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「ペンは剣よりも強し」と言うそうなのでペンの力で乱世を統一せしめん  作者: 果ル神頼(遥か未来)
第一章 大陸統一の下ごしらえとして国家転覆しましょう
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1話

初長編

色々と荒い所もあると思いますが頑張ります

 俺の名前は書画孔明(しょかくこうめい)ごくごく普通の中学生であった……『あった』のである。それじゃあ今はどうなっているか?


「そうだ俺が魔法を統べし者、ショーカクだ!」

月の光と自分たちを取り囲む民衆の松明の光に照らされる中でで俺は高々とそう名乗り上げた。

すると俺に相対する勇者チームのメンバーの一人である聖女(候補)が笑う。

オイそこ笑うな。


「最悪のネーミングセンスですね」

「孔明さんもっと真剣にやってください」

俺と並んで立つ死霊魔術師(ネクロマンサー)はあきれたような口調で、背後に隠れている召喚術師は笑いをこらえながらそう言って茶化す。


「ショーカク……俺は貴様をここで倒す!」

対して先頭に立つ勇者……いや、クラスメイトの善也(ぜんや)は重々しくそう言うとこちらに剣を向ける。俺はその様子を見て『よかった』と胸をなでおろした。なにせ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

俺は不敵な笑みを浮かべながら静かに『魔導書』を開く。


「下界の観測者であるこの(わたくし)を殺すと?」

「神龍の加護は我らにあり。恐れるに足りず」

魔王とその仲間、勇者と勇者の仲間もそれぞれの武器を構えるがその表情は明るい。


さあ、終幕(フィナーレ)と行こうじゃないか!



~時は数か月前に遡る~



 俺たち三年一組は突如としてまぶしい光に包まれるといつの間にか知らない世界の知らない国の玉間に連れ去られていた。目の前には非常に肥えており、数億円以上しそうな羽織やらを着たいかにも裕福そうな男が俺たちを見下ろしていた。おそらくそいつが王様、もしくはそれと同程度には位の高い人間なのだろう。


「……」

「……」


 さて、困ったことに平和で主権が国民にある国に暮らしてきた人間が玉間で、それも非常に格の高そうな方々に対してどう振舞えば良いかなど当然知る由もなく、彼らと俺たちの間には非常に気まずい空気が漂い始める。


「オイ、誰かなんか言えよ!」

「バカ言え!下手に動いて地雷踏んで首ちょんぱなんて御免だ!そういうお前こそなんか言えよ!」


俺の少し前の方で小声でそんなことを言っているのが聞こえた。


「……メフィト」

「はっ、はい!なんでしょうか」


王様(?)が非常に静かにそう呼ぶと隣に立っていた三角帽子とローブ、そして眼鏡といかにも物語に出てくる魔法使いのような男は何かに怯えているようであった。


「儀式は成功したのか?」


ただの確認であろうがその口調は重々しく、俺たちに向けて発した言葉でないにもかかわらず、小声で話していた二人はすっかり黙り込み委縮していた。

 かくいう俺も周りを見るほど余裕があり冷静なわけではなく、その言葉を聞いた後、彼と目線が合わないように目線を下にしているとたまたまその様子が見えただけである。顔色をうかがいたい気持ちもある。しかし、万一目が合ったりしてしまった暁にはどうなるのか……変に注目されるだけで何かいい方向に向かう未来は少なくとも俺には想像できず、この時は目線を上げることすらできなかった。


「おそらく……」

「どうなんだ!」

「すみません!すぐに確認いたしますのでお待ちください!」


一人の男が後ろの扉から出て行った気配がした。おそらくメフィトと呼ばれた男が慌てて玉間を飛び出していったのだろう。


 とりあえずこの一連の出来事で分かったことが一つある。間違いなくため口で話しかけるようなことをした暁には命はない……と。例え彼らが俺たちに期待していたとしても……


緊張で委縮しているせいか、静止していただけにもかかわらず体中の筋肉が痛い。あとどれだけこの時間が続くんだとそう思ってた矢先


「……王よ」


俺のすぐ後ろで男が立ち上がった。


「私のような平民風情があなた様のような偉大なお方に直接話すことなどあってはならないと承知しております。しかし……あなた様方が私たちをここに呼び出したのであればなにか理由があるのではないでしょうか?私のような凡人たちには残念ながらあなた様のような偉大な方の考えなど到底理解できるような代物ではございませんが故に、どうか状況を説明していただけませんでしょうか」


 この状況で立ち上がり勇気を振り絞ってそう尋ねた男は善也(ぜんや)。この学校の元生徒会長であり、俺が知っている人間の中で最も完璧に近い人間である。人望良し、性格良し、行動力良し。非常に妬ましいがとても同じ年齢の人間とは思えない。


そんな彼はおそらく極限まで自分を下げ、相手を上げたが……どうだ⁉


 恐る恐る視線を上げ、固唾をのんでその様子を見守っていると彼の目線の先にいた王は黙って無精髭をいじっていたが、しばらくすると非常に面倒くさそうに口を開いた。


「……メフィト。さっさと状況をこいつらに説明しろ!」

「たっ……ただいま!少々お待ちください」


いつの間にか戻ってきたメフィトは走ってきたのだろうか息が上がっていたがそんなのはお構いなしといったっ具合に王は命令する。彼の手にはバスケットボールくらいの大きさの水晶玉をいったんそばに置くと、呼吸も整えずに説明を始めた。



♢ ♢ ♢



メフィトの説明をまとめると大体こんな感じになった。


まず、俺らは異世界から召喚させられたいわゆる『転生者』。


そしてこの世界は戦国時代のように様々な小国が天下統一を目指して争っている。


俺たちはそんな時代を終わらせる……英雄として召喚させられた。


しかし、平和な世の中を享受していた私たちが身一つで戦国時代に連れていかれても何もできるはずがない。


だが、しかし! もちろん数合わせ……いや、肉壁としてすら役に立つかすらあやしい人間たちが身一つで英雄として召喚されるはずもなく……


「とりあえず、皆さんの名前と能力の確認をいたしますので少々お待ちください」


 転生者には特別な『能力』が授けられるそう。『能力』そのものはこの世界の住人の約半数にも授けられているが転生者の『能力』は優れていたり希少なものが多いそう。


 例えるならばソシャゲの無料ガチャとレアガチャと思ってもらえればいいだろう。


はい、そんなわけで俺の選ばれた能力が……なんと⁉


「書画孔明。能力は……『そくひつ』?」


そくひつ……『即必』ってこと? チャージとか準備が必要な魔法を瞬時に発動できるにたいな?


「いえ、『速筆』です。文字を早く……ブフォ。……失礼、思い出し笑いですので。……要するにただ文字を早く書ける能力ですね」


あれ? それってつまり……


「微妙ですか?」

「……はずれね」

「はずれでしょ」

「……」


俺の能力を聞いていたクラスメイトの数人がはっきりそう言った。……もうちょっとオブラートに包んでくれよ。


「いいじゃん!孔明にはすごくぴったりな能力だと思うぞ!」


名前の順で並んでいたので聞こえていたのだろうか、後ろで待っていた善也はそう言って俺を褒めるが、


はっきり言おう。それはそれですっごいうざい。


 けれども態度に出さずに我慢する。善也と同じクラスで半年、それよりも前に生徒会として二年近くかかわって来て、一切の悪気がないのは俺も分かってる。善也は優劣……いや『劣等感』というものを知らない、理解できないのだ。自分よりも優秀なものを見たときに多少の畏怖の念を抱くものの、それ以上に超えたいとより一層燃える、何というか……自然発火物みたいな奴なのだ。


 善也の話はいったん置いとくとして、転生させられて手に入れられた能力が一般人が努力したら手に入れられそうな能力なのはいかがなものか……もっとさ、せめて人間離れした能力……火の玉を作れるとかでもいいからさ。もうちょい夢のある能力にならないのか?


でもまあほぼただで手に入れたものにケチをつけるのもどうかと思うけど……


「善也さんの能力は……っ『主人公補正』⁉」


「なんか抽象的だが……すごいの……か?」


いまいちピンときてなさそうに首を傾げる。


「凄いとかの話ではありませんよ!かつてこの大陸のほぼすべてを掌握したかつての王が唯一持っていたとされる伝説の能力ですよ!」


余りに衝撃だったのかメフィトと呼ばれる男は持っていた水晶玉をあわや落としかけていた。


「メフィト、それは真なのか⁉」


先程までずっと静観していた王も事の重大さに気付いたのかわずかに声が上ずる。


「間違いありません。……が前例がその過去の王のみであるため詳しい効果は分かりません。それでもかつての王の繁栄を考えれば……」


メフィトはそこまで言うと生唾を飲み込み、もう一度興奮している自分を落ち着かせるためだろう、軽く息を整えるとはっきりとこう言った。


「この者とここにいる他の希少な能力を持つ者が合わされば、大陸を統一するのも十分可能であるでしょう!」


その一声を皮切りに玉間は突撃する直前の兵士が、優勝を目前にしたスポーツチームがするような雄たけびをお偉い様のおじさんたちが上げるのを当の本人の善也はもちろん俺たちは茫然と口を開けたまま一歩も動けなかった。


「この能力者がいれば天下を!」ある貴族の男が叫ぶ。


『文字が早く……ブフォ』


「イサルド王国に栄光あり!」別の貴族が剣を高く掲げる。


『はずれだな』


……なんだこの差は


前言撤回。やっぱ文句言わせろ。


お読みいただきありがとうございます。

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