6-18.ダンジョンコアの力
「待っていたぞ!冒険者アルカ!」
「何度も何度も僕の邪魔をしやがって!
本当に良い加減にしてほしいね!」
ダンジョンの最奥に陣取る
ヒョロヒョロの男は、私を見るなり、
ヒステリックに喚き始めた。
また逆恨み?
別にルスケア領主に限らず、
こんな事はしょっちゅうだ。
何度も何度も事件を解決してきたのだから、
逃げ延びた敵に恨まれるなんていつもの事だ。
けど、良い加減こっちだってうんざりだ。
勝手に迷惑かけといて、何が邪魔をしただ。
どうしてこういう奴はいなくならないのだろう。
イライラする。
この男は特に。
なんかもう生理的に受け付けないタイプだ。
「あんた誰?目的は?」
「どうせお前はここで死ぬんだ!
そんな事を知る必要は無い!」
一方的に呼びつけておいて、
話をする気も無いようだ。
まあ、こんな奴は適当に捕まえて、
ギルドに任せよう。
私は相手をしたくない。
攻撃に入ろうとした所で、
私の周りに光が溢れ出し、
大量のゴーレムが召喚されていく。
「お前用に調整した特別製だ!
こいつらに魔法は効かん!
もう逃げられないぞ!」
こいつ転移を知らないのか?
ギルドでも私が使っている以上、
噂くらい知っているだろうに。
情報の入手手段がギルド本部のものだからか?
こいつ思ってたより大したことはないのか?
私はゴーレムに手のひらを向けて握りつぶしていく。
そうすると、ゴーレムは次々に拉げて潰れていく。
「なんだそれは!僕は知らないぞ!」
「あんたが知る必要は無いわ」
更に追加でゴーレムが召喚されて行くが、
同じ用に潰れていき、私に向かってくるものはいなくなった。
これは、魔王の使っていた空間操作を真似たものだ。
イメージの問題なのか、魔王と同じ様に手のひらを向けないと発動しない。
見ただけで使えればもっと便利なんだけど。
「満足した?」
「馬鹿にしやがって!!!
なんなんだお前は!!!」
ヒョロヒョロ男が喚き出すと、
再び床が輝き出す。
何度やろうが同じことだ。
けれど、これがダンジョンのリソースの分だけ続くなら
流石にキリが無い。
私は男に手のひらを向ける。
「ヒェ!!」
なんだコイツ。
どうやってここまで来たんだ?
殺意を向けられただけでうずくまっている様な奴がここまで来れるはずがない。
私は構わず、男の手足を潰していく。
細かい操作は練習中だが、
今回はうまくいったようだ。
男は悲鳴を上げて泣きわめく。
本当に気持ち悪い。
ギルドに転移させようとした所で、
男の体が消えていった。
は!?
何今の?
なんか以前見た魔物が消える時みたいだった。
ダンジョンコアの機能?
ダンジョンに取り込まれたの?
私は慌てて、男が立っていた場所を探すが、
何も見つからない。
「そんな所を探したって僕はもう居ないぞ!
最後に一つ良いことを教えてやる!
お前がこのダンジョンに入ってきた時に、
あの町へは魔物を放ってある。もう手遅れだ!
お前は後悔しながら、このダンジョンと一緒に消えちゃえばいいんだ!」
どこからか聴こえてきた男の声に反応して、
私が慌ててダンジョン外に転移すると、
ダンジョンが目の前で消えていく所だった。
周囲を探知してみるが、
男はどこにもない。
不可思議な事が沢山あったが、
全部ダンジョンコアの力なのだろう。
今回は逃げられてしまったが、
わざわざ手口を披露していってくれた。
ここまでされれば大体の想像はつく。
今は町に戻ろう。
保険をかけておいて良かった。