35-35.終わり良ければ
「アルカさん。
先程のお話、喜んでお受け致します」
私達がエルお姉ちゃんの側に戻ると、未だ頬を赤らめたエルお姉ちゃんが畏まった様子でそう口にした。
「うん!ありがとう!エルお姉ちゃん!」
『「うん!」じゃないよ!!
何言っちゃってんのさ!?』
『いや!そんな事言われても!?
この場面でそれ以外に返しようがないじゃん!
エルお姉ちゃんも乗り気になってるし!』
『ダメだってば!
軌道修正して!やっぱ無しって言って!』
『無茶言わないでよ!
そんなの言えないよ!セフィ姉じゃあるまいし!』
『私だって言えるわけないじゃん!』
『さっき言ってたの本気で忘れてるの!?
元はと言えば、結婚云々だってセフィ姉が言い出したんじゃん!』
『あれは私がプロポーズしたわけじゃないでしょ!
あくまでアルカの嫁に加わればって話ししただけで!』
『それの何が違うのよ!?
セフィ姉、さっきから自分の言ってる事おかしいと思わないの!?』
『それはこっちのセリフだよ!
アルカだってわけわかんないよ!
何でいきなり本気のプロポーズしちゃうのさ!
しかもそれが受け入れられちゃうのさ!
もうわけがわかんないよ!』
『落ち着きなさい!二人とも!』
『『だって!』』
『だってじゃないわ!
いい加減にしなさい!
いい年した大人が揃ってなにやってるのよ!
これもセフィが言った事よ!
とにかく一旦落ち着きなさい!』
『『……ごめんなさい』』
『それで?
セフィは何が不満なの?
アルカも言った通り、全てあなたが言い出した事でしょ?
アルカはあなたの願いを叶えようとしただけじゃない』
『それは!……でも……』
あれ?
イロハ、結局手を差し伸べてくれるの?
『アルカ』
『おせっきょう』
『ハルから』
あ、はい。
『そもそも』
『よめ』
『かって』
『ふやす』
『きんし』
『ノアたち』
『そうだん』
『してない』
『そうだんしたの』
『つれかえる』
『だけ』
『ルールいはん』
『めいかく』
『はい……仰るとおりです……』
『セフィ』
『れいせい』
『ちがう』
『わかってた』
『なんで』
『しきりなおし』
『しない?』
『セフィの』
『こんらん』
『つけこんだ』
『そうとられても』
『おかしくない』
『うん……』
『とにかくかえる』
『じかんおく』
『エルヴィにも』
『そうつたえる』
『えっと……』
『うけいれ』
『じゅんび』
『ひつよう』
『そういって』
『そのあいだ』
『いちおう』
『かんがえといて』
『ねんおして』
『うん……わかった……』
私はセフィ姉にも説明してから、改めてエルお姉ちゃんに話をする事にした。
「それじゃあ、一旦今日はここでお開きにしよっか。
結婚となると、ついでで済ますのは良くないと思うの。
それに、うちの方でもしっかり準備をしておきたいわ。
だから、後日改めてエルお姉ちゃんの事迎えに来るね。
長老にもその時一緒に報告しましょう。
それまで、エルお姉ちゃんもよくよく考えておいてね。
今日は少し色々あり過ぎて冷静じゃないかもだし。
もしそれでやっぱり結婚は、となってしまったとしても、セフィ姉のお姉ちゃんとしていくらでも遊びにきてもらってかまわないから。
焦らなくても、私達にはいっぱい時間があるもの。
私の事だけでなく、私達家族の事をよく知ってからでも構わないからね。
エルお姉ちゃんにも後悔しない選択をしてほしいな」
「……そうね。
アルカさんの言う通りよね。
あはは。私ったら、少し浮かれすぎていたのかも。
こういう事は勢いで決めちゃダメだものね。
うん。わかったわ。
ちゃんと時間をかけて考えておくから。
ごめんね、セフィ。
今日はついて行けないけど、必ずまた会いましょう。
迎えに来てくれるの待ってるから」
「うん。必ずまた来るよ。エル姉」
セフィ姉とエルお姉ちゃんがハグを交わす。
これでどうにか落ち着いたようだ。
うちに帰ったらまたお説教大会が始まるだろうけど、今は一旦脇に置いておこう。
これ以上考えるとお腹痛くなっちゃうからね。
さて、とにかく長老のところに向かうとしよう。
だいぶ遅くなってしまった。
長老の用事ってなんだろう。
私とセフィ姉はエルお姉ちゃんと別れて、長老の家に向かって歩き出した。
「さっきはごめんね、セフィ姉」
「う、ううん。こっちこそ。ごめん。
私も滅茶苦茶な事ばっか言ってたよね」
「セフィ姉が本調子じゃない事くらいわかってた。
当然だよね、二百年も帰れなかった故郷だもの。
なのに……本当にごめんなさい。
私も落ち着いて考えるから。
エルお姉ちゃんの事だけじゃなくて、自分自身の事も。
セフィ姉が指摘してくれたように、ちゃんと自重するよ」
「そっか。うん。
なら私も協力するよ」
「協力?」
「取り敢えず、一緒にノアたちに謝ろっか。
私も自分の言葉が原因だってちゃんと説明するから」
「あ、いや、それは……。
かえって言わない方が早く終わるんじゃないかな~。
ノアちゃん、言い訳とか庇われたりとかあると燃え上がるし……」
「ふふ。それもそうだね。
わかった。なら私も責める側に回ってあげる」
「なんで!?」
「いっぱい叱られたら、その分早く終わるかなって」
「やめて!絶対ややこしくなるから!
いいからセフィ姉は何もしないで!
レヴィにエルお姉ちゃんの話でも聞かせてあげてて!」
「むぅ。何さ、それ。
まったく。失礼しちゃうよ。ぷんぷん」
そのまま頬をつつき合いながら歩き続けた。
なんだか今更デートらしくなってきた気がする。
まあでも、何だかんだとっても楽しい一日だった。
きっとセフィ姉もそれは同じはずだ。
ならまあ、良しとしておこう。
終わりよければ全て良しってやつだ。うんうん。
『今日の終わりは説教にしかなり得ないんだから、デートも失敗って事かしら』
意地悪イロハめ!
さっきはありがとう!
『どういたしまして♪』




