発言権はなかった」


「なるほどね、それはきちんと本人に説明してもらいましょうか」


響は口元を隠して上品に笑っているが、その表情は黒い。


「かの女についてはそなたに任すのが一番よさそうだな」


その様子を見ていたメフィトも、出会っていまだ数日であるにもかかわらず、すでに何か思い当たる節があるのか、こめかみを押さえながらため息をついた。



言いそびれていたがメフィトは宵宮の存在を知っている。この世界で彼女の存在を知る、唯一の人間となった。



♢ ♢ ♢



 そうして俺たち一行はついに王の寝室の前に辿り着いた。扉の前には警戒に当たっている衛兵が二人。しかし、先ほどの廊下にいた者とは違い、ところどころに彩色が施された槍を持ち。手に持つ光源も一般兵が持っている燭台のようなものではなく、ランタンのようなものである。おそらく、身分の高い兵士であることが一目で見て取れる。


「事前に調べた時と同じね。つまり向こうはまだ気づいていない」

「それじゃあ、予定通りにしようか。みんな、大丈夫?」


仲間の顔をもう一度確認すると、チャンスは一度きりしかないこともあり、翔は微かに緊張しているようであったが


「問題ないわ!なぜなら私たちには汚れた闇を晴らし、曇り……」

「おだまり!」


一切調子の変わっていない二人のやり取りにクスリと笑った。その様子を見て大丈夫そうだなと確信した。


 俺たちは廊下の角に息をひそめその瞬間を待つ。


「You`re hell come!」

「いまだ!」


宵宮が二人の持っていたランタンを背後から叩き割ると同時に男四人は駆けだす。


「何事だ⁉」

「しまった、敵……」

「させるかっ!」


突然の出来事に動揺している兵士二人に向かって、能力によって身体能力が大幅に上昇している翔が、手前側にいる兵士に向かってタックルをかまし、そのまま置く側にいた兵士も巻き込む。

 そして、彼らが倒れこむ地点に宵宮はすぐにロープを張り、倒れかかった二人を縛りあげようと巻き付け始める。抵抗しようともがく兵士は遅れてやってきた俺と布施で押さえつける。助けを呼ばれないように口を押さえつけながら。

 だが、短期詰込みの俺たちと、根っからの兵士との力の差は歴然で俺たちを強引に引きはがそうと暴れまわり、少しずつであるが、その可動域が広がっている。


「ちょっと、ちゃんと押さえなさい!」

「これでも全力でやってるよ!」


 宵宮の文句に対して布施が反論する間に兵士二人と布施の上に魔法陣が展開される。

 二人をまとめて縛り上げられたことを確認すると俺と宵宮は素早く二人から離れて響に合図を送る。


「後はよろしく頼む」


俺の呼びかけに対して布施がサムズアップするのと、彼と二人の兵士が消えてしまうのはほぼ同時であった。


「なんとかうまくいったな……」


 廊下に残ったのは俺、翔、宵宮、響、そしてメフィトである。部屋の中に入るのは俺と響とメフィト。残りの二人は警戒に当たってもらう。

俺は軽く息を整えるとゆっくりと王の寝室への扉を開いた。


ここまでは作戦を立てた俺たちが言うのもあれだが、驚くほど順調であった。


だが、計画とは最後まで想定通りにいくことの方が稀である。


扉を開け、なぜか明るい部屋の中に立っていた男を見て、俺は苦笑した。



お読みいただきありがとうございます

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