35-43.文化祭
「なんだか文化祭の出し物決めてるみたいね」
いつの間にか用意されたホワイトボードには、いくつもの企画案が書き出されていた。
中にはお化け屋敷やら、メイド喫茶みたいな、まんま文化祭って感じのやつまで存在している。
「文化祭。良いですね。
是非我が家でも定期的に開催しましょう」
何かがノアちゃんの琴線に触れたらしい。
相変わらずアニメも見ているようだ。
ノアちゃんって意外と多趣味だよね。
ところでいつの間に私の膝の上に座ってたのかしら。
少し前まで座っていたはずのルカはホワイトボードの前だ。
マジックペンを持って今も何かを書き足している。
あかん。ちょっと記憶が飛んでる。
無理もない。もうだいぶ遅い時間だし。
だと言うのに、私の部屋には沢山の家族が集まっていた。
ルイザちゃんを招く秘密の作戦会議は、いつの間にやら秘密でもなんでもなくなっていた。
相変わらず私の秘密はよく漏れるわね。
まあ、そもそも最初から皆の助けも借りる予定だったもんね。
今日のところは私とアリアだけで話し合おうと思ってたんだけど、何だかんだと集まってしまった。
そう。最初は確か、リヴィが突撃してきたんだった。
アリアとルカ取っちゃったもんね。当然だよね。
ノアちゃんは遅くまで起きている子供達を寝せようとして訪れたんだったわ。
結局、一緒になって接待計画立て始めちゃったけど。
他にはカノンとレーネ、サナ、ステラ、ツムギか。
当然それぞれのフィリアス達も来ているわよね。
ヤチヨとコマリはちゃっかり私の隣に座ってもたれかかっている。
お姉ちゃんやセレネとルビィ、セフィ姉とレヴィ辺りは来ていないようだ。
お姉ちゃんはどうせ飲んでいるのだろう。
幼少組とその保護者達は既に眠っているはずだ。
私の座るベットの隅では、ハルカも寝ている。
ハルカは基本的にお手本みたいな早寝早起きだ。
睡眠時間を削ってしまうノアちゃんとも若干違うタイプだ。
それにしても人数が多すぎて、ぱっと見で誰がいるいないってわからないのよね。
点呼でも取ってみようかしら。
「他の案は?
もっと客人を驚かせられるような衝撃のあるものは?」
当然、アリアが進行を務めている。
もうそろそろ寝かさないとだわ。
明日も学校あるんだし。
そもそも、そこまで驚かせる必要があるのかしら。
ルイザちゃんの目的は、おそらく私と会って話す事だ。
ぶっちゃけ、普通に私とお茶するだけでも満足してくれるのだろう。
そして私達の目的は、ルイザちゃんとアリアの仲を深める事だ。
これは私達というか、厳密には私とアリア、それにルカだけの目的だ。
他の娘達は、純粋に初めてのお客さんを饗したいだけなのだろう。
でも、なんか良いよね。
娘のお友達が遊びにくるって。
単純にそう考えてみると、少しソワソワしちゃうかも。
張り切ってお菓子とか焼いてみたくなるよね。
「お菓子パーティーはどう?
どら焼きとか、羊羹とか、こっちであまり見かけないお菓子沢山作って饗してあげるの」
「その案もう出てるわ!
アルカさては寝てたわね!」
ほんとだ。ボードに書いてあった。
「ごめん。でもそろそろ一旦お開きにしない?
皆、明日も学校でしょ?」
「それもそうですね。
アリア、今日はもう締めて下さい。
続きはまた明日話し合いましょう。
皆さんもそれぞれ何か考えてきてください」
先生のような事を言って締めにかかるノアちゃん。
アリアも素直に従った。
「ノアお姉ちゃん。
今日はアルカと寝て良い?」
「構いません。リヴィはどうしますか?」
「ママと~」
眠そうに目を擦りながらノアちゃんにしがみつくリヴィ。
可愛い。
ノアちゃんはリヴィを抱き上げて、自分の部屋に戻っていった。
カノンとレーネ、ツムギとステラもそれに続き、フィリアス組は私に同化した。
そうして私、アリア、ルカ、ハルカの四人が部屋に残されて、私達もハルカの眠るベットに潜り込んだ。
「アルカ」
「なに?アリア?」
「アルカはどうだったの?
初めてお友達を家に招いた時って」
「う~ん。どうだったかなぁ」
本当に幼い頃は向こうでも呼んだことがあったのかもだけど、ぶっちゃけ昔の事過ぎて覚えてない。
かと言って、学校に通い出した頃にはもうボッチ気質だったし……。
そうすると、こっちの世界で家を作って、当時まだエイミーだと思っていたお姉ちゃんを呼んだのが初めてかしら。
あれ?
それ参考にならなくない?
実際には友達ではなく、お姉ちゃんだったんだし。
まあ、エイミーとしてだって、あの頃はまだ友達というより保護者って感じが強かったはずだ。
ぐぬぬ。
もしかして、私友達を招いた事って無いのかしら?
強いて言うならグリアやクレアとか?
でも、あの当時は私の友達としてというより、作戦の為の同士とか、ノアちゃん目当てのお客さんとかって方が近い気がする。
そもそも、私の友達が少なすぎるのだ。
唯一の親友だったクレアも今やお嫁さんに加わっている。
他に何の繋がりもない純粋な友達って、ゼロなのかしら。
いや、レーネとかも最初はお友達から始めたんだけどね?
なんなら、アリアとルカだってそうだし。
けど、気に入った娘皆引き入れちゃったから、友達らしい友達ってもう残ってないのよね……。
強いて言うならアレクシアさん?……も何か違うか。
一応、最近では友人として付き合っているけども。
元々、アニエスの引き抜きの為に始めた関係だったし。
「大丈夫?」
「え、あ、うん。
ごめん。なんでもない」
流石ルカ。私の葛藤に気付いたようだ。
いや、でも待てよ?
ルネルやヘスティも友達と言えるのでは?
片やお師匠様で、片や保護対象ではあるけども。
う~ん。二人の事も特段変わった事はしてないわね。
なんなら、私以外の人に相手任せちゃってるくらいだし。
「なんかごめんね……」
いかん。アリアまで察してしまったようだ。
そんな風に謝られたら、流石に傷つくよ?
「普通にお茶するのが一番じゃないかな?
だってルイザちゃんとアリアはもう仲良しなんでしょ?
わざわざ気を引くような事は必要無いと思うんだけど」
「何か作るって、アルカが言い出したのよ?」
「アリアが張り切ってたから。
それくらい何でも協力してあげるよって言いたかったの。
目的と手段をごっちゃにしないようにしてね」
「うん……もう少しだけ考えてみるわ」
「ふふ。そうね。
明日また、皆とも作戦会議の続きするんだもんね。
それはそれで楽しいもんね」
「アルカは寝てたけどね」
「ごめんて」
「「ふふ」」
「イチャイチャしすぎ。
ルカともする」
ルカの方に顔を向けさせられて、そのままキスされた。
私もお返しに、ルカを抱きしめてキスをする。
「もう寝るんでしょ」
と言いつつ、今度はアリアがキスしてきた。
「ハルカ起こしたら悪いから、静かにね二人とも」
「「は~い」」




