35-42.作戦会議
「アルカ、また変な顔してる」
「え?
そんな事無いよ?」
「なら集中して!
今は大事な作戦会議中よ!」
後は寝るだけになって私の部屋に来たアリア。
今は二人でルイザちゃん招待計画について話し合っていた。
それにしてもアリアって、本当にルイザちゃん好きね。
そろそろルカに嫉妬されてない?大丈夫?
なんとなくルカを腕の中に召喚してみた。
どうやら今は勉強中だったようだ。
ルカは真面目で努力家だ。それ以上に学ぶ事が大好きだ。
今日はアリアが戻るのを待っていたのもあるだろうけど。
「なんでルカ呼んじゃうの!?」
「……どうしたの?」
ルカはアリアを無視して私の方に問いかけてきた。
「アリアと悪巧みしてたの。
それで、ルカに内緒は良くないかなって」
「そっか。ありがと。アルカ」
ルカが私の首に腕を回して抱きついてくれた。
どうやらお礼のつもりらしい。
ならばありがたく受け取っておくとしよう。
暫く二人で抱きしめ合っていると、痺れを切らしたアリアが引き剥がしにきた。
仕方無いので、作戦会議を再開するとしよう。
ルカはこのまま膝に乗せとくけどね。
「もう!
ルカの勉強の邪魔しないでよ!」
ごもっとも。
「帰る?」
「帰らない」
「だそうよ?」
「くっ!」
アリアもルイザちゃんの話をルカの前でしないだけの理性はあったようだ。
「ルカ。かくかくしかじか」
「がってん」
「今ので何が通じたの!?」
アリアに内緒で念話を送っただけよ。
とりあえず、ルカも協力してくれる事になった。
うんうん。心強い味方が出来たわね。
アリアのと言うより、私のだけど。
ルイザちゃんの接待だけでなく、アリアのストッパー役も必要だもの。
「とにかく、今からルカも協力者よ。
安心して。事情は一通り伝えたから。
ルイザちゃんの件も、快く協力してくれるそうよ」
「……ほんと?怒ってない?」
「怒ってる。
アリア、やりたいことあるなら一番にルカに言うべき」
「うぐっ……ごめんなさい……」
「許す。アリアが気遣ってたのもわかるし。
けど次はダメ」
「わかったわ。ありがとう、ルカ」
「よろしい。
なら会議続ける。
どこまで決まった?」
「とりあえず、訓練場とアスレチック、それに露天風呂は見せてあげたいの」
「ダメ。一緒にお風呂はまだ早い。慎重に進めるべき。
相手は貴族のご令嬢。アリアとは感覚が違う」
アリアも一応元王族よ?
結局数年で出てきちゃったけど。
それはそれとして、意外と真剣なのね。
ルカにとってルイザちゃんは、恋敵とも呼べる存在なのに。
「別にそんなんじゃないわ!
うちにある施設で、皆が好きなものを見せようと思っただけだもん!」
というか、あれくらいしかないのよね。珍しいものって。
後はレーネのプールくらいかしら。
まだ春だし、流石に入るには寒いけど。
そもそも、侯爵家になら相応の浴室くらいあるはずだ。
広さだけは負けてないだろうけど、それでも興味を持ってもらえるかは微妙なところだ。
それに、露天風呂の文化自体を受け入れてもらえるかも怪しいものよね。
それら以前に、問題の本質はそこではない。
我が家には、貴族のお嬢様が喜びそうな物が無いのだ。
そこらの貴族より高価で高機能な設備が揃ってるし、見る人が見れば感心もするだろう。
なんなら、屋敷のサイズだってルイザちゃんの所に負けていないくらいだ。
けど今回の場合、それがかえって徒となっている。
もっと一般的な平民っぽい生活なら、ルイザちゃんも興味を持てるかもしれない。
けど実際には、自分達のところとあまり変わらない、特段珍しくも無い暮らしぶりにしか映らないはずだ。
実際には魔道具一つとっても、ルイザちゃんのところより遥かに高度な物が使われているのだけど、そんなのパット見でわかるものでもあるまい。
ルイザちゃんが自らキッチンに立って調理をするわけでもないのだし。
かと言って、私世界に招くわけにもいかない。
あっちはあっちで、色々かけ離れすぎている。
シーちゃんの技術をフル活用して発展を続けている私世界は、別の意味で理解しづらいかもしれない。
遊園地で遊んでもらうという手も無いでもないけど、私がルイザちゃんを口説くならともかく、今回はアリアのターンなのだ。流石に今回私世界を見せるのは無しだ。
「なら作ろっか。何か新しいの」
「具体的には?」
「何か考えてみて。
今回はアリアが主役よ。
私達は力を貸すだけ。
必要な物は何でも用意してあげるわ」
「う~ん……」
「ルイ姉は何が好きなの?」
あらあら。ルカちゃんや。
随分と気が早い呼び方ね。
「えっと、アルカ?」
「なに?」
「じゃなくて。ルイザの好きなもの」
「真面目に考えて」
ルカに窘められるアリア。
本人的には別に巫山戯ていたつもりも無さそうだけど。
「私の銅像でも建ててみる?」
「普通に喜びそうで何か嫌ね」
ルイザちゃんって、どういう子なの?
「二人とも」
「「ごめんなさい」」
その後も度々ルカに軌道修正されながら、会議は夜遅くまで続いていった。




